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防災教育向けARアプリを開発!オープンソースソフトウェアとして公開

改良版に関する詳細はこちら「防災教育ARアプリで、より現実的な仮想災害体験が可能に!~国土地理院主催Geoアクティビティコンテストで防災減災賞を受賞~」(2019年12月5日プレスリリース)

プレスリリースはこちら

このアプリは下記のメディアで紹介されました。<(夕)は夕刊 ※はWeb版>
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◆1/10 ICT 教育ニュース
◆1/12 リセマム
◆1/18 教育新聞
◆1/19 NHK「ニュースほっと関西」
◆1/31 化学工業日報
◆3/3     読売新聞

要旨

 大阪市立大学都市防災教育研究センター(CERD)の吉田大介(よしだ だいすけ)兼任研究員、三田村宗樹(みたむら むねき)副所長は、株式会社ブリリアントサービス(本社:大阪市北区、代表取締役:杉本 礼彦)と共に、避難所やAEDの位置などの防災関連情報や、訓練用に仮想設定した火災や土砂崩れ発生などの情報を、タブレット端末の画面上に可視化表示させる拡張現実(AR)アプリを開発しました。
 従来の防災教育向けのシステムやアプリでは、PCやタブレット端末のデジタル地図上でしか防災・災害情報を表現する方法がなく、実際の現場状況がどうなっているかについてはアプリ利用者の想像力に頼っているという部分に課題がありました。しかし、今回開発したアプリを使用し、ARによる表示機能を用いることで、対象エリアにどのような災害リスクがあるのか? 近くにどのような防災関連施設が用意されているのか? などを現地(実際に訓練する場所)で地理空間的に認識することができます。また、災害訓練の場において現実により近い体験が可能となり、対応力の向上が大いに期待されます。
 本研究において開発したアプリは、オープンライセンスとして平成29年1月6日(金)よりWEB上に公開します。170106-7.jpg

                 ◆アプリのソースコード公開サイト
                    https://bitbucket.org/nro2dai/cerd-ar/

背景

 CERDでは地域の防災・減災力向上を目的とし、訓練参加者(中学生〜大学生を想定)の居住近隣地域を訓練対象としたアクティブラーニング型災害訓練を実施してきました。従来の訓練では、地区・地域の潜在的な災害リスクを含むさまざまな課題が十分に考慮された内容になっていないことや、事前に用意されたシナリオ通りの内容を実施するだけの受動的な訓練になりがちで、緊張感が乏しく、参加者の主体性は失われ、自分自身や身のまわりの課題に気づかない・改善につながらない、などの問題がありました。そのため、シナリオの存在しない課題解決型の訓練をスムーズに実施するためのアプリ開発が急務でした。
 また、ARを活用した観光や防災を目的としたアプリは既に存在しますが、その多くが特定地域に特化したコンテンツでプログラムコードが公開されていないため、有用な機能を持つアプリでも他の地域・事例に応用できない、という問題が存在していました。

アプリの内容

前述の課題を解決するために、以下の機能・特徴を持つアプリを開発しました。
(アプリはiOS(ver. 9.2以上)のiPad端末で動作)

・地図表示機能:従来の地図アプリと同様に、現在地表示や地図の拡大縮小が行えま す。データをインポートすることで、さまざまな災害・防災関連情報を地図画面上に表示することができます(図1)。
 また、背景地図にオープンデータのOpenStreetMapを採用することで、GoogleやAppleマップ等では地図データが乏しい地域でも、利用者自身で地図データを作成し、本アプリにて活用することが可能となります。また、地図表示画面やAR表示画面上のアイコン画像をクリックすることで、詳細情報(写真や動画、現在地からの距離)を確認することができます(図2)。

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図1 ARアプリ上の地図表示画面

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図2 詳細情報の表示画面

・AR表示機能:周辺の災害・防災関連情報を、現在地から見える方角にアイコン画像として表示することができます。図3・4で表示されている災害アイコンには、災害の種類、現在地点から災害地点間の距離、そして災害範囲が表示されています。画面左下のボタンで、前述の地図表示画面へ切り替えることができます。

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図3 AR表示画面(道路閉塞)

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図4 AR表示画面(土砂崩れ)

・タイマーによる災害発生・範囲拡大の機能:災害の日時、災害範囲、災害の種類(現状では、火災・浸水・土砂くずれ・道路閉塞を用意)を設定することができます。これにより、火災や浸水などの災害を指定の時間に発災させ、一定の速度で災害範囲を拡大させることができます
・災害範囲に近接・侵入時の視聴覚的な警告機能:タイマーにより発災させた災害範囲に、アプリ利用者が近づく・侵入することで、警告メッセージや効果音、アプリ画面の色により、視聴覚的に警告を行います。(図5・6)

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図5 AR表示画面(火災範囲に侵入)

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図6 災害警告の表示パターン

本アプリの実験的活用事例

 平成28年12月6日(火)に、堺市御池台地域を対象とした災害訓練において、御池台小学校の児童向け体験学習支援ツールとしてこのARアプリを活用しました。事前の準備では、御池台地域での防災まち歩きから得られた情報や、御池台連合自治会作成の防災マップ、そして、地域の方々との対話で得られた情報(例えば、地域で過去に起こった災害や、不安に感じている箇所など)を基に、体験学習向けのシナリオやアプリで使用するデータを準備しました。児童たちは画面に表示される情報を見ながら臨場感あふれる訓練を行うことができました。このアプリを使うことで現地に潜む災害要素などを学び、有事の際にはどんなことに気をつけたら良いのかを分かりやすく確認でき、実り多い訓練となりました。

期待される効果

 今回開発したアプリは無償配布を行うだけでなく、アプリのプログラムコードやアイコン画像などを、オープンライセンス(MITライセンス等)として公開します。これにより、他地域における防災教育へ活用することや、防災教育の目的に限らず、地域の観光や教育目的に容易に応用することが可能になります。
 近年、Code forコミュニティ(関西であれば、Code for OsakaやNara、Ikomaなど)という地域のさまざまな課題をICTで解決する取り組みを進めている団体が、国内各地で活発に活動しています。今回プログラムコードを公開することで、アプリ機能の改良やさらなる開発についてCode forコミュニティのような外部団体からの協力を受けることや、その団体の活動地域での取り組みにアプリを活用されることが期待できます。

今後の展開

 CERDで実施しているコミュニティ防災教室の「まち歩き」で本アプリを使用するのはもちろんのこと、来年度に実施予定の兵庫県内や岩手県内でのアクティブラーニング型災害訓練でも使用します。また、ジオパークでの案内や解説などへの活用も検討しています。
 また、より現実味を感じられるような表示性能を高めるために、以下の開発を行う予定です。
・AR表示画面で、GIS(地理情報システム)データ(例えば、浸水、土砂崩れ、火災想定のハザードマップなど)の重層表示
・アニメーション画像の表示機能を実装
・地物についての詳細情報の表示画面において(図2)、写真や動画だけでなく、仮想現実(VR)コンテンツとの連携

 本アプリは、より多くの方に使用していただくために、iPhoneへの対応や、App Storeへの登録を行います。

本研究について

本アプリは、下記の資金援助を得て開発いたしました。
科学技術振興機構(JST)平成27年度 科学技術コミュニケーション推進事業 問題解決型科学技術コミュニケーション支援ネットワーク形成型「公立大学防災センター連携による地区防災教室ネットワークの構築」