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経済学研究科・杉田菜穂さんの句集が刊行

2010年03月30日掲載

教育・学生

平成22年3月25日、経済学研究科重点研究・経済格差研究センター(CREI)研究員の杉田菜穂さんの第一句集『夏帽子』が、角川学芸出版から刊行されました。この句集には、杉田さんの中学~大学時代の俳句が収められています。杉田さんの初めての句集であるとともに、「角川新鋭俳句叢書」の第一作目でもあります。
杉田さんに、現在のお気持ちなどをお伺いしました。

 

―初の句集を発刊されて、今のお気持ちは

これまでは趣味の延長のようなところがありましたが、句集を出すことによって「俳人としてしっかり歩んでいかねば」という気負いが生まれました。そして、師系の重みや俳句の伝統といったものを意識するようになりました。
(角川書店からの出版ということに関しては、)角川学芸出版の総合誌『俳句』の読者投句欄に子どもの頃から投稿を続けてきたというご縁もあって、本当に嬉しく思っております。

―装丁もきれいですね

事前に希望を聞いて下さったのですが、「シンプルなものがいいです」とだけお伝えしました。あとは、デザイナーの方が私の作品と私のイメージから作成してくださいました。こんな素敵な表紙に仕上げてくださり、とても嬉しく思っています。装丁案が出来てきたときは、まさに「贈り物」をいただいた時の気持ちでした。とても気に入っています。

―句集の中で特にお気に入りの句はありますか

市大や大阪を詠み込んだものでは、

      <大阪は商ひの街初戎>

 

      <黒板は深海の色風光る>

 

      <学問の自由泰山木の花>

 

      <開学は昭和三年秋の風>

 

    <凍星やいづれ師恩に応へむと>

等でしょうか。

学生生活、特に大学院に進学してからの研究生活は大変な毎日でしたが、それを詩に昇華していくことで心のバランスがとれているようなところがあって、「研究と俳句に向き合う二人の私がそれぞれを支えあいながらここまで何とかやって来られた」という感じです。

学生生活から離れたものでいえば、

      <短日の三時四時五時六時かな>

 

    <東京のさくら吉野のさくらかな>

は特に気に入っています。俳句は「省略の文学」とも言われますが、それを自分なりに表現したつもりです。他にも学生生活への思い、家族への思いなど、ひとつひとつの作品に思い入れがあります。

―杉田さんの俳句や短歌を拝見していると、美しいだけでなく、ユーモアのあるものも多いですね

俳句はたった17文字の表現であるにも関わらず奥が深くて、例えば美しい景といった自然を詠むものもあれば、面白味を追求する俳諧的な作品もあります。
理想としては自然のもつ美しさに触れるような作品を詠みたいのですが、今回の句集に収めた作品は自分の思いを前面に出したようなもの、いわゆる「青春俳句」が多くを占めています。今後は自然詠に力を入れるつもりですが、引き続き等身大の自分、ありのままの自分が詩にのっかったような作品を発表し続けていくのだろうなとも思います。

―では、学生生活の思い出を教えてください

10年にも及ぶ学生生活に対してはいろいろな思いがあって答えに困ってしまいますが、「市大で学ぶことができて本当に良かった」です。
学生生活を通じて、先生や友人…たくさんの出会いに恵まれました。私の所属していたゼミは3年に一度全体同窓会があって、その度に同期、さらには先輩や後輩と交流することができます。それぞれが活動しているフィールドは違っても、市大で、同じゼミで学んだことによって共有している「何か」があると肌で感じています。これ以上うまく表現できなくて申し訳ないですが、その感覚は私にとって財産であり、誇りです。

―4月からは同志社大学講師となられますが、研究者・教育者としての抱負は

新しい生活には不安もありますが、これまで学んできたことを活かして教育・研究活動に精一杯取り組みたいです。教育に関していえば、自分なりに「よい授業とは」「よい先生とは」といった問いと向き合い続けていくのだと思います。研究については、これまで通り専門知識を身につける努力を続けるとともに、定期的に論文や学会報告というかたちで研究成果を問い続けていきたいと思います。
講師として採用される以上、教育・研究活動が最優先であることは言うまでもありませんが、これまでがそうであったように、俳句と向き合う時間が研究・教育者としての私を支えてくれるのだと思います。
また、俳句に関心を持つ学生さんとの出会いがあれば、課外の時間を利用してコミュニケーションをはかりたいと思っています。

―俳人としての目標は

季語の現場に立つ。五感を働かせる。「平易な表現でありながら深い句」を志したいと思います。

杉田さん近影

―本日は本当にありがとうございました

ありがとうございました。

杉田菜穂さんプロフィール

1999年4月本学経済学部入学、2009年3月経済学研究科後期博士課程修了。専門は社会政策で、現在の研究テーマは「日本における人口問題と社会政策」。博士論文が『人口・家族・生命と社会政策―日本の経験―』として法律文化社から2010年5月に刊行予定。
俳人としては本学文学部卒の俳人・茨木和生氏に師事。学生時代は経済学研究科の玉井金五教授のゼミで学んだ。