公立大学法人大阪市立大学
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2011(平成23)年度学部卒業式・大学院修了式 式辞

平成24年3月23日

皆様、ご卒業・修了おめでとうございます。

学長式辞

永年にわたりご子息・ご息女を支えてこられたご家族の皆様にも心からお祝いを申し上げます。
本学にとりましても、関係各位をはじめご来賓の皆様方のご臨席を賜り、平成23年度の卒業式・修了式を挙行できますことは、誇らしく、大きな喜びであります。
総数2,227名の方が所定の全課程を修了し、晴れて本日のこの式典に臨むことができますのは、皆様ご自身の平素の切磋琢磨の賜物であり、深く敬意を表します。このなかには、10カ国と地域 の81名の留学生の方々もおられます。留学生の方々は異文化の中で、きっとさまざまな困難に直面され、それを克服し、そして立派に初志を貫徹されました。その努力を心から讃えたいと思います。
同時に、これまでの長い学校教育の期間、皆様のご家族、恩師、先輩、同僚、後輩、そして社会から受けた恩恵には計り知れないものがあります。
また、皆様が大学生活を送った本学は、大阪市民の大学として267万の市民によって支えられてきたという事実にも思いを馳せていただきたいと思います。

皆様の多くは社会に巣立ち、高度な専門的職業人となることが期待されています。また、大学院に進学してさらに学業を続ける人、病院等で研修を受ける人、研究者として第一歩を踏み出す人もおられます。いずれにしましても、今後も大阪市立大学の卒業生・修了生の名に恥じないよう努力し、それぞれの領域で自らの目標を達成してください。本学では、それが実現できる教育に努めてきました。自信と誇りを持ってこれからの人生を歩んでいただきたいと願っております。

昨年の3月11日に東日本大震災が起こりました。まだ、1年前の出来事で、マグニチュード9.0という未曽有の地震が我が国を襲いました。我が国を震撼させたといってもいいのではないでしょうか。
地震に伴った巨大津波による水没や家屋倒壊で、岩手県、宮城県など東北3県の太平洋側沿岸部都市は軒並み壊滅状態となりました。現在も避難生活を余儀なくされておられる方々も多くおられます。また、原発事故に伴う放射能汚染については現在も大きな課題として取り上げられ、除染に努力が傾けられています。
私たち、関西に住む者は、神戸の大震災を経験し、今日の復興を経験してきております。この経験からも、震災のより早い復興を願うとともに、皆様とともに大いに支援をしていきたいと思います。

本学において、全学部横断型の研究グループである「大阪市立大学:都市防災研究」を立ち上げました。生活科学部の森教授を代表研究者として本学の総合性を活かした都市防災研究に取り組み、直後、事後、事前の時間軸と大阪・被災地を対象とする空間軸の視点で研究し、成果を関西圏はもちろん被災地にも還元できるようにしたいと考えています。

本学は、平成18年に法人化をし、すでに6年となり、第1期中期目標・中期計画の期間を終えようとしています。法人化以降、教育・研究・地域貢献の3推進本部を中心に、活発な活動を推進するとともに、新たに産学連携推進本部や国際化戦略本部を設置し、組織的な産学連携や国際的な研究交流を推し進めてきました。

この4月からの次期の6年間の第二期中期目標において、わが国で数少ない公立の総合大学として131年の歴史と伝統を有し、大学の普遍的使命である真理の探究はもとより、都市を学問創造の場と捉え、都市の諸問題に取り組み、特に都市科学分野の研究とシンクタンク機能を充実するなど、大阪・関西の活性化になくてはならない存在と位置付けております。さらに、「総合大学の魅力である多様性を強みとして、高度の専門性とグローバルで幅広い視野を有し、都市大阪の成長や地域の発展に貢献する有為な人材を育成」するという目標が掲げられています。
一方で、本学の設立団体である大阪市において、市と府の再編が検討され、新しい大都市制度を構築する改革に着手しております。「大阪府市統合本部」が設置され、共通するさまざまな施策について、経営形態の見直しが進められているところであります。大学につきましても公立大学法人大阪府立大学との経営統合を視野に入れた検討が行われております。大阪府立大学とともにそれぞれの伝統や個性を活かしながら、切磋琢磨する法人が設立されれば、大阪・関西にとって、より大きな知的拠点となり、その発展に貢献できることとなります。本学としても、これを機に、めざす方向性に沿い、ともにアジアの先端をゆく大学として新たな姿を示していきたいと考えております。

