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工学部4年生の山下明さんが高等学校の教科書(電気基礎)をつくりました

工学部4年生の山下明さんが高等学校の教科書(電気基礎)をつくりました

大阪市立大学工学部電子・物理工学科4年生の山下明(やましたあきら)さんが、工業高校の生徒向けに使われる教科書(電気基礎)を発行しました。教科書検定制度が制定されて以来、大学生が個人で文部科学省検定済教科書を発行するのは初めてのことです。平成25年4月より実際に北海道旭川工業高校で使用されることが確定しています。

概要

山下さんは工業高校出身で、推薦入試で本学工学部電子・物理工学科に進学し、現在4年生。自身が高校生だった時に『こういう教科書があったらいいな』、という思いをもとに教科書の作成に取り組んだ。もともとTeX(テフ)※1という組版処理ソフトウェアを扱うノウハウがあり、出版に興味があった。2年生(2010年)の春に教科書の執筆を開始し、その年の秋に完成させ、文部科学省の教科書検定に申請。1年後、文科省より検定意見が通知され、内容の修正を求められたが、それらをすべて修正し、無事に2012年1月30日に検定に合格し、晴れて文部科学省検定済教科書として認められることとなった。全国の都道府県教育委員会および電気基礎が教育課程にある工業高校に見本を送付し、その後、北海道の旭川工業高校より採択があり、2013年4月から電気基礎の授業で使用される予定である。

教科書の工夫した点

(1)口語体を使用したこと
多くの高等学校用教科書は「だ、である調」で書かれているものが多いが、「ですます調」で執筆し、わかりやすい説明を心がけた。
(2)内容を絞り、ページ数を減らしたこと
一般的な電気基礎の教科書は600ページに及ぶ分厚いものが多いが、最低限必要な内容だけに絞り、エッセンスのみをまとめたため150ページと非常に薄い。
(3)電磁気学の部分において、大学で習う記述に修正したこと
従来の電気基礎の教科書では、電磁気学はE-H対応※2によって記述されていたが、大学ではE-B対応※3による記述で講義が行われており、そちらを採用した。

【注釈】
※1 TeX(テフ)…オープンソースの組版処理ソフトウェア。数学や物理などの数式表現などが綺麗に作成でき、目次や索引の管理などもできる。
※2,3 E-H対応とE-B対応
…E-H対応による記述は電場と磁場による記述であり、解釈に混乱を招きやすく、不十分なもの。E-B対応による記述は電場と磁束密度による記述であり、より適切である。

苦労した点良かった点など:山下さんのコメント

「執筆してみて、自分では理解しているつもりだった内容でも、少ないページ数でわかりやすく説明するとなると思ったより大変でした。また、文部科学省からの検定意見をひとつずつ直していく作業が大変で、何度も実際に文部科学省まで足を運び、担当者とやりとりをしながら完成させてきました。執筆していた時期は2年生でまだ時間がありましたが、3年生になり忙しくなってきていたので大学との両立が大変でした。
良かった点としては、執筆を通して基礎理論に対する理解がより一層深まったこと、また教科書がどのように作られ、供給されているかということを直接経験して学べたことです。執筆から組版、検定手続、修正や見本発送など何もかもを一人でやったので、苦労も多かったのですが、実際に検定に合格し、採択が決まったときはとてもうれしく思いました。」

今後について:山下さんのコメント

「4月からは工業高校の先生として教壇に立つことが決まっています。もともと工業高校に入学した際は就職するつもりでしたが、教師を目指したいと思い大学を受験しました。今後も働きながら教科書の執筆を続けていきたいと考えています。私はまだ教師として生徒に教えたことがないので、この教科書は学生が生徒の目線で書いたものです。生徒にとってわかりやすい教科書は教える側としても使いやすいはずだと思っていますが、実際に自分が教えてみてどのように変化するかが楽しみです。教える側の視点も入れて、さらに良いものを作っていけたらと考えています。」

西澤良記学長からのコメント

「文部科学省もまさか個人で、しかも大学生が教科書を出版するとは想定していなかっただろうし、大変だったと思います。内容についても修正を指摘するのは簡単ですが、実際に内容を詰めていくのは大変難しい作業だと思います。学生時代に何か一つ成し遂げたというのが大きなチャレンジ。彼自身の大きな成長につながったと同時に、実際に4月から教壇に立って教える際にはきっとこの経験が生かされると思います。
また彼には今後教科書だけでなく、一般向けに、たとえば小中学生が科学に興味を持ってくれるような本の執筆にも挑戦してほしいと思います。」

工学部4年生の山下明さんが高等学校の教科書(電気基礎)をつくりました―大学生が編集・発行した初の教科書―
右から、西澤良記学長、山下明さん、日野泰雄工学研究科長

参考

一般社団法人教科書協会(平成25年度高等学校用教科書)に掲載(工業)
文部科学省教科書目録(平成24年4月)高等学校用教科書目録 に掲載

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