視機能回復をめざす『電子めがね』の開発に医工連携で挑戦

(研究分野: 眼科学 )
医学研究科 教授 白木邦彦
2005.06.10

眼科の先生が時代の最先端「電子めがね」に挑戦!異分野の融合による画期的な技術の創生が期待されるなか、眼科医としてもすぐれた業績をお持ちで医工連携を積極的に推進しておられる医学研究科・教授の白木邦彦先生にお話を伺いました。

プロフィール

1978年
大阪市立大学医学部卒業
1984年
大阪市立大学大学院医学研究科卒業
 
大阪市立大学医学部眼科学助手
1988年
大阪市立大学医学部眼科学講師
1993年
大阪市立大学医学部眼科学助教授
2002年
大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学教授

専 門

眼底疾患、眼循環、網膜硝子体手術など

先生の医工連携テーマに「電子めがね」がありますが、このテーマを一口で言えば?

網膜の病変により視力低下や視野狭窄、そして最後には失明する方々が沢山居られます。
網膜の一部が健全な方には、その部分に外部の光景を投影する「めがね」をかけて頂いて残っている視機能を十分に活用する、そんな「めがね」を開発するというものです。

そのテーマはどのようにして生まれましたか?

私の研究テーマのひとつに加齢黄斑変性症の研究があります。この病変は、加齢にともない網膜中心に存在する視細胞(黄斑)に異常がおき、次第に視野の中心が見えなくなり最後には細かいことができなくなる病気です。患者さんと接するうち、何とかもう一度視力を取り戻し、豊かなQOLを与えてあげたいと願望するようになりました。網膜の中心以外の視細胞は健全ですので、その部分を生かして視機能を回復出来ないものかと考えるようになりました。

医工連携のきっかけは?

そのような時期に、医療情報学の中村 肇助教授から工学部に網膜投影の研究をされている先生がおられ、応用分野を探しておられるという情報をいただきました。本学名誉教授で現宝塚造形芸術大学教授の志水英二先生です。早速紹介してもらい、お話を伺いました。
志水先生はすでに(財)イメージ情報科学研究所のプロジェクトでレーザーホログラムと網膜投影ディスプレイの開発研究をしておられました。当時、走査型レーザー検眼鏡といってレーザーを応用して網膜を撮影する装置がありましたし、これらの技術が加齢黄斑変性症患者に福音をもたらすと直感し、すぐに共同研究に入りました。

その後研究はどう展開しましたか?

この共同研究は、国の研究助成を受け急速に進展しました。
科学技術振興事業団(現(独)科学技術振興機構、JST)の地域研究開発促進拠点支援事業(RSP事業)、厚生労働省の科学研究費補助金の感覚器障害研究事業、経済産業省の速効型地域新生コンソーシアムなどにより網膜投影技術を応用した視野検査装置の開発を行い、視機能が残存している網膜の範囲を一般の方でも調べることができるめどをつけました。
それと平行して網膜投影装置の小型化の研究も行い商品化が見えてきました。そして平成15年度には、ベンチャー立ち上げのための研究を助成するJST研究成果最適移転事業のプレベンチャーに採択され、現在、阿倍野キャンパスの新産業創生研究センター「健康・予防医療ラボラトリー」で、「電子めがねグループ」により商品化を目指した研究開発が進んでいます。

今後の展開は?

網膜投影技術には二つの方法があります。ひとつは光学レンズ系を使う方法です。商品化までの道のりは近いですが、装置の小型化には大変な努力が必要です。 もう一つは、ホログラムレンズを使う方法です。商品化にいたる道のりは遠いですが、装置の小型化は可能で見た目もスマートです。このホログラムレンズ方式は、工学研究科の高橋秀也助教授がずっと以前から研究を重ねられていたもので、平成17年5月20日付の「日本経済新聞」に取り上げられました。
「電子めがねグループ」の当面のターゲットは光学レンズ式ですが、高橋助教授も「電子めがねグループ」の一員ですので今後はこの方式を使った商品開発も進むものと期待しています。

インタビューを終えて

初対面の印象は物静かな学者、やさしいお医者様でした。しかし患者さんや研究内容に話が移ると、とたんに内に秘めた情熱が吹き出す、そういう先生でした。電子めがねが一刻も早く完成し、患者さんのQOLが高くなるのを期待して阿倍野キャンパスをあとにしました。

産学連携プロデューサー 三刀 基郷