ラジカル重合ひとすじ

(研究分野: 高分子合成 )
工学研究科 教授 松本章一
2006.06.02

ラジカル重合法により種々の機能性ポリマーを開発されている工学研究科教授の松本章一先生にお話を伺いました。

プロフィール

1985年
大阪市立大学大学院工学研究科後期博士課程中退
1985年
大阪市立大学 工学部 応用化学科 助手
2004年
大阪市立大学大学院工学研究科 教授
 
 
 
 

専 門

高分子合成

まずは、先生のご研究についてお聞かせください

卒論のテーマが、ラジカル重合でした。これが始まりです。その後、独立して研究を行うようになった頃に、ラジカル重合によるポリマーの立体規則性制御のテーマを探索していたところ、偶然のきっかけから、モノマー結晶とほぼ同じ結晶構造のポリマーが生成するラジカル重合を発見しました。固体の中で分子が動いて反応が起こる珍しいケースで、「Nature」に発表しました。この研究を進めている間に、これまた偶然ですが、研究室のもうひとつのメインテーマとなっている「新規分解性ポリマー」の合成法を発見しました。モノマーと酸素が共重合するという発見です。このポリマーも勿論ラジカル重合で合成でき、熱、光、薬品、酵素などを作用させると瞬時に分解します。分解条件や分解生成物の制御もできるようになり、分解性の塗料や接着剤をはじめ、いろんな分野で応用できる可能性が出てきました。

今後の研究に対する抱負をお聞かせください

研究テーマは人生と同じで、揺籃期、幼年期、青年期、熟年期、老年期があると思います。揺籃期の長いもの、熟年期の長いものなど様々です。一つのテーマが青年期から熟年期にあるうちに次のテーマの揺籃期が始まるようにしなければ、研究全体はうまく回っていきません。「新規分解性ポリマー」は、いま青年期あたりでしょうか。これからもラジカル重合にこだわりながら、新しいテーマを生み出していきたいと思っています。

最後に、産学連携についてどうお考えですか

私は、先ほどの「固相重合」や「分解性ポリマー」に関連して、数社から研究委託を受けていますが、大学の研究の特徴は基礎研究にあると考えています。最近、企業が求めているのは、大学の基礎研究の中にある新しい技術的な要素だと思います。基礎研究の中からも発明が生まれ、実用化の芽となります。企業が目をつけるのはそこだと思うのです。しかし、大学のシーズと企業ニーズとのマッチングは、シーズとニーズがあるだけではでは進みません。そこには人と人との関係が必要です。産学連携は、先生と企業担当者の間に信頼関係が築かれて初めてスムーズに動き始めます。先生と企業担当者が同窓生であるとか、学会運営に関わる先生と企業人の間であるとか、企業担当者が何度も足繁く通って来て親しくなると、連携の確率はぐっと上がります。私も、時間の許す限り学協会の役員を引き受け、大学の外の方々と接する機会を持つように努めています。最近、「化学プラットホーム@関西」という関西の公立大学の化学系ネットワークづくりにも関わっています。これまでの枠組みを超えた新しいスタイルの情報交換の場です。

インタビューを終えて

一つの分野で長年にわたり研究を続けることの重要性を学びました。この分野なら、誰にも負けないという自信が自ずと身に付くのでしょう。高分子合成に関する基礎的な研究を進めながらも、産学連携にも熱心です。基礎研究の中にも社会貢献の芽は必ずあるという、いい例でした。

産学連携プロデューサー 三刀基郷