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92%の自動検出に成功! 深層学習を用いたAIによる脳動脈瘤検出アルゴリズム AI補助下での読影精度の向上を検証

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆10/25 朝日新聞
◆10/25   医療介護CBnews
◆11/24 神戸新聞

本研究のポイント

・開発したアルゴリズムでは92%の脳動脈瘤の自動検出に成功
・深層学習を用いたAIによる脳動脈瘤へのアルゴリズムの開発およびAI補助下での読影精度の向上を検証
・放射線科医による単独読影と比較して、アルゴリズムの補助下での放射線科医の読影では脳動脈瘤の検出数は5~10%程度上昇

概要

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 大阪市立大学大学院医学研究科放射線診断学・IVR学の三木幸雄 教授、植田大樹 大学院生(医師)らの研究グループは、エルピクセル社と共同で人工知能(AI)による脳動脈瘤の自動検出アルゴリズムの開発および検証を行いました。2006年11月から2017年9月の間に本学医学部附属病院をはじめとする4つの施設から集めた1271枚のMRA画像(1477個の脳動脈瘤)を対象に深層学習を用いてアルゴリズムを開発し、検証を行った結果、92%の自動検出に成功しました。アルゴリズムの補助を受けた場合、放射線科医による単独読影と比較して、脳動脈瘤の検出数は5~10%程度上昇し、その点で、深層学習による脳動脈瘤検出の臨床有用性を世界で初めて検証した研究となりました。本研究の成果は、2018年10月23日に学術誌Radiologyにオンライン掲載されました。

【雑誌名】Radiology(IF=7.469)
【論文名】Deep Learning for MR Angiography: Automated Detection of Cerebral Aneurysms
【著者】Daiju Ueda1), Akira Yamamoto1), Masataka Nishimori2), Taro Shimono1), Satoshi Doishita1), Akitoshi Shimazaki1), Yutaka Katayama3), Shinya Fukumoto4), Choppin Antoine2), Yuki Shimahara2), Yukio Miki1)
1) 大阪市立大学医学研究科 放射線診断学・IVR学, 2)エルピクセル株式会社, 3)大阪市立大学医学部附属病院, 4)大阪市立大学医学研究科 先端予防医療学
【掲載URL】https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2018180901

研究の背景

 くも膜下出血を引き起こした場合の死亡率は23-51%といわれており、国内において年間1万人以上もの方が命を落としています。くも膜下出血の85%は脳動脈瘤が原因であるため、脳動脈瘤を早期発見し、破裂前に治療することが肝要です。脳動脈瘤の検査にはMRIの一種であるMRA※1という検査が用いられます。MRA検査は少なくとも一人あたり1回100枚以上の画像を撮影するため、読影には膨大な時間を要します。また脳動脈瘤の大きさは平均4mm程度と非常に微細であり、血管の分岐点や、加齢とともに増加する血管の隆起箇所などとの区別は難しく、放射線科医でも発見しにくいケースもあります。そこで、植田大学院生は人工知能によって脳動脈瘤を自動検出するアルゴリズムの開発に取り組みました。
※1 MRA…脳の組織異常を描き出すMRIの中でも、脳の血管だけを描出することで血管異常を見いだすことができる検査。脳動脈瘤やくも膜下出血の診断に用いられることが多い。

研究内容

 人工知能アルゴリズムの開発と検証を行うため、本学医学部附属病院を含む4つの施設から2006年から2017年にかけて撮影された1271枚のMRA画像※2を収集しました。収集した画像を「学習用」「テスト1」「テスト2」の3つに分け、学習用データからアルゴリズムを構築し、そのアルゴリズムの精度を2つのテストデータを用いて評価しました。結果、「テスト1」「テスト2」の脳動脈瘤の検出率はそれぞれ91.2%と92.5%であり、高い検出率となりました。
 次に、開発したアルゴリズムの補助下で放射線科医が「テスト1」「テスト2」を再度読影した結果、脳動脈瘤の検出数はそれぞれ4.78%、12.5%増加しました。新たに発見された脳動脈瘤のうち41%は3mm以下の微細な血管病変でした。本検証結果から、放射線科医の読影に加えて今回開発したアルゴリズムを利用することで、より精度の高い診断ができることが示されました。
※2 今回収集したデータは治療のために用いられる病院用データ、また診断のために用いられるクリニック用データの2種類を含んでいます。「学習用」は病院とクリニックの2施設のデータ、「テスト1」は病院から、「テスト2」はクリニックからそれぞれ収集したデータです。

今後の展開について

 大阪市立大学大学院医学研究科放射線診断学・IVR学では、本研究の対象である脳動脈瘤のAIのみでなく、マンモグラフィによる乳がん診断のAIを開発した他、現在も独自に複数のAIプロジェクトが同時進行しています。それぞれのアルゴリズムで実際に臨床現場での試験を進め、学習用症例の蓄積を重ねつつ精度のさらなる改善を目指します。それと並行し、医療機器認証の獲得も目指します。