疲労克服研究教育拠点の形成

(研究分野: 基礎医学 )
医学研究科 教授 渡辺恭良
2004.10.20

非常に高い競争率のなか、平成16年度・文部科学省「21世紀COEプログラム」(革新的な学術分野)に採択されましたプロジェクトの拠点リーダーである医学研究科・教授の渡辺恭良先生にお話を伺いました。

プロフィール

1980年
京都大学大学院医学研究科修了
1987年
(財)大阪バイオサイエンス研究所・研究部長
1999年
現所属・教授
 
 
 
 
 
 

専 門

神経科学、脳機能イメージング、分子イメージング

採択されました「疲労に関する研究」を始められた動機をお聞かせ下さい。

自分も含めて、皆さん疲れているというのが、もちろん一番の動機です。
私たち医学部や病院に勤務している者が疲労のメカニズムをきちんと言えないことは恥ずかしいことです。
修学時代から「脳・分子論的科学」をテーマとして研究してきましたが、大きな契機は、1993-1997年のスウェーデンとの「生体・分子イメージング研究」に関する‘国際共同研究プロジェクト’(JST)の時です。このプロジェクトは‘92年10月に研究契約締結になるわけですが、準備段階では、スウエーデンー日本間を飛び回るなど、東奔西走、ついには疲労困憊、大学病院のお世話になる始末でした。その病院で当時の日本では未だ珍しかった「慢性疲労症候群」の話を聞いたわけです。これが「病気としての疲労」克服を考えた最大のきっかけです。その後1999年から本年度迄の文部科学省(科学技術振興調整費)による国家プロジェクト(25研究機関参画)「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」に繋がっています。

「21世紀COEプログラム」を推進されるに当たっての抱負は何でしょうか?

現在、何処でもやられていない、次の点に道筋をつけたいと考えています。
一つには、多くの診療科、臨床現場での「疲労」に対する意識改革、例えば病気治療における疲労の影響の認識と定量化を目指したいと考えています。たとえば、外科手術後などに早く倦怠感から回復させてあげることができれば、病院赤字の一番の問題である入院日数の短縮が可能です。
次には「疲労」の基準、標準化とバイオマーカー等による定量化を図ることです。これは、抗疲労特定保健用食品や疲労回復医薬品の開発に重要な科学的根拠となります。日本発のオリジナル製品を海外へ出すためにも、このような科学的根拠が重要なポイントになり、日本経済の将来のためにも今日本がリードしているこの「疲労研究」を進めて、みんなで頑張らなければいけません。

昨今の大学には「研究成果」の「社会への還元、貢献」を求められていますが、このプロジェクト研究で期待されている成果をお話下さい。

一口で言いますと‘子供から老人まで’すべての人の「疲労」の緩和に貢献することです。1999年の厚生省(現厚生労働省)疲労調査班の疫学調査によりますと、疲労感を自覚している人の割合は約60%、そして37%(疲労の60%)もの人が6ヶ月以上続く慢性疲労であるとのことです。慢性疲労を感じている方の半数が仕事や学業の能率低下を訴えており、膨大な経済損失です。疲労や過労から重病が派生している場合も多いです。
このような方々に疲労回復のベストな選択肢となる「食・薬」を開発することです。

先生は、既に共同研究を実施される等「産学官連携活動」には造詣深くあられますが、今後の「産学官連携活動」について一言お願いします。

大学一般に云える事ですが、中長期的なビジョン、シナリオを持つことが重要と考えます。例えば「大学発ベンチャー」について云うならば、その育成、支援体制等環境整備を実施し、No.1を目指すべきでしょう。スタートさせればいいものでなく、サクセスストーリーを作ることが重要で、そのためには、「ここまで支援するのか」、というレベルまで政策的に補助しないとまだまだ日本社会では根付かない。単に、客寄せパンダであってはならない。また「知財」関連体制の整備も重要です。

インタビューを終えて

既に複数の「国家プロジェクト」の統括(研究)リーダーを経験されているだけに、グローバルな視点から、またマルチなプロ集団を機能的にまとめられ、必ずや大きな成果を社会に還元されることを、確信した。

産学連携コーディネーター 間 健一