(研究分野:生物分子機能学、植物有機栄養学)
理学研究科 教授 平澤 栄次
2009.05.08

植物有機栄養学
現在進めている研究テーマには大きく分けると二つあります。一つは以前から続けている高等植物の窒素代謝(アミンを中心とした合成系と分解系の代謝)についての研究で、もう一つは数年前から始めている植物の有機栄養肥料および栄養補助剤についての研究です。
通常、暗い所や寒いところでは植物はすぐに葉を落としてしまいます。そういう条件でも植物を元気に成長させられるような栄養を考案しました。従来の植物栄養学は無機ばかりでしたが(通常の有機肥料は地中のバクテリア等の住みやすい環境を作り、その結果、植物の生育に良い環境を作るという間接効果で、植物が直接その栄養素を吸収しているわけではないと考えられている)、アミノ酸、糖、等の有機栄養素を植物が吸収するということを見出し、これを暗所における植物の栄養に利用することで、特許を取得しました。昔から切り花の鮮度保持剤には糖が使われているケースはありましたが、根からは糖のような有機物は吸収されないと思われていました。根のある植物の栄養剤として有機物を利用するのは初めてのことです。
又、新たな切り花の鮮度保持剤も検討しています。従来の切り花の鮮度保持剤は重金属、界面活性剤が利用されており環境にも問題がありましたが、新たに開発した有機栄養を利用した鮮度保持剤は無害の有機物を使っており環境にもやさしいものになっています。特に、チューリップの切り花は今まで鮮度を保つのが難しかったのですが、昨年度の4回生の卒論テーマとしてチューリップの鮮度補助剤の研究を行い、非常に良いものができ、商品化、特許化を考えています。(この学生さんは昨年度の理学部の広報用学生にも選ばれました)。又、この鮮度保持剤は、私の故郷でもありチューリップで有名な砺波市からも商品化を依頼され、砺波市及び大阪市大のグッヅとして商品化することを検討中です。
今述べましたように、光のあるところでは無機と有機の栄養で植物に対する効果に大きな差はありませんが、薄暗い室内や冷所では有機栄養が効果を発揮します。今後植物が室内のような環境で十分に生育できるようになると、大阪のような都市部では室内の緑化に役立ち、ひいては都市部の温度上昇の抑制に役立つと共に癒しの空間の創造にも役立てることができると考えています。
富山での小学生、中学生時代には植物採集に熱中した時があり、後年大学の進路を決めるときのきっかけになりました。植物は動物と違って動けないがゆえに独特の機能を持っており非常に興味深いものがあります。
先ほどお話しましたように有機栄養剤、切り花の鮮度保持剤については特許もとり、企業や自治体とも連携して研究を進めています。
植物の有機栄養についての研究を更に深めると共に今後いろいろな方面で研究成果を活用していきたいと思っています。たとえば、都会地での野菜工場、塩性土壌での作物栽培、砂漠のような乾燥地での植物栽培等への応用展開というようなことも考えていきたいと思っています。
企業が喜んで参画できる仕組み作りが必要と思います。たとえば、共同研究の場合、特許の実施権は企業に与えるが、売り上げの何%かと、大学のブランドはつけさせてもらうというような進め方が望ましいのではないかと思います。
先生のお話を聞くなかで、先生の植物に対する思い、愛情が先生の人柄と共にひしひしと感じられ、楽しくインタビューを終えることができました。植物学は日本がひたすら工業化を進めてきた中でどちらかというと地味な学問でなかったかと思いますが、その工業化一辺倒の中で噴き出してきた危機的問題、地球の温暖化、食糧問題、等々を解決できる一つの大きなキーワードは、先生が研究されている植物ではないのかとの思いを抱きました。これらの大きな問題の解決になるような研究が続けられることに大いに期待を寄せることができるインタビューでした。平澤先生どうもありがとうございました。
新産業創生研究センター 立川正治