アジア・オセアニア光化学協会(APA)若手奨励賞同時受賞!

(研究分野:応用化学・材料化学)
小畠 誠也 先生
(研究分野:分子相関科学・レーザー化学)
八ッ橋 知幸 先生
2010.11.05

2010年6月30日、工学研究科 小畠誠也准教授、理学研究科 八ッ橋知幸准教授がアジア・オセアニア光化学協会による‘The APA Prize for Young Scientists, 2009-2010’に選ばれました。この賞は、アジア・オセアニア光化学協会が過去5年間の業績等を評価し、40歳以下の若手研究者に対して贈られるものです。今回はアジア・オセアニアから6名の研究者が受賞決定されましたが、そのうち日本の研究者は小畠准教授と八ッ橋准教授の2名であり、両先生には、日本の光化学の研究分野において、大きな期待が寄せられています。両先生とも、2010年11月14日~18日、ニュージーランドのウェリントンで開催されるアジア光化学国際会議2010での授賞式に出席され、受賞講演を行う予定です。
今回の「研究者ズームアップ」には、小畠、八ッ橋両先生に直撃し、いろいろ話を伺いました。


プロフィール: 【小畠誠也先生】

1996-
1997年
アクロン大学(米国)研究員
1997-
2000年
科学技術振興事業団(JST)研究員
2000-
2004年
九州大学助手
2004年
大阪市立大学准(助)教授
2001年
日本化学会BCSJ賞
2003年
日本化学会第52回進歩賞
2006-
2009年
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)研究者

専 門

機能材料化学

趣味

スポーツ(陸上競技)

リンク

http://www.a-chem.eng.osaka-cu.ac.jp/kobatakelab/



プロフィール: 【八ッ橋知幸先生】

1998年
大阪市立大学助手
2002年
大阪市立大学講師
2008年
大阪市立大学准教授
2000年-
財団法人レーザー技術総合研究所共同研究員
2001-
2009年
大阪大学レーザーエネルギー学研究センター共同研究員
2002-
2003年
マックスプランク量子光学研究所(ドイツ)客員研究員
2007-
2009年
大阪市立大学 大学教育研究センター兼任研究員
2009-
2013年
科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(さきがけ)研究者
2002年
アレクサンダー・フォン・フンボルト財団研究奨励金
2007年
光化学協会奨励賞
2008年
The APLS Young Scientist Prize
2009年
日本化学会第89春期年会 若い世代の特別講演証

専 門

高強度レーザー化学

趣味

サックス

リンク

http://www.laserchem.jp/

この度はAPA若手奨励賞受賞おめでとうございます。まずは、今回の受賞対象となった先生がたのご研究内容についてお教えください。

小畠先生 私の研究は、外部刺激によって分子構造が変化しそれに伴い物性が可逆的に変化する材料の開発です。特に光に応答して物性が可逆的に変化する機能材料の開発に焦点をあてています。これまでの研究で、光に応答して結晶の色が変化するものや結晶形状が光可逆に変化するものを見いだしています。今回の受賞対象は、光に応答して結晶形状が可逆的に変化するフォトメカニカル効果に関する研究であり、微小な結晶が光によって伸縮・伸長や屈曲する現象を見出しました。熱によって屈曲する材料はバイメタルに代表されるようにアクチュエーターとして良く知られていましたが、光によって変化するものはあまり知られておらず、遠隔操作で使用できるアクチュエーターとしてさまざまな可能性を持っています。このような材料の研究が、新しい光制御あるいは電子制御有機デバイス創製となるだけでなく、機能性結晶材料としての新しい可能性を切り拓くことができます。

八ッ橋先生 今回の受賞対象は、分子の多価イオン化とその化学反応です。電子が多数剥ぎ取られた分子の化学反応はほとんど知られていません。また、鉄やシリコンの多価イオンも容易に生成することが出来ますが、これらは電子不足が著しい一種の試薬といえます。そのため挿入反応、表面改質、そして薄膜の蒸着などに活用できると期待できます。極端紫外光発生や原子時計への用途も提案されています。また、10価以上の超多価分子イオンは瞬時にクーロン反発で多価の原子イオンに解離(クーロン爆発)しますが、そのイオン間の相互作用に非常に面白い現象が見られます。多光子過程を基にした化学的研究は種々存在しますが、多価イオン化を効率よく行うことが出来るのは1013 Wcm-2を凌駕出来る高強度レーザーによる電場イオン化のみです。これからも高強度レーザーを用いて、光化学の可能性を広げる多価イオン化誘起化学反応を研究していく予定です。

先生がたの研究者としてのポリシー、こだわりについてお伺いします。まず、小畠先生はいかがですか?

