公立大学法人大阪市立大学
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銅の代謝異常をPETによる動態イメージングで診断します(共同発表)

メンケス病モデルマウスで銅と銅キレーター併用の効果を確認

本研究成果のポイント

  • 銅の放射性同位体64Cuを用いたPETにより銅の臓器分布を可視化
  • 銅と銅キレーターの併用が中枢神経障害や腎障害の予防に効果
  • 銅代謝異常症の治療法開発に期待

大阪市立大学(西澤良記理事長兼学長)は理化学研究所(理研、野依良治理事長)と、先天性銅代謝異常症「メンケス病」の治療において、銅と銅キレーターを併せて投与することが、中枢神経障害や腎障害の予防に効果がある可能性を明らかにしました。メンケス病モデルマウスを陽電子放射断層画像法(PET)で撮像し、銅代謝の改善を確認した結果によるものです。これは、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(渡辺恭良センター長)健康・病態科学研究チームの渡辺恭良チームリーダー、野崎聡研究員、大阪市立大学院医学研究科発達小児医学(新宅治夫教授)の野村志保大学院生らと、帝京大学医学部小児科学の児玉浩子客員教授との共同研究グループの成果です。
メンケス病は、腸管での銅吸収障害による銅欠乏のため、中枢神経障害や結合組織障害が起こる先天性銅代謝異常症の1つです。標準的な治療法はヒスチジン銅の皮下投与ですが、治療開始が生後2カ月を過ぎると投与した銅が脳に移行しなくなり、脳障害が改善せずに合併症を併発して多くは幼児期に死亡します。一方、長期の銅注射は腎臓の尿細管に銅が蓄積するため、将来的に腎障害をきたすことが懸念されています。従って、投与した銅の脳への移行を促進させ、かつ腎臓への蓄積を抑制する効果的な治療法の開発が求められています。
共同研究グループは、メンケス病モデルマウス(マクラマウス)に放射性銅(64CuCl2)と脂溶性キレーター「ジスルフィラム」を併せて投与しました。すると、脳への銅の移行性が顕著に増加しました。一方、水溶性キレーター「ペニシラミン」の併用では、腎臓からの銅の排泄が促進されました。いずれも銅の放射性同位体64Cuを組み込んだ分子(64CuCl2)をトレーサーとしたPETによる画像診断で明らかにしました。この結果は、メンケス病は銅キレーターの併用により、生後2カ月以降でも症状が改善できる可能性を示唆しています。また、今回用いた64Cuを用いたPETによる画像診断は、銅代謝異常症の新しい治療法の開発や評価に有用であることが分かりました。
本研究は、日本学術振興会の科学研究費補助金および厚生労働科学研究費補助金の「難治性疾患克服研究経費」の支援を受けて行われ、成果は、米国の科学雑誌『The Journal of Nuclear Medicine』(5月号)に掲載されるのに先立ち、オンライン版(3月13日付き)に掲載されました。

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