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NBI内視鏡による早期食道がんの発見(研究発表)

プレスリリースはこちら

この研究は下記のメディアで紹介されました。
◆10/19 読売新聞

大阪市立大学大学院医学研究科の永見康明医師らのグループは、狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)注1という新しい内視鏡システムを使うことにより、ヨード剤使用の検査と同じくらい食道がんを発見し診断できる効果があることを明らかにしました。その結果、患者さんの体への負担を軽減することにより、食道がんの早期診断に役立つことが分かりました。
本研究の成果は、米国消化器病学会雑誌「American journal of Gastroenterology」誌の電子版に、米国東部時間 4月22日午前9時(日本時間 同日午後10時)に掲載されました。

掲載予定誌 American journal of Gastroenterology
論文名 Usefulness of non-magnifying narrow band imaging in screening of early esophageal squamous cell carcinoma: A prospective comparative study using propensity score matching
(早期食道扁平上皮癌スクリーニングにおけるNBI非拡大内視鏡の有用性:疑似ランダム化前向き比較試験)
著者名 Yasuaki Nagami, Kazunari Tominaga, Hirohisa Machida, Masami Nakatani,
Natsuhiko Kameda, Satoshi Sugimori, Hirotoshi Okazaki, Tetsuya Tanigawa,
Hirokazu Yamagami, Naoshi Kubo, Masatsugu Shiba, Kenji Watanabe, Toshio Watanabe, Hiroyoshi Iguchi, Yasuhiro Fujiwara, Masaichi Ohira,
Kosei Hirakawa, Tetsuo Arakawa

研究の背景

食道扁平上皮がん注2の予後は不良で、すべての臨床病期全体での5年生存率は10~15%と報告されています。また、頭頸部がん注3患者、食道がん内視鏡治療後の患者は、食道がんのハイリスク群であり、食道がんの高い出現率が報告されています。このような患者さんたちでは、食道がんを早期発見することで、内視鏡治療や外科手術による治癒が期待でき、長期予後が期待できます。しかし、通常の内視鏡観察では早期の食道がんを発見することは難しく、これまではヨード剤を併用してきましたが、胸やけや気分不快といった刺激症状が強く、多くの組織検査が必要なことが問題点とされていました。
近年開発された特殊光観察の一つである狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)は手元のスイッチでワンタッチ切り替えが可能なため、ヨード染色法と比べて患者さんの負担も少なく、どの部位でも使用できるなどのメリットがあります。NBI併用拡大内視鏡は食道がんの発見に通常白色光よりもすぐれ、ヨードとも同等の診断精度を示すという報告はありますが、日常臨床で使用される非拡大内視鏡注4を用いた検討は不十分でした。

研究の概要

食道がんを早期発見し診断するためには、これまでヨード剤を散布して調べる方法が一般に有用であるとされてきましたが、ヨード剤は刺激性が強く、胸焼け、気分不良などの症状が出現することから、患者さんの負担になっていました。狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI)という新しい内視鏡システムを使うことで、ヨード剤と同じくらい食道がんを発見し、診断能がより高くなることがわかりました。

食道がんのハイリスク群である頭頸部がん患者と食道がん内視鏡治療後の患者を対象として、前向きに注5白色光、非拡大NBI内視鏡に引き続いてヨード染色による内視鏡検査を行い、食道がんを疑う所見を認めた場合には組織検査を行うことにより、それぞれの方法の診断精度を比較しました。さらに直前の検査のインフォメーションバイアス注6をなくすために、疑似ランダム化注7を行い、非拡大NBI内視鏡がヨード染色法と比較して、食道がんの発見、診断に有用であるかを検討しました。
非拡大NBI内視鏡 / ヨード染色法によるそれぞれの感度、特異度、正診率は88.3%、75.2%、77.0% / 94.2%、64.0%、68.0%で感度に関しては有意差を認めず、特異度、正診率では非拡大NBI内視鏡検査が上回っていました。より信頼度の高い疑似ランダム化による傾向解析を用いた場合でも同様の結果が得られました。
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期待される効果

患者さんの負担を軽減しながらも、食道がんを早期発見することができるようになります。その結果、食道がんを根治するような早期治療を行うことができ、予後の改善に結びつくのではないかと考えられます。

今後の展開について

NBI内視鏡はヨード染色法と同等もしくはより高い診断精度が得られるとされていますが、ヨード染色法よりも若干感度が落ちるとされており、NBI内視鏡のみで長期的に経過観察した場合に食道がんを見落としてしまう可能性があるかもしれません。そこで、食道がん内視鏡切除後の患者にNBI内視鏡のみを用いて長期間経過観察を行い、異時性再発病変注8を内視鏡治療が可能な早期に診断することができるかを検討するため、現在、前向き臨床試験を行っています。

用語解説

注1:狭帯域光観察(narrow band imaging:NBI) 従来の内視鏡の光源は、400~800 nmの様々な波長光混在した白色光。NBIシステムは特殊なフィルターを用い、粘膜表面で反射する短い波長光の特殊な光で内視鏡観察するシステム。
注2:食道扁平上皮がん 食道がんは数種類あり、日本ではそのほとんどが扁平上皮がんで、飲酒や喫煙がリスクと想定される。
注3:頭頸部がん のどや口腔内などは食道と同じ扁平上皮から構成されており、ここにできる咽頭がん、喉頭がんなどのことを頭頸部がんと呼び、食道がんを合併しやすいといわれている。
注4:非拡大NBI内視鏡 拡大内視鏡は85倍まで拡大可能で、NBIとの併用により血管の拡張や蛇行などの異常を観察でき、食道がんの診断に有用とされている。非拡大NBI内視鏡とは、拡大機能を使用しない通常倍率の内視鏡観察のこと。
注5:前向き(研究) 研究を開始してから生じる現象を収集、調査する研究。結論を得るまでに時間がかかる場合があるが、証拠水準は高いと考えられている。一方、過去に起こった現象を調査するものを「後向き(研究)」と呼ぶ。
注6:インフォメーションバイアス 情報バイアスともいわれ、既知の情報によりその後の結果にバイアスが生じることを指す。今回の検討では白色光に続いてNBI、ヨード染色を行っており、この情報バイアスを消すため統計学的手法を用いている。
注7:疑似ランダム化 上記の情報バイアスをできるだけ少なくするため、それ以前に行った検査で異常があった群となかった群での背景をそろえることにより、無作為試験と類似した結果が得られるとされる。
注8:異時性再発病変 食道がんは飲酒や喫煙がリスクとされ、食道がんができる方はこのようなリスクに長期間暴露されていたことが多く、初発病変とは別の場所に新たに食道がんができることも多い。これを異時性再発と呼ぶ。

研究内容に関するお問合せ先

大阪市立大学大学院 医学研究科 消化器内科学
病院講師 永見康明
TEL: 06-6645-3811
E-mail: yasuaki-75@med.osaka-cu.ac.jp