小畠先生 我々の研究は、物質を作ること、そしてその物質がどのような機能を持っているかを調べることです。逆に言えば、狙った機能を有する物質を狙った分子設計に基づいて合成することです。合成した物質が狙った機能を発揮したときには非常にうれしく感じます。ところがたいていの場合そのようにはいきません。その時には、いつも2つのことを考えます。一つ目は分子設計のやり直しです。分子の構造をどのように変えれば、目的の機能を果たすことができるのかを考えます。もう一つはせっかく合成した化合物を無駄にしないことです。目的の機能を果たさなくても、その化合物の持つ特徴を考えます。人それぞれが個性を持っているように、化合物にもそれぞれ特徴を持っています。それをうまくいかすことが重要です。そのためにはさまざまなバックグラウンドが必要です。学生に良く次のようなことを言います。「実験が予想通りうまくいったときよりも、予想しえないことが起こったときにどのように考えるかが大事だよ」。このようなことが大きな発見につながるのだと信じています。
学生に口癖のように良く言う言葉が他にもあります。「不可能なことはない」。うまく実験がいかなかったときに、学生が良く「不可能です」と言います。だめだと思って実験すると、たいていうまくいきません。学生に暗示をかけるように、「不可能なことはない」と言います。私自身、不可能なことを可能にすることに喜びを感じます。今、不可能であっても必ず可能になる方法があると信じています。
分子の構造を制御し、ナノメートルサイズからマイクロメートルサイズの材料の物性を思いのままに制御することが我々材料化学者の夢と研究の醍醐味です。

八ッ橋先生 幸いなことに私はお二人の素晴らしい指導者に恵まれ、大きな影響を受けました。お二人は研究を始め、あらゆる面で非常に対照的でした。しかし、結果に真摯に対応する姿勢、研究に喜びを見出すこと、そして、なんとかなる、なにか見つかる、面白い事をやる、など、根源にある共通した“楽天的”な姿勢が研究者として大事であることを学びました。
私は学生時代から“録・釈・論”と書いた札を机の前に掲げています(大分黄ばんできましたが、)。これは、科学はまず記録ありきで、結果に基づいて解釈をし、結論に達するということです。突飛な解釈やアイデアが先に浮かんで実験を始めることもあります。しかし、結論を出す前に、この順番を間違えていないかどうか日々自戒しています。“日日是決戦”という札も並んで貼ってありましたが、これはお世話になった予備校の校是です。科学は再現性が命ですが、面白いデータを見つけるためには、“一期一会”の気持ちで日々の研究に挑まなければならないということです。

最近、大学の「社会貢献」が注目されていますが、そのことについてどのように考えられ、本学の今後の在り方について忌憚ないお考えをお聞かせください。

小畠先生 社会貢献は我々の責務だと感じます。我々にとっての社会貢献の一つは、我々の開発している材料がどこか世の中で使われるようになることです。ズバリそのものが世の中に出なくても、そのきっかけになる研究というのでも良いと思います。大学の中だけで閉じこもっていてもなかなか難しいです。企業の方と話をするのも良いチャンスになります。たぶん、お互いに得る情報は多いはずです。
もうひとつの社会貢献としては、教育でしょうか。ただ単に、教育することは当たり前のことですが、学生の個々の能力を引き出すことが大事でしょう。すぐに、社会貢献につながっているかどうかわかりませんが、卒業生が出世している姿を見るとうれしいです。

八ッ橋先生 大学に求められる社会貢献はいくつもあると思いますが、やはり教育の底上げが重要だと感じています。理科離れは技術立国である日本の最も深刻な問題です。本学の理学部化学科は、これまで模擬授業、オープンキャンパス、化学セミナー、理科セミナー、夢化学21、そして高校化学グランドコンテストの主催やインターネット講座などを通じ、大学進学予定者を含めた学外の一般の方々の教育活動まで幅広く積極的に取り組んできました。特に、化学科が独自に始めたグランドコンテストは今年で第7回目を迎え、今では北は北海道から南は九州まで、全国から集まった高校生の素晴らしい研究成果が披露されます。毎年、このコンテストに参加するたびに『理科好き』の高校生達に頼もしい未来を感じ、化学教育の一端を担っている我々も励まされています。
企業や地域へ開かれた大学という面も重要です。現在の大学のレイアウトは箱物が無機質に並んだだけで、産学連携や地域貢献に開かれているとは見た目にも言い難いと感じます。大阪には日本が誇る技術を持つ会社がたくさんあります。企業や社会との連携に100年先を睨んだグランドプランがほしいところです。

