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耐性菌を作らない新たな MRSA 感染治療法

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この研究は下記のメディアで紹介されました
◆8/21 NHK「おはよう日本」・毎日新聞・Web時事通信社
◆8/22 日本経済新聞

 大阪市立大学大学院医学研究科の鶴田大輔教授、小澤俊幸講師等のグループは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染皮膚潰瘍を、世界ではじめて天然アミノ酸(5-アミノレブリン酸:ALA*)の全身投与とLED光を用いた光線力学療法(PDT)で治療することに成功しました。この治療法は新たな耐性菌を生じる事がないため、耐性菌治療に難渋する現代医療において、新たな細菌感染の治療法として期待されます。本研究の成果は、米国東部時間8月20日(水)午後2時発行(日本時間8月21日(木)午前3時)の米オンライン科学誌「PLOS ONE」に掲載されました。
 *体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸。ヘムやシトクロムと呼ば れるエネルギー生産に関与するタンパク質の原料となる重要な物質

発表雑誌 : PLOS ONE

論文名 :
Photodynamic therapy using systemic administration of 5-aminolevulinic acid and 410-nm wavelength light emitting diode for methicillin-resistant Staphylococcus aureus infected ulcers in mice
「マウス背部のMRSA感染皮膚潰瘍に対する5-アミノレブリン酸と410nm LEDを使用した光線力学療法」

掲載URL : http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0105173

論文執筆者名:Kuniyuki Morimoto, Toshiyuki Ozawa, Kunio Awazu, Nobuhisa Ito, Norihiro Honda, Sohkichi Matsumoto and Daisuke Tsuruta

1.研究の背景

 近年、抗菌薬に対する耐性菌の出現と蔓延が世界的な問題として注目されています。その耐性菌の代表であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)は、1961年に英国ではじめて検出され、現代医療において深刻な問題となっています。また、これまでMRSA治療に対して有効であった抗生物質バンコマイシンの耐性を獲得したMRSAも出現し、新種の耐性菌の出現は現代医療において大きな問題となっています。今後、新種の耐性菌を発生させないために、抗菌薬に頼らない新たな抗菌治療法の開発が必要となります。

2.研究の内容

PDTとは光感受性物質を投与し、標的となる組織に集積させた後に、特定の波長の光を照射することにより生じる活性酸素によって標的細胞(細菌)を死滅させる治療法であり、耐性菌を生じないという特徴があります。
 臨床上MRSA感染した皮膚潰瘍は、感染していない場合と比較し治癒が悪く、広範囲熱傷などの場合MRSAが感染することにより傷が治らず死亡する場合もあります。
 今回我々は、マウスの背部にMRSA感染皮膚潰瘍を作成し、光感受性物質としてALAを全身投与し、光源として波長410 nmのLEDを用いたPDTを行いました。その結果、MRSAは減菌し、有意に創傷治癒が促進され感染していない潰瘍と同等の治癒効果を得ました。
 以上により、ALAを用いたPDTは、耐性菌を作らない新しいMRSA感染治療法であると考えられます。

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【表の説明】

MRSA感染潰瘍にPDTをおこなうと、治癒の早さは正常皮膚潰瘍と同等になった。

MRSA感染抗菌治療薬として一般的なバンコマイシン®を投与しても、治癒の早さは変わらなかった。

3.期待される効果

 ポルフィリン代謝はグラム陽性菌、グラム陰性菌、両者に見られる代謝経路です。よって、5-ALAが細菌に取り込まれPpIX**として細菌内に蓄積されれば、すべての細菌に対してPDTの効果が期待できます。よって、細菌感染全般に対する新たな治療法の1つになり得る可能性があります。
 **プロトポルフィリンIX。5-ALAが細胞(細菌)に取り込まれ代謝された後、PpⅨとなる。PpⅨは光感受性物質

4.今後の展開について

 本研究は文部科学省科学研究費助成の支援を受け、SBIファーマ株式会社との共同研究で実用化研究を進めています。MRSA感染皮膚潰瘍に対する前臨床試験を行う予定です。