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二酸化炭素をメタノールに効率的に変換する人工光合成技術を達成するための鍵となる生体触媒と人工補酵素との相関解明に成功

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 大阪市立大学 人工光合成研究センターの天尾 豊 教授と大学院理学研究科 物質分子系専攻の石橋 知也 大学院生(前期博士課程1年)らのグループは、「可視光エネルギーにより効率的に二酸化炭素をメタノールに変換する人工光合成技術」を達成するための鍵となる、ギ酸のホルムアルデヒドへの還元を触媒するアルデヒド脱水素酵素と人工補酵素(還元型メチルビオローゲン)との相関解明に成功しました。本研究成果は、2018年9月25日にRoyal Society of Chemistryが発刊する『New Journal of Chemistry』に掲載されました。

【掲載日時】2018年9月25日
【発表雑誌】New Journal of Chemistry (Royal Society of Chemistry)
【論文名】Activation of catalytic function of formaldehyde dehydrogenase for formate reduction by single-electron reduced methylviologen
【著者】Tomoya Ishibashi, Shusaku Ikeyama, Yutaka Amao
【掲載URL】http://dx.doi.org/10.1039/C8NJ02211A

研究概要

 180925-1.png二酸化炭素のギ酸への還元を触媒するギ酸脱水素酵素(FDH)を用い、電子供与体、光増感剤、電子伝達体を共存させることで、光エネルギーを駆動力として二酸化炭素からギ酸を生成することができます。さらに当研究グループは、この系にアルデヒド(AldDH)及びアルコール脱水素酵素(ADH)を用いることで、二酸化炭素からギ酸・ホルムアルデヒドを経てメタノールを生成することを報告しています。具体的には、電子供与体としてトリエタノールアミン(TEOA)、光増感剤として水溶性亜鉛ポルフィリン(ZnTPPS)、電子伝達体としてメチルビオローゲン(MV2+)、 FDH、 AldDH、 ADH及び二酸化炭素を含む反応系です(右図)。
 この反応系ではMV2+の一電子還元体(MV•+)が3つの脱水素酵素の補酵素として機能し、二酸化炭素がメタノールに還元されます。しかしながら、その還元効率は極めて低く、光照射240分後のメタノール生成量はわずか0.55 μMでした。その原因の一つとして、補酵素として機能するMV•+と3つの脱水素酵素とのそれぞれの相互作用が明確になっておらず、二酸化炭素をメタノールへ効率的に還元するための3つの脱水素酵素の最適濃度を決定できていないことがあげられます。それに加えて、二酸化炭素からメタノールを生成する過程において、中間生成物であるギ酸やホルムアルデヒドを速やかにメタノールに変換する必要があります。
 これまで当研究グループは、二酸化炭素のギ酸への還元反応における「FDHとMV•+及びその誘導体との相互作用」、さらにホルムアルデヒドのメタノールへの還元反応における「ADHとMV•+との相互作用」について、酵素反応速度論的に解明してきました。しかしながら、AldDHが触媒する「ギ酸のホルムアルデヒドへの還元反応に対するMV•+の補酵素機能」については生成するホルムアルデヒドの定量が困難であり、解明されていませんでした。
 今回我々は、困難であったホルムアルデヒドの定量を原料ギ酸の減少量から見積もれる技術を確立した上で、「ギ酸のホルムアルデヒドへの還元反応におけるAldDHとMV•+との相互作用」を酵素反応速度論的に解析することに成功しました。AldDHとMV•+との親和性を示すミカエリス定数と呼ばれるKmや、触媒回転数と呼ばれるkcat等を明らかにすることができました。
 180925-2.png比較として、以前に明らかにされたFDH及びADHとMV•+との相互作用について酵素反応速度論的解析から得られたKmやkcatを表にまとめてあります。Kmは、それぞれの脱水素酵素とMV•+との親和性を示す指標であり、値が小さいほど親和性が高いことを示しています。3つの脱水素酵素とMV•+との親和性を比較するとAldDHとの親和性が高いことが明らかになりました。また、1分間に何回触媒として利用できるかの指標であるkcatにおいてもAldDHは他の脱水素酵素と比較しても高い値を示すことがわかりました(最大速度Vmaxや触媒効率kcat/ Kmの値についても、MV•+をAldDHの補酵素として用いた場合に最大となることがわかりました)。

今後の展開

 人工光合成研究センターの最終目標の一つである「太陽光エネルギーを利用し、二酸化炭素をメタノールへ効率的に変換する人工光合成技術を確立」するためには、反応中間体として生成するギ酸とホルムアルデヒドを速やかにメタノールに変換する必要があります。
 今回の研究成果では、ギ酸のホルムアルデヒドへの還元を触媒するAldDHと人工補酵素との相互作用の解明が進みました。今後、本研究を通して得られた成果を基に、3つの脱水素酵素の最適濃度を決定し、高効率で二酸化炭素をメタノールに光還元する系の構築を目指します。