公立大学法人大阪市立大学
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2011(平成23)年 年頭挨拶

年頭挨拶の様子

新年明けましておめでとうございます。
新年にあたり、ご挨拶申し上げます。

本年は、年末より、山陰や東北地方に豪雪があるなど天候の荒れが報じられていましたが、大阪では長期の天気予報よりは、比較的穏やかなお正月であったのではないかと思います。皆様方におかれましては、ご家族共々も健やかなお正月をお迎えになられましたこととお慶び申し上げます。 私は毎年の恒例ですが、大晦日に除夜の鐘を聞きながら、杭全神社に参拝し、元日の午後には住吉大社に初詣をして、過ぎし年を感謝し、来る新年に新たな希望と明るい未来を願い、家族と知人の安寧を託しました。

さて、昨年4月から副理事長はじめ病院長以外の役員を一新し、全く新たな状況で大学運営を引き継ぐことになりました。この9か月間において多くの教員、職員の方々のご努力をいただきましたお陰で、全般的に健全な財政状況を維持できました。
また、同窓会関係については、従来、大学が関与していない状況がありましたが、今後の大学のステークホルダーづくり拡大の観点からも、大学事務局内に同窓会関係の窓口を設け、学生の保護者、卒業生等への連携が密に取れるようにできる体制が実現できつつあり、昨年の努力の実りといえるかと思います。

また、本学が週刊東洋経済誌の「財政などを含めた本当に強い大学」総合ランキング2010で一昨年の73位から28位に、また、日経グローカル誌の「地域貢献ランキング」では4位にと評価が急上昇しました。ランキングの意義はともかくとして、このような評価は、大学の教職員の日常活動が着実にそして、堅実に積み重ねられてきていることを如実に表現しているととらえています。

23年度は法人化後6年目の年を迎えることとなり、第1期の中期目標、中期計画の最終年度の年にもあたります。また、大阪商業講習所開設から数えて131年目の新たな区切りの最初の年にもなります。 この様な意味からも新年度は法人にとり、従前とは全く異なる意味が加わってくることになります。それは2012年から始まる大学の新たな次の時代への布石の年であり、次期中期目標・中期計画への策定と重点事項の施策戦略の構築の大切な期間であり、そのための試行の年でもあります。教員・職員が一丸となって事にあたっていく決意の年にしたいと考えております。 次期中期目標、中期計画を描くにあたり、昨年の大阪市とのパートナーシップ協議会、財政総務委員会委員との懇談会、経営審議会などでいくつかの指摘がありましたが、特にその中から共通に指摘された重要な2点を取り上げますと、

(1)大学の見える化の促進です。
言葉を変えると「広報」のあり方を従来よりももっと積極的に推進する必要があることを意味します。これは広報の組織の考え方を変え、機動的で、積極的な組織を構築することであろうと思います。しかし、これは単に手段の改善に過ぎません。
広報をより効率的に行うためには、大学のあり方を見えやすくすること、特徴化することが求められます。一般市民から見て、本学を捉え易くすることです。 経営審議会でも指摘されたことですが、「市大は単に総合大学というという表現では弱い」とのsuggestionがありました。この総合大学という意味は、「市大は総合大学として文系・理系のバランスのとれた教育、総合大学ならではの独創的な研究を行うことができるということである」と学内では十分に理解されるのですが、一般の市民の方々には特徴が分かりにくいというわけです。この特徴化をより積極的に推進する必要があります。

(2)大学運営にもっとガバナンスを要するという点です。
協議会や懇談会でも再三指摘されてきたことですが、「ガバナンスの不足」が強調されてきました。少なくとも本学のあり方に「ガバナンスの不足」が見られるという指摘です。従来、大学内の部局間でのルールや管理など統一があまりなされていなかったことも事実ですが、もっとガバナンスをメリハリよく利かせた運営が強く求められています。私も十分に理解しているつもりですが、大学は本来、自主独立の精神を尊び、自由・闊達を旨として教育・研究に励んできたという経緯があります。
本学は他学以上にこの点では恵まれてきたと感じています。ところが独立法人化後の大学のあり方を考えるとき、また、外部の委員会等での評価から見ると、教育、管理面での部局間のまちまち感がマイナスの評価と捉えられるようになっています。全体的な統一感のある大学運営と伝統的な自由の気質の温存をバランスよく運営できることが、これからの大学運営の大切な点になると考えています。

以上のような点について、とくに注意を払いながら次期中期目標、中期計画を考えていくことが求められます。

本学は131年の歴史を歩んできておりますが、この永きにわたり多くの優秀な人材を輩出し、またその方々の後ろ盾とともに大阪市民の気概と活力に支えられてきた伝統と理念があります。特に今、本学の今後の方向性を検討するに当たり、その建学の精神を改めて振り返りますことは重要であります。建学時の市長のメッセージを示すまでもありませんが、「大学の意義・目的の中心に、市や市民を据えていること」「実社会で役立つ実用性の高い研究成果を求めている事」がその要点であろうと思います。この建学の精神を改めて思い返し、その精神のめざす方向性を具体化していく必要があると考えております。そして、現在の都市・大阪市の状況を踏まえて本学が果たすべき役割を考えたいと思います。
大阪市に貢献する本学の使命としては、基本的には「大都市大阪の活性化」であり、「市民生活の向上に貢献」することであると認識しておりますが、特に生活保護などの社会保障費が市財政を圧迫している中、大阪市では、持続可能な都市行政を推進していくために、中長期的戦略として経済成長戦略を公表しています。
こういった市の大きな戦略に、成長産業の創出や人材育成の面に関与していく事が今求められている役割であり、さらには、人材育成において集客・観光や健康・医療、デザイン・クリエィティブといった分野も計画に盛り込まれています。

