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子どもの肥満にともなう非アルコール性脂肪性肝炎を 痛みを伴わずにスクリーニング

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
150924.JPG <(夕)は夕刊 ※はWeb版>

◆9/24 日本経済新聞、大阪日日新聞
◆9/25 毎日放送「あさチャン」
◆10/4 読売新聞
◆10/22 朝日新聞(夕)
その他、地方紙等多数掲載

概要

 医学研究科 発達小児医学の徳原大介(とくはら だいすけ)講師と趙有季(ちょう ゆき)医師らの研究グループは、肥満小児は脂肪肝の頻度が高く、肝臓の硬さの数値が高い傾向にあることを、肝硬度測定機器であるフィブロスキャンを用いて測定し、国内で初めて明らかにしました。
 近年我が国では肥満小児が増加しており、メタボ予備軍として社会的な関心を集めています。肥満は脂肪肝の重要な原因であり、脂肪肝の中には肝硬変に進展するリスクのある非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)が含まれることから、肥満小児の脂肪肝とNASHを簡便かつ低侵襲にスクリーニングする方法が望まれていました。今回の研究成果は、非侵襲的なスクリーニング法による肥満小児の脂肪肝・NASHの早期治療介入に繋がるものと考えられ、将来の学校検診への応用も期待されます。

 なお、本研究成果は、2015年9月23日(水)午後2時(米国東部夏時間)、日本時間では9月24日(木)午前3時に米国の科学誌PLOS ONEのオンライン版に掲載されました。
 
【発表雑誌】
 PLOS ONE(米国)

【論文名】
 Transient Elastography-Based Liver Profiles in a Hospital-Based Pediatric
Population in Japan
「フィブロスキャンを用いた日本人小児における肝脂肪変性・肝硬度の評価」

【著 者】
 Yuki Cho, Daisuke Tokuhara, Hiroyasu Morikawa, Yuko Kuwae, Eri Hayashi,
 Masakazu Hirose, Takashi Hamazaki, Akemi Tanaka, Tomoyuki Kawamura,
 Norifumi Kawada, Haruo Shintaku

【掲載URL】
 http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0137239

研究の背景

 近年、我が国の肥満小児の増加に伴い、肥満小児の様々な合併症(脂肪肝、高脂血症、糖尿病など)を早期に見つけ治療介入する事が重要な課題となっています。肥満による脂肪肝は、肝細胞への脂肪沈着のみが認められる単純性脂肪肝と、脂肪化のみならず線維化・炎症性変化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の2種類に分類され、NASHは肝硬変に進展する可能性が高いことが知られています。成人のみならず小児においてもNASHは発症するため、脂肪肝のリスクの高い肥満小児の中からNASHをスクリーニングすることは重要であると考えられます。脂肪肝を評価する従来の方法として腹部超音波検査・肝生検が挙げられますが、腹部超音波検査は非侵襲的という長所はありますが定量性・客観性に欠け線維化の評価が難しいという短所があり、肝生検*1は質的診断には優れていますが、痛みや出血のリスクを伴うという短所がありました。

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   図1.フィブロスキャン検査

 フィブロスキャンは、肝臓の線維化の程度(肝硬度:LSM)と脂肪の蓄積の程度(肝脂肪蓄積度:CAP)を同時に測定することができる新しい機器で、腹部超音波検査と同様に体表からプローベを当てるだけで、痛みや出血を伴わずに非侵襲的に短時間で肝硬度と脂肪蓄積量を定量化することができます(図1)。同機器は成人領域では有用性が報告されていますが、国内の小児に対する検討は皆無であったことから、小児、特に肥満小児におけるフィブロスキャンの有用性と実行性を評価する臨床研究を国内で初めて実施しました。

研究の内容

 1~18歳の小児214名を対象にフィブロスキャンを用いたCAP(肝脂肪蓄積量)とLSM(肝硬度)の同時測定を実施し、肥満群、肥満を伴わない肝障害群、肥満と肝障害を伴う対照群に分けて測定結果を比較しました。その結果、フィブロスキャンは94%の小児で実施可能であり、肥満小児は対照群と比較してCAP・LSM両者とも有意に高い傾向にあることがわかりました。また、一部の症例で肝生検による組織学的な評価とフィブロスキャンの測定結果を比較したところ、両者の間に高い相関を認めました。このことから、フィブロスキャンは小児において非侵襲的に実施できる信頼性の高い検査であり、肥満小児は脂肪肝の頻度が高く、NASHを判定する指標となる肝硬度が高い傾向にあることが明らかになりました。
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           図2.フィブロスキャンの測定結果
(a)肝脂肪蓄積量(CAP).肥満群が有意に最も高いCAP値を示した (b)肝硬度(LSM).肥満群は対照群よりも有意に高いLSM値を示した

期待される効果

 肥満小児は脂肪肝の頻度が高く、肝臓の硬さが高い傾向にあり、NASHのリスクが高いことをフィブロスキャンを用いて国内で初めて明らかにしました。フィブロスキャンは体表にプローベを当てるだけで測定結果が得られる事から、非侵襲性が求められる小児科領域では特に有用性が高いと考えられ、肥満小児の脂肪肝・NASHの効果的なスクリーニングを介した早期治療介入に繋げることが期待されます。

今後の展開について

 今後、肥満小児に対してどのような食事・運動指導を行えば脂肪肝の改善に結びつくのかといった検討を、フィブロスキャンを用いてすすめていくとともに、小中高等学校における学校検診に本検査を導入することによって脂肪肝の小児をスクリーニングし、早期に食事・運動指導介入を行うことで子どもたちの健康福祉に役立てたいと考えています。また、肝硬変・肝線維化のリスクが高い様々な小児疾患(先天性心疾患に対するフォンタン手術*2後患者、先天性代謝性肝疾患、B・C型肝炎)に対する定期的な肝線維化の評価を行い、病気の進行を抑える早期介入の判断に役立てていくことを目指しています。

<用語の解説>
*1 肝生検
肝臓の組織を採取すること。代表的な方法としては、体外から針を肝臓に直接穿刺して組織を採取する
針生検と、全身麻酔下で開腹し腹腔鏡などを用いて肝臓から組織を採取する開腹生検があります。

*2 フォンタン手術
単心室や三尖弁閉鎖症などの先天性心疾患に対して行われる手術です。同手術によって長期生存率が
向上する一方、長期的な合併症として蛋白漏出性胃腸症や肝硬変など課題となります。
肝硬変に対しては定期的なスクリーニングが必要ですが、術後には抗凝固療法を行っている場合が多いため、出血のリスクが高い肝生検を行うことは難しいとされています。

>>参考資料はこちらから