日本が、世界的優位性を発揮するために、オペレーションズマネジメント論を実践する。

(研究分野:オペレーションズマネジメント論 )
経営学研究科長・教授 太田雅晴
2006.10.02

当センターにとっても直結する イノベーションマネジメント研究を進めておられる経営学研究科長・教授の太田雅晴先生にお話を伺いました。

プロフィール

1979年
大阪大学工学部産業機械工学科卒業
1984年
京都大学大学院工学研究科精密工学博士課程研究指導認定退学
1984年
京都大学大学院工学研究科精密工学科助手
1989年
富山大学経済学部助教授
1995年
大阪市立大学商学部助教授
1996年
大阪市立大学大学院経営学研究科教授
2006年
大阪市立大学大学院経営学研究科長

専 門

オペレーションズマネジメント論

まずは先生のご専門、ご研究についてお話をお伺いします。ご専門は、オペレーションズマネジメント論となっていますが、その具体的な内容についてお教えください

私の出発点は、システム工学、生産管理、最適設計です。計画することが好きでこの道に入りました。恩師の下で一貫して学んだことは、統合的視点から技術やマネジメントをみる重要性です。博士論文のテーマは、「プロダクション・マーケティング統合計画モデルに関する研究」で、現在のSCM(サプライチェーンマネジメント)やイノベーションマネジメントに通ずるもので、異分野の統合問題に若いときから取り組めたことは今でも財産です。並行して、路線バスの仕業計画や製販統合計画のシステム化の研究を産学連携で行い、この経験を通じて産学連携の重要性、面白さ、そしてその難しさを感じ取りました。
私の行ってきたことは、当初は大学での試みの域を出ませんでしたが、日本が生産において世界的優位を獲得する過程で産業界は積極的に実践を進めてきています。これからの課題は、生産分野だけでなく、サービス業や事務分野の領域でも日本が優位性を発揮できることであり、それら全般の効率化を目指すのがオペレーションズマネジメントであり、その社会的意義を広く知ってもらいたいという意味を込めて、この言葉を専門領域として設定しています。生産分野よりも難しいのは、人・組織・文化・社会というものが色濃くその背景にあるからです。

最近のご研究、さらには今後どのように研究を進めていこうとされているのかについてお聞かせください

現在、取り組んでいるのは、オペレーションマネジメントの視点、つまり具体的に仕事をしていくと言う視点にたったイノベーションマネジメント研究です。今まで、経済学や産業論の視点に寄ったイノベーション研究はあるけれども、より現場に近い研究は始まったばかりです。特に、皆で力を合わせることを得意とする我が国にとって、我が国独特のイノベーションのあり方、運営の方法があるはずであり、それを探ろうとしています。そのためには海外との比較研究が必須で、現在、共同研究の体制作りしています。海外の共同研究者と一緒に、日本企業の事例研究をしてみるとそれが見えて大変興味深いですね。それが学問として整理できれば、日本の技術者、実務家、経営者は、自信をもって日々の業務そしてイノベーションに効率的に取り組むことができるはずです。さらにはアジアにも展開できます。これらを推し進めるために、グローバルオペレーション・イノベーションマネジメント研究センター(関連リンク参照)を立ち上げています。

最近注目されている概念で、我々 産学連携を推進する者にとって重要なMOT(マネジメント・オブ・テクノロジー)についてご教示をお願いします。また、MOTに関連した今後の取り組みについてお聞かせください

米国を中心に、欧米の経営、つまりトップダウン的経営スタイルでの、MOTに関する知識は随分と整理されてきていると思います。今後、日本の産業人は、グローバル化に対応する意味でもその知識は是非に学ぶ必要があると思っています。ただ、それが日本の実情、つまりボトムアップ的経営スタイルに合うかというと疑問です。独自の効率的なMOTを我が国は見いだすべきであり、それを是非に産業界と協力して見いだし、プログラム化したいと言うのが、私の希望です。
関西は、東京とは違って、独自の産業文化、経済環境を持っていて、それをも反映させて最適化させないと、関西から多くの実利的なイノベーションは発信できないのではないかと考えます。またMOTは製造業だけではなくて、医療、金融、サービス業、商業、他多くの分野で必要です。市大は、都市文化、都市行政を支援できる仕組みを作ってきましたが、ビジネス界を支える仕組みはまだ不十分です。そのためには、全学が総合して、それにあたる仕組みを作る必要があり、それができてはじめて建学の精神が達成されると考えます。

本学も法人化され社会貢献・産学連携を強く期待される状況にありますが、このことについて、先生のお立場で、何かコメントを頂ければ有難く思います。また、本学の産学連携推進ならびに知的財産管理の拠点としての新産業創生研究センターへのご助言ご要望があればお願いします

こちらからシーズを押しつけても旨くいきませんし、先方からの委託を請け負っていただけでも面白くありません。お互いの夢のようなものをだしあって、それに向かって困難な問題を解決するよう共同することが肝要だと考えます。共同する種の発見のコーディネートがセンターの役割として重要なように感じます。夢作りセンターですね。個別の問題は、個々に解決できるはずですから。その延長線上で言うと、産業創造館、生産性本部、大阪商工会議所、経営協会など中間組織とも積極的に歩調を取ることが必要であるように思います。

 

社会(産業界)、あるいは大学、学生ほかに対しては期待されていることがあればお聞かせください。

市大の良さは、有能な教職員・学生を抱える歴史がある複数の学部を有していることであり、それは市大を社会に対して大きく包容力のある組織に見せています。しかし、個々の学部を見ると小規模であり、それが最大の欠点にもなっているわけで、それを補うにはいかに学内では共同し、外に向かってはいかに多様性を見せるかがキーになると思います。そしたら多くの人たちが集まってきてくれて、我々を応援して支援してくれますから。

インタビューを終えて

市大の源流である経営学分野から創出されたオペレーションズマネジメント論を軸に、それを活用・実践し、市大全学が総合して、地域・社会に向けて「イノベーションの風」を送り込んでいくことができれば、新規性、独自性、創造性豊かな大阪市立大学とすることができることを、今回のインタビューの中からつくづく実感しました。新産業創生研究センターは、その要となり、イノベーションマネジメントを実践していき、「夢作りセンター」とならなければならないことを自覚しましました。
これからの産学官連携活動をより充実・強化するためにも、太田先生からさらに多くを学ばせていただきたいと思います。
本日は、ありがとうございました。

産学連携コーディネーター 渡辺敏郎