それでは大阪市において、本学の役割を実現するための具体的な戦略としてこれからの本学は何を目指すのか?
私は、今後の大学の重点化の柱として、3点にフォーカスしたいと考えています。

  • 「都市科学分野の研究とシンクタンク機能の充実」
  • 「高度専門職をめざす社会人の育成」
  • 「国際力の強化」

の三つを重点項目として打ち出したいと思います。

まず、最初の「都市科学分野の研究とシンクタンク機能の充実」ですが、都市を研究対象にした都市のあり方に関する研究のみでなく、都市を構成する市民、環境、あるいは自然現象など広範囲な対象として、文系と理系の融合的総合的な学術研究をすることを都市科学と表して、本学としての独自の学問ジャンルを樹立できればと期待し、本学の特徴として認識されるようになれればと思います。
本学では既に都市研究プラザや複合先端研究機構において研究科の枠を超えた都市問題の研究を行い、かなりの成果をあげておりますが、こういった取り組みをさらに各研究科間で発展させ、都市大阪の文化・経済・市民生活全般にわたる広く特色のある都市研究として発展させ、それを基礎とした教育を推進し、本学の教育・研究の特徴として表現できればと考えております。

次に、「高度専門職をめざす社会人の育成」です。より市民に身近で市民に求められる教育の場としての大学をめざすとともに、将来的にも市民が求める専門性の高い人材育成に今まで以上に取り組みたいと考えております。
すでに本学には、日本初の都市問題を研究する社会人を対象とした大学院である創造都市研究科があり、創造都市研究科ではこれまでも、都市の活性化といったテーマで専門性の高いプロフェッショナルの育成を図ってきていますが、他の研究科においてもこれまでの実績を活かし新たな地域活性化人材育成プログラムにも取り組みたいと考えています。
法学研究科は法科大学院での法曹界の専門家育成、経営学研究科、経済学研究科での税理士や会計士などの経済や経営の専門家、文学研究科、理学研究科での教育界での専門家や研究者、工学研究科での土木、建築での専門家育成、医学研究科、看護学研究科、生活科学研究科でのより専門性の高い医療・健康・保健衛生の関係者や福祉関係の専門家の育成になど例をあげれば数多くありますが、これらはすでに取り組んできております。
これからの都市の活性化に適したテーマの専門性の高いプロフェッショナル、たとえばサービス工学などといった専門分野や新たな分野の育成を皆様のご意見をいただきながら構築していきたいと思います。
高大接続による一貫した中高等教育の実践としては、高校授業等へ理学部、工学部、文学部などの本学教員が参画し、すでに活発に活動を行っておりますが、さらに拡大、発展させるためにはどのようにすべきかを皆様と議論しながら考えたいと思います。

3番目は「国際力の強化」です。国際都市・大阪を背景とした大学として、世界に通じる実学を推進するために、国際的な教育研究機能の強化を図ってまいりたいと考えております。現在、国際化戦略部門をどのように組織化するかを検討中ですが、教育推進本部、研究推進本部にも積極的に参加をいただいて、国際化に向けての全学的な方向性を示したいと考えております。
その基盤教育として、国際語、現時点では英語になると思いますが、将来は中国語やその他の言語も必要になると思っております。いずれにしろ国際語、英語による授業の拡大が望まれます。その背景には、多くの外国人が日本社会に進出し、英語を公用語とする企業が多く見うけられる昨今、英語でのコミュニケーション能力や異文化の理解は実社会では必須の状況となってきているからです。
本学ではこれまでも英語教育に力を入れ、英語授業はネイティブスピーカーにも行ってもらっているところですが、さらに質的・量的にも充実させ、基礎的な全学共通科目なども英語化できればと期待を膨らませております。ただ、一朝一夕にできることではないことも十分に理解しており、関係の皆さまに多大のご協力をいただきながら推進したいと思います。また、コミュニケーション能力を全学的に評価し、推奨するために入学時と2年時終了時に社会的にも広く用いられているTOEICによる評価を行えればと考えております。可能なら次年度にも試行できればと個人的には考えております。
さらには、全学的な国際化戦略体制を整備し、その取組みの一環として、国際的な大学連携はもとより、留学生のネットワーク化を図り、留学生が母国に帰り、本学で学んだ成果を母国だけでなく大阪市にも還元していただけるような仕組みづくりも検討したいと考えております。
本学の国際化が推進されることで、大阪市の国際競争力を高める事に貢献できるとともに、日々人々が集い、交流する国際都市大阪にふさわしい大学作りを念頭に、学生にとって魅力溢れる、そして社会にとって力強いInternational Universityを目指して、取り組んでまいりたいと考えております。

杉本町駅を一歩出れば、そこは整備された大学構内であり、緑があふれ、若者たちが活き活きと活発に行動し、飛び交う話声にも日本語や英語に混じり中国語などが耳に漏れ聞こえ、教員や職員が仕事や研究に没頭し、市民の散策も見受けられる。そのような学園風景が次期中期目標、中期計画終了時には見られるようにしたいと、今、決意を新たにしているところでございます。

これからも皆様方とご相談をしながら、この新しい年を充実した、実りのある年としたいと念願しているところです。

本年も皆様のご健勝とご活躍を祈念し、新春の私の希望と願いをこめて新年のご挨拶とさせていただきました。