(研究分野:アントレプレナーシップ研究分野)
創造都市研究科長・教授 明石芳彦
2009.03.06

産業経済論、産業組織とイノベーション、イノベーションと起業家機能
晴耕雨読。歩くこと。四季の移り変わりを体で感じること。
長らく産業組織とイノベーションの関係を扱い、企業間競争関係を規定する要因は何かを考えてきました。例えば、イノベーション創出のメカニズムで、(投入側として)研究開発や制度変化と競争加速要因、(産出側として)新機能・性能・品質、費用削減、生産性、新技術知識・特許などの指標の特性と投入側・産出側指標間の関係、あるいはイノベーション(や事業変革)の担い手としての大規模企業と中小・ベンチャー企業の役割を実証的に検討してきました。これに関連して、今少しペースが落ちているが、企業の現場における技術開発や生産性向上などのマネジメント要因を国内外の生産拠点を訪問して調査しています。また最近は、イノベーション推進・競争優位形成と「金で買えない要素」の関係、社会的課題を解決する事業を展開する志・使命感や、量的拡大でない形で事業展開することをどう捉えるか、そして、事業の仕組みを変える経営能力と事業の計画性を総合する「人と組織のマネジメント」で本質的なことは何かを研究しています。
(1)事実に基づいて物事を理解する。現場に足を運び、現場を見て、空気を感じる。
(2)人の意見を聞く。無知より、無視が良くない。
(3)やる気と継続的努力。はじめから上手な人はいない。
(4)先手必勝。気づいたら、すぐに開始する。
(5)やりたいことをやり抜く。それがアントレプレナーシップ!
産学連携というとき、私は、リエゾン(相談的関係)と、TLO(大学技術を学外に有償で移転させる組織)や特許契約を想定する連携関係とを区分して考えています。リエゾンは、問題が先にあります。箱よりも、窓口機能と問題解決を重視すべきです。訪問者への敷居を下げ、出来る範囲でやる。これは地味ですが継続することです。
他方、TLOを想定する連携関係では、大学技術を移転する。開発者は本来、誰がそれを必要としているかを半ば知っているのではないでしょうか。「使ってください」を支援するという話は分かりますが、自助努力なしでの技術移転はどうでしょうか?顧客の声を聞く部分が少なく先にシーズありきとなっているのではないでしょうか。事業予算に依存し、特定指標による成果指向で、評価・審査体制は整備されているかもしれませんが、誰のための連携か、と思うことがあります。国策だからやる。それでは続かないでしょう。
米国の先進的大学の事例を見ても、確かに、特定大学が大きな予算を継続的に獲得し、所定の成果指標を示しています。だが、量的にはリエゾン型が中心です。著名だが少数のTLO型の成功は意図的・計画的結果というよりも、金額が張って目立つだけと検証されています。
いずれにせよ、リエゾンを含む産学連携は目的、対象、形態、進行プロセスが多様であることを想定しておいた方がよいのではないでしょうか。
何を具体的活動指針とし、いつまでに何をするかという計画のようなものが見えにくい。他大学と横並びではなく、中央官庁の評価基準以外の独自基準を1つでも持つことで大学の個性が出ると考えます。個性や意欲ある研究者を支援し、活性化していくためにも、年度ごと事業計画に濃淡を付けることも仕方ないのではないでしょうか。そのためには、全学的な基本方針またはビジョンづくりが必要かもしれません。
学部学生さんには、基本的な事柄、セオリーやツールの理論的背景等をきっちりと勉強する。山登りには多様なルートがあることを思い出す。普段話す親、先生、友達の情報・意見だけではなく、さまざまな情報源を持ち、物の見方や考え方を幅広くする。固定観念を大きくしない。自分と反対の意見にも逃げない。人の意見を聞く。言いたいことを伝える。新聞を継続的に読むなどして、世の中の動きや考え方の多様性を知ろうとする姿勢をもつ。「知ると、分かる」、「分かると、使える(自分の言葉にする)」の違いを自覚する。さらに、「したいと、出来る」の違いを自覚し、出来ないことを出来るように変える条件・方法を考える。始めるより、「やり遂げる」が難しい。継続することは総合力の差を導く上で、もっとも大事と思う。能力の差より、努力の差、姿勢の差が今後は大事となる。
産業界の方に言いたいのは、基本を忘れない。定期的に出発点に戻る。誰に、何を、売るかを熟考する。得意な領域で、きちんと事業をしているか。損切りの発想を持つ。無理は続かない。面子や自負心だけで世の中を見ず、よい物はよいと認める。評価基準は多様であり得ることを実践する。
その実態を十分には知りませんが、得意な領域は何で、いかなる支援活動を特徴とするかを社会により明確に伝えることが望まれるかも。また一般に、事業予算主義で進めるのか、課題解決型で進めるのかで進め方が異なると思います。私個人は、特許件数や訪問者数よりも、1つ1つの問題解決を通じた社会的な評判を高めることや、予算が少なくなっても継続できる体制づくりが大事だと考えています。そのために、いつまでに何をするかという方針を決めた方が進めやすいかな、と考えています。
明石先生のインタビューを何としても実現したいとの長い間の想いが、やっと実現しましたことをたいへんうれしく思います。明石先生には、創造都市研究科長のお立場で、日々忙殺されておられる中で、貴重な時間を割いて頂きましたことを厚くお礼申し上げます。
今回お話をうかがいながら、時折、耳に激痛を感じつつも、産学連携推進について大いに含蓄に富む話を拝聴することができました。早速今日からの活動に取り入れ、実践していきたいと思います。ありがとうございました。
産学連携コーディネータ 渡辺敏郎