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C型慢性肝炎疾患患者のMICA遺伝子のみに肝癌発症と相関

2017年09月20日掲載

研究・産学

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆9/22 医療NEWS
◆10/24 産経新聞

研究の概要

 170828-4.jpg大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学の田守 昭博(たもり あきひろ)病院教授らのグループは、肝癌との相関関係が報告されていたMICA, DEPDC5, HCP5, PNPLA-3の4つの遺伝子を対象に、本学医学部附属病院に通院したC型慢性肝疾患患者1,355例を用いて解析を行った結果、MICA遺伝子以外に相関関係が認められなかったことを明らかにしました。同一集団を対象として4つの遺伝子を解析したのは世界初です。MICAマイナー型※1でC型肝炎ウイルスに感染した患者は肝癌を発症するリスクが高く、なかでも70歳以上のC型肝疾患例および肝硬変に至る前の進行肝線維化慢性肝炎例ではより顕著な結果が得られました。また、MICA遺伝子が主要組織適合抗原※2であることに着目し、C型肝炎ウイルスに感染した患者でMICAマイナー遺伝子をもつ人は、血清および肝癌を発症した場合の癌組織についてもMICAの発現が低下していることを明らかにしました。これによりMICAマイナー遺伝子はC型肝癌の発症あるいは進行を助長している可能性が推測できます。本研究により、MICAを利用した肝癌危険群の設定および治療介入が期待できます。

※1 MICAマイナー型
MICA遺伝子はメジャー型・ヘテロ型・マイナー型に大別され、C型肝炎感染患者のうちMICAマイナー型はおよそ10%となっている
※2 主要組織適合抗原
自己と非自己を認識する免疫反応に必要な多くのタンパクの遺伝子情報を含む領域

論文掲載について

本研究成果は、9月19日(火)18時(日本時間)にScientific Reportsに掲載されます。

【雑誌名】Scientific Reports
【論文名】"Polymorphisms in MICA, but not in DEPDC5HCP5 or PNPLA3, are associated with chronic hepatitis C-related hepatocellular carcinoma"
【著 者】Hoang Hai, Akihiro Tamori, Le Thi Thanh Thuy, Kanako Yoshida,  Atsushi Hagihara, Etsushi Kawamura, Sawako Uchida-Kobayashi, Hiroyasu Morikawa, Masaru Enomoto, Yoshiki Murakami, Norifumi Kawada
【掲載URL】https://www.nature.com/articles/s41598-017-10363-5

研究の背景

 肝癌による死亡者数は全世界で年間70万人にも上ります※3。肝癌のうち約60-70%はC型肝炎ウイルス(HCV)感染が原因とされています。HCV感染後、ウイルスが排除されずに感染が持続すると、肝硬変に至り、肝癌リスクが増大しますが、このプロセスには患者の遺伝的背景も関与しているとの見解がありました。これまでにいくつかの研究グループから遺伝子多型解析の結果が報告され※4、各々MICA, DEPDC5, HCP5, PNPLA-3等の遺伝子多型により肝癌のリスクが高くなることが示されました。しかし、いずれの遺伝子多型があると最も肝癌のリスクが高いのかは明らかではなく、同一患者集団を対象として4つの遺伝子を解析することが求められていました。

※3 肝癌による死亡者数
Ferlay J., et al. Estimates of worldwide burden of cancer in 2008: GLOBOCAN 2008. Int J Cancer 127, 2893-2917 (2010).
※4 これまで報告をした機関
東京大学医科学研究所・広島大学(2011),スイス・ローザンヌ大学 (2013)

研究の内容

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    図1 C型肝癌例に占める4つの遺伝子多型の比較


 本学医学部附属病院へ通院したC型慢性肝疾患例1,355例(肝癌257例/非癌例1,098例)を対象にしてMICA, DEPDC5, HCP5, PNPLA-3の4つの遺伝子多型と肝癌との関係を解析しました。その結果、MICAマイナー多型では非肝癌例10%に対し、肝癌例では19%を占め、非発癌例より有意に高頻度であることが明らかになった一方、他の遺伝子多型には肝癌との相関関係が認められませんでした(図1)。


 肝癌例と非発癌例について臨床背景(年齢・血小板数)を一致させた解析では、70歳以上の高齢者(図2‐A)・進行肝線維化慢性肝炎の目安とされる血小板数10万から15万のグループ(図2‐B)において、肝癌例に占めるMICAマイナー型が有意に高頻度であることがわかりました。すなわち高齢C型肝疾患例および肝硬変に至る前の進行肝線維化慢性肝炎例ではMICA多型と肝癌に相関関係があり、肝癌高危険群を設定する上で臨床的に有用と考えられます。

(A)                 (B)

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図2 肝癌例と非発癌例における臨床背景を一致させた解析
(A:年齢、B:進行肝線維化C型慢性肝炎例)

 MICAは主要組織適合抗原の一つであり、癌発症やウイルス感染時に抗原提示を行うことで拒絶反応を行う重要な働きをすることで知られています。そこでC型肝炎ウイルスに感染した患者の血清中のMICAタンパク量※5と肝癌組織中のMICA mRNAの発現を検討した結果、MICAマイナー型では癌細胞・血清ともにMICAの発現が低下していることが明らかとなりました。これにより、MICAマイナー型による自然免疫応答がC型肝癌の発症あるいは進行を助長している可能性が推測できます。

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図3 MICA遺伝子多型と肝癌細胞のMICA mRNAの比較 図4 MICA遺伝子多型と血清中のMICAタンパク量の比較

※5 MICAタンパク量
MICAを元に生成されたタンパク量のこと

今後の展開

 MICAを用いた肝癌危険群の設定や治療介入などの臨床応用を考えています。危険群を設定することで、C型肝炎に感染した患者の血液からリスクを把握し、MICAタンパク量を増加させるといった手法で肝癌の発症を防止することが期待できます。さらにHCV排除後の肝発癌とMICAとの関係についても研究を進める予定です。

本研究について

 本研究は科研費【若手研究B:HCV排除後肝発癌におけるmiRNA 発現と遺伝子多型に関する研究(26860522)】、【基盤研究C:C型肝炎ウイルス排除後の肝病態に関与する因子の探索(15K09019)】の資金を得て実施されました。