産学連携の現状をどのように見られ、ご自身では今後どのように対応(他機関(企業あるいは他大学等)とのコラボレーション等)されようとしているか、またその際の産学連携担当に希望されることはどのようなことがあるでしょうか。

小畠先生 産学連携は大事です。我々の研究している材料が世の中の役に立つには、産学連携を推進していくことが必須です。特に、長い付き合いが重要でしょう。企業的な発想ではすぐに実用化を考えますが、我々は何に使えるかわからないレベルの基礎研究をしています。意外とアイデアさえうまくいけば、我々の作っている材料がすぐに使えることもあるでしょう。企業の方々と話をしているといろいろなアイデアが出てきます。その発想が大事なのでしょう。実際に産学連携をやってみると、我々がそれほど注目していなかったことが、企業の方から指摘されることがあります。実用化に向けた開発を良く理解しているからでしょう。今後とも産学連携担当者にはシーズとニーズのマッチングに力を入れていただきたいと思います。

八ッ橋先生 これまでの私の研究は一貫して光と分子の相互作用という基礎研究です。しかし、得られた成果をダウンサイジングすることで社会に還元し、企業などとの共同研究を通じてこれまでの経験と独自の成果を社会に活かしたいと考えています。ここ数年、物質加熱とその分析手法の開発研究で企業と密接な共同研究を進めており、シーズの創生と将来的な実用化への取り組みを行っています。基礎研究は性急な結果を求める企業側の姿勢とは相容れないと言われます。確かにニーズありきの場合はそうですが、5年、10年先の実用化を見据えたシーズの発掘は基礎研究そのものです。この観点からの企業との共同研究により得るものは極めて大きく、続けて積極的な活動を行いたいと思っております。また、特許も大学や研究者が単独で保持するのは難しく、企業と共同で出願し、権利を守り、かつ活用しなければ意味がありません。産学連携担当の方には研究者側、そして企業側両者の目利きとなって、うまいマッチングを図って頂き、産学連携の主役になって頂きたいと思います。

最後に、先生がたの研究について、特に企業の方々へアピールするポイントをお聞かせください。

小畠先生 我々は光や熱などの外部刺激に応答して物性が可逆的に変わる有機機能性材料の設計、合成および物性評価を進めています。色素材料、発光材料、表示材料、電子ペーパー、記録材料、電子材料、光センサー、温度センサー、分子デバイスなどが我々のターゲットとなっていますが、基礎研究が中心であるため応用に向けたアプローチは遅れています。今後、応用に向けたアプローチが必要ですが、ターゲットとなる用途が決まれば格段に研究が進んでいきます。次世代オプトエレクトロニクス材料に興味のある企業の方々との共同研究も視野に入れていますのでよろしくお願い申し上げます。

八ッ橋先生 産学連携で特許や実用化、そして工業化などが要請されますが、工学部と理学部で追い求めるものは異なってよいはずです。教科書に載っている内容は実社会では顧みられることは少ないですが、理学部はまさに教科書に将来載るような研究を目指す場所であると思います。しかし、その研究でも見方を変えれば社会の即戦力になるものもあるかもしれません。ただ、研究者がそれに気づくことはまれです。私は工学部出身ですから、自分の研究が一体何の役に立つのか?と時折自問自答します。しかし、正直言ってニーズを知らないため、得られる答えは多分幼稚なものです。逆にニーズを知りすぎて研究の視野が狭まることも恐れます。そのため、やはり目利きの存在が重要です。新産業創生研究センターの開設により、大学の研究の窓口が大きく開かれておりますし、研究内容は大阪市立大学で発刊している“研究シーズ集”や“研究者要覧”など、そして徐々に充実しつつある研究者のホームページから得ることが出来ます。大学とは異なる視点で基礎研究を注意深く見ていただきたいと思います。

本日はお忙しい中、貴重なお話をお聞かせ頂き有難うございました。両先生のさらなるご活躍を期待しています。


<左から小畠誠也准教授、八ッ橋知幸准教授>

インタビューを終えて

これまでの研究者ズームアップを一新すべく、今回は、本学の中でも特に注目されている若手研究者、小畠先生と八ッ橋先生に話しを伺いました。
今回のインタビューによって、本学は、これからもさらに進化していくことを実感した次第です。我々 産学連携コーディネータとしては、先生方の研究成果の価値最大化に向けて精いっぱい支援していきたいと思っています。皆さまも、先生方のご活躍にどうぞご期待ください

コーディネーター 渡邉敏郎