植物の成長制御と環境応答のしくみを解明する

(研究分野: 機能生物学 )
理学研究科 教授 保尊隆享
2006.04.05

植物が海中から陸上への進出、進化の過程で獲得した重力シグナル制御メカニズムを解明されておられる理学研究科・教授の保尊隆享先生にお話を伺いました。

プロフィール

1980年
東北大学大学院理学研究科博士後期課程退学
 
大阪教育大学教育学部助手
1985年
大阪市立大学理学部助手
1993年
大阪市立大学理学部助教授
2000年
大阪市立大学大学院理学研究科教授

専 門

植物生理

まずは最近のご研究についてお話をお伺いします。宇宙環境での植物の成長についての研究という夢のあるお仕事をされていますが、その辺のことについてご説明ください。

生物にとって周囲の環境との関係はとても重要ですが、特に移動できない植物にとっては切実な問題です。植物が、環境要因の中でも重力シグナルをどのようにして捉え、それにどう反応するかを、宇宙の微小重力環境を利用して解明したいと思っています。 スペースシャトル実験(1998年)や地上シミュレーション実験の結果、それまで知られていた重力屈性(屈地性)以外に、抗重力という全く別の重力反応が存在することがわかりました。抗重力反応は、海の中で生まれた植物が陸上に進出し、進化・繁栄する上で重要な役割を果たしたと考えられます。

今後さらにどのように研究を進めていかれるかについてお聞かせください。

前回のスペースシャトル実験はほとんど現象の解析で終わってしまいました。抗重力反応のメカニズムを解明する次の宇宙実験をぜひ行いたいと考えています。幸い、当研究室からは、私のテーマと助教授の若林さんの提案の2つの宇宙実験が国際公募で採択されています。宇宙実験国際公募では、我が国からこれまでに医学を含む生命科学全分野を合わせて11題が選定されていますが、同じ研究グループから複数テーマが採択されたのは当研究室のみです。
2006年は、私たちの主な活動の場である日本宇宙生物科学会が発足して20年目に当たり、9月に大阪市立大学杉本キャンパスで記念の大会を開催します。9月30日には公開シンポジウムを行い、宇宙生物学の成果を広く市民や企業の方々と共有したいと考えています。

本学の独立法人化について所感をお聞かせください。

私は、大学における研究や教育は、基本的に、政府や行政が責任を持って進めるべきものだと思っています。その点で、単に経営効率の観点から行われるような独立法人化には反対です。特に教育は、いったん間違った方向に向けてしまうと、取り戻すのに何十年もかかります。独立法人化に伴うデメリットをできるだけ減らし、メリットを最大限に生かせるように努める必要があると思います。

先生のお立場で、産業界(企業)に期待されることは?

私の周囲を見回すと、人類の未来に貢献できそうなネタ(シーズ)はいろいろとあります。しかし、同時に、直ちに産業化、商品化できそうなものとなると、そうは浮かびません。産業界には、ぜひ、あまり目先の利益にとらわれず、将来の可能性への継続的なサポートもお願いしたいと思います。

さらに、学生に対してはどのように期待されていますか?

卒業研究のために研究室に入っている学生に将来の希望を聞くと、ほとんどが研究職と言います。しかし、実際に研究に向いており、それを貫いて生きて行ける人はそう多くはありません。世の中に広く目を向けると、もっと自分に適していて社会に貢献できる仕事がたくさん見つかります。在学中に、それをつかむ目を養ってもらいたいと思います。当研究室の卒業生は、研究以外にも、教育、行政、出版、特許、企画、開発など様々な分野で活躍しています。

最後に、産学官連携推進を強く叫ばれている現状にありますが、どのようにお考えでしょうか?

私の行っているのは全くの基礎研究で、一昔前なら、産学官連携のことは考えもしなかったかも知れません。しかし、研究が税金でまかなわれている以上、その成果を産学官連携を通して社会に還元する必要がある、という考えには同感です。私のように、そのためのノウハウをまだつかんでいない大学教員も多いと思いますので、支援態勢の充実が望まれます。新産業創生研究センターの活動には大いに期待しています。

インタビューを終えて

植物の成長と重力との関わりについて宇宙実験による先端研究を進めておられる保尊先生に今回お話を伺い、植物を愛し、科学を愛する研究者であることを強く実感しました。また、競合厳しい宇宙実験の遂行には多大な困難、負荷があるにも拘わらず、勇往邁進されているお姿に感銘を受けました。我々産学連携を推進する者としても保尊先生の研究活動を支援してまいりたいと思います。

産学連携 コーディネーター  渡辺敏郎