(研究分野:居住環境学・居住文化史 )
生活科学研究科 教授 谷 直樹
2007.06.20

居住文化史 博物館学
2年前に『町に住まう知恵―上方三都のライフスタイル―』という本を出しました。この本の内容が居住文化史の研究をあらわしています。都市に住むことによる様々な文化、例えば、町家の構造、町並み景観、町家の住まい方、祭礼における住まいの飾り、町の付き合い、都市や住宅の建設システム、大工など建築職人の組織、都市の遊興地、江戸時代の都市観光などをテーマに、歴史的にさかのぼって江戸時代の居住文化を中心に調べています。対象都市は、大阪、京都、堺、奈良など上方の歴史都市です。
(1)大阪都市住宅史の研究:大阪における都市居住の歴史的な解明。(2)都市祭礼研究:祇園祭や天神祭の宵宮飾りを取り上げた祭礼時の居住文化に関する研究。(3)大工頭中井家文書の研究:江戸時代の大工棟梁に関する研究。(4)町並み保存の調査研究:まちづくりにおける地域の居住文化の発掘と継承。(5)歴史系博物館の設計と運営に関する実践的研究。歴史に耐えてきたものから自然のしくみを知り、先人の智慧を学ぶことが大事だと考えています。最先端の科学や文化は、歴史の積み重ねによってできていることをつくづく実感しながら研究しているところです。
このミュージアムは、愛称を「大阪くらしの今昔館」といって、天神橋6丁目の大阪市立住まい情報センタービルの7階~9階にあります。今昔館には、江戸時代の大坂の町家と町並みを原寸大で再現し、失われた伝統的な大阪の住まいを体感していただくことができます。また近代における大阪の住まいと住宅地の変遷を精巧な模型で展示しています。ここに200人のボランティアの方が参加して、昔の年中行事や街角の芸能を披露しています。さらに座敷では落語や上方舞の公演、お茶会などが定期的に行われ、江戸時代の町で大阪の文化を鑑賞することができます。市民の皆さんが、この今昔館の展示を見学していただくと、大阪の居住文化が実体験できます。
大学の研究成果は、ともすれば難解で市民には近寄り難いと思われがちです。学問によっては、そのような分野もあると思います。私は、今、大阪駅前にある文化交流センターの所長をしていますが、大学の知的財産を市民に伝える努力が必要であると思います。これは市民によって支えられている大阪市立大学の責務であると思います。この点は、新産業創生研究センターの情報発信と連携できる可能性があると思います。また、私の所属する生活科学に限って言えば、食品栄養、居住環境、人間福祉など、現代の生活に深く関係した諸課題に取り組んでおり、研究成果を市民生活の中で実践することによって検証していくという性格があります。生活科学研究科は、学問の成り立ち自体が社会貢献・産学連携を進める立場にあります。独立法人化の中で、新産業創生センターの側からの働きかけも、もっと強めていただければと思います。
大阪市立大学は「市民の大学」であることを標榜しています。この市民とは、実際に大阪市に住んでおられる住民の方はもちろんですが、大阪という大都市で働き、学び、あるいは訪れる人も含んだ、都市における「職・住・遊」の概念に入る、いわば都市利用市民すべてをターゲットにする必要があると思います。その意味で、大阪市大の知的財産を市民に還元する仕掛けを考えるべきではないでしょうか。
今回、谷先生のお話を伺う中で、地域に根ざし、地域とともに歩む大阪市立大学の原点を見つめることができました。大阪市大らしさを考え、地域社会あるいは世界に発信していく在り方をさらに探っていきたいと思います。
また、産学連携あるいは大学における知財管理が、ややもすれば上滑りで偏狭になりがちなこの頃、いま一度、しっかりした見識を持ち、地域・社会に広く発信し、貢献できることを念頭に置いて活動してまいりたいと思います。
産学連携コーディネーター 渡辺敏郎