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禁煙治療が逆流性食道炎に有効であることを日本で初めて明らかに

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この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
160205.JPG<(夕)は夕刊 ※はWeb版>

◆2/5 読売新聞、毎日新聞、産経新聞、
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◆2/10 医療NEWS QLifePro

その他、地方紙等多数掲載

概 要

 医学研究科 消化器内科学の藤原靖弘(ふじわら やすひろ)准教授らは、同 総合医学教育学、上本町わたなべクリニックとの共同研究により、禁煙治療が胃食道逆流症(GERD, Gastro-Esophageal Reflux Disease)に有効であることを日本で初めて明らかにしました。
 GERDは、一般的には逆流性食道炎と呼ばれ、胸やけや呑酸を主症状とし、生活の質(QOL, Quality of Life)が低下する病気です。日本では1990年代より増加している頻度の高い消化器疾患の一つで、現在、成人の約10-20%がこの疾患を患っていると推定されています。
 これまでの研究でGERDの危険因子の一つに喫煙が指摘されていますが、禁煙治療がGERD症状に及ぼす影響についての報告はこれまでほぼされておらず、禁煙によるQOLの変化についての検討もほとんどありませんでした。禁煙によって、胸やけのようなGERD症状が改善したという今回の研究結果は、患者自身の選択により生活習慣が改善されることで症状が良くなり、病気を克服できる可能性があることを示唆しています。

 本研究は米国のオンライン科学誌PLOS ONEに2016年2月4日(木)午後2時(米国東部時間)、日本時間では翌2月5日(金)午前4時に公開されました。

【発表雑誌】
 PLOS ONE
【論 文 名】
 Long-term Benefits of Smoking Cessation on Gastroesophageal Reflux
 Disease and Health-Related Quality of Life
(胃食道逆流症および健康関連QOLに対する禁煙の長期有益性)
【著者名】
 Yukie Kohata, Yasuhiro Fujiwara, Takanori Watanabe, Masanori Kobayashi,
 Yasuhiko Takemoto, Noriko Kamata, Hirokazu Yamagami, Tetsuya Tanigawa,
 Masatsugu Shiba, Toshio Watanabe, Kazunari Tominaga, Taichi Shuto,
 Tetsuo Arakawa
【掲載URL】
 http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0147860

研究の背景

 胃食道逆流症(GERD)は、胃の内容物が食道へ逆流することによって起こる不快な症状あるいは合併症を生じる疾患です。GERDは煩わしい胸やけ症状により日常生活に支障を来し、全体的健康感や活力など精神的・身体的な生活の質(健康関連QOL)を低下させます。喫煙はさまざまな病気との関連が指摘されており、GERD患者では、喫煙が食道運動機能を低下させ逆流を増加させることから、一般的に禁煙が勧められています。しかしながら、その根拠は乏しいのが現状でした。
 GERDと喫煙の関係に関しては、これまでに数多く報告されていますが、禁煙がGERDにどのような影響を及ぼすのかについての前向き研究はほとんどありません。最近、ノルウェーの研究グループから、禁煙は体重が正常の人のみ逆流症状を改善したとのコホート研究が報告されましたが、その他には禁煙の効果を検証した研究は皆無で、日本人での検討はありません。日本では、ニコチン受容体作動薬のバレニクリンが禁煙治療に汎用されています。禁煙を志す患者はこの薬を12週間内服して治療を行います。そこで今回我々は、バレニクリンを用いた禁煙治療1年後にGERDおよびQOLに及ぼす影響について検討しました。

研究の概要

 禁煙目的に受診した患者を対象に、初診時に喫煙習慣、GERD症状(Fスケール)および健康関連QOL(SF-8)に関する質問紙票を記入していただきました。12週間の禁煙治療を完遂できた患者を対象に、1年後に禁煙の成否と初診時と同様の質問紙票を用いて調査し、 GERD症状や健康関連QOLの変化について検討しました。
 最終的には191名が解析対象となり、内訳は禁煙成功群が141例、禁煙失敗群が50例でした。禁煙成功群ではGERD症状が約43%で改善したのに対し、禁煙失敗群では約18%のみ改善し、これらには有意に差がありました。症状の程度を示すFスケール・スコアも禁煙成功群のみ有意に低下し、症状の程度も改善していました。健康関連QOLは禁煙成功群でのみ改善していました。

期待される効果

 禁煙治療のGERD症状に対する長期的にみた有効性を、日本で初めて証明しました。喫煙はさまざまな健康被害を及ぼしますが、胸やけといった消化器症状との関連については、一般的に認知度が低いとされています。今回の検討により、禁煙が胸やけのようなGERD症状およびQOLを改善した研究結果が認知されれば、患者自身の選択により禁煙することで症状が良くなりQOL向上とともに健康増進にもつながることが期待されます。

今後の展開

 現在、GERD患者では胃酸分泌抑制薬が第一選択ですが、長期服用が必要な患者では副作用も懸念されています。今後、禁煙治療により薬剤が中止できるかどうかを前向きに検討し、将来的には禁煙を含めた生活習慣の改善のみで病気を克服できる可能性を考えています。


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