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本学の昨年のいくつかのトピックスを述べたいと思います。
11月21日発売の日経グローカル誌の全国の大学の地域貢献度ランキングでは、本学は全国9位でした。同誌では、「大阪市北船場地区の街の活性化イベントを2008年から開催していることや、文楽や神社の祭事を発信し、新しいコミュニティーの形成につなげている」と評価されています。
12月10日発売の週刊ダイアモンド誌の就職に強い大学ランキングでは全国12位で、国家公務員や人気100社就職率が高いと評価されました。
アジアの大学ランキングではアジアで58位、国内で15位といった報告もあります。これらは瞬間風速みたいなもので、時間ごとに順位は入れ替わりますが、評価を受け入れ、さらに高みに臨む心意気を示したいと思っております。
また、昨年の12月26日の米科学誌サイエンスが選んだ2011年のブレイクスルー10大業績に、日本から2つ選ばれました。その一つは、小惑星探査機「はやぶさ」プロジェクトで、もう一つが本学理学部の神谷信夫教授らの研究成果である光合成たんぱく質の構造解析の研究成果でした。大変な名誉で、誇りに思います。
さらに、本学での「光合成を用いた次世代エネルギー研究」やそのプロジェクトが大阪市の強力な支援による新たな研究施設として「人工光合成拠点」が建設されることになりました。すでに多くの企業の共同研究の希望があるとのことで、今後のさらなる発展が期待されます。

さて、本日のこの佳き日のためのお話をしたいと思います。 コマツ製作所会長で、日本経済団体連合会(経団連)副会長である坂根正弘様はしばしばテレビなどに出ておられますので、皆さまもよくご存じだと思います。
同氏は1963年に本学工学部をご卒業され、小松製作所にブルドーザーの設計技術者として入社。取締役、現コマツアメリカの社長を経て、2001年に同社代表取締役社長兼CEOに就任されました。現在は取締役会長として、社業での活躍はもとより、社会的な事業にも力量を発揮され、アフリカや低開発国への貢献、たとえば、サハラ以南のサブサハラ地域の対人地雷除去活動などへの貢献を行っておられます。
実は、最近、東洋経済社から出版された同氏の3冊目となる本「言葉が人を動かす」というタイトルの本を坂根氏から直接いただきました。お手紙の中に、学生諸君にも読んでいただければと願っておられましたので、この本を少し紹介したいと思います。

人を動かすのは、つまるところ言葉であるという、同氏の長年の企業内活動や社会活動から得られたエッセンスが示されています。「リーダーに求められる言葉の選び方、使い方」を「言葉力」という造語で表現され、言葉で人を動かすための工夫として、平易な言葉、正確さ、論理的、そして相手の立場や感情に配慮するという要素があります。将来リーダーを目指す人は、私はここにおられるすべての人がそうであると思いますが、言葉力を養うことが第一のことであり、その裏には「きちんとした行動」が存在し、これらの能力を高めるためにも「よく見る」こと、よく観察することが大切と強調されています。いわゆる「見る」「語る」「実行」の三位一体が坂根氏の言わんとされる「言葉力」という意味です。

坂根氏の座右の銘の一つに「知行合一」(ちこうごういつ)という言葉があります。これは王陽明の学説にあることばで、知識は行動のもとであり、行動は知識の発現であるとする「知と行は同時一源のもの」と広辞苑では示されていますが、同氏は「知識と行動は合わさって初めて1つである」「実践の場で繰り返して学んだことこそ本物だ」と明快に示されています。
諸君が社会に出られ、新たな世界で仕事なり、研究なりに着手されます。たぶん、きっと驚くほどに沢山のことを学ばなければならないと思います。なにしろ初めてことが圧倒的に多いわけですから。仕事をすることは、即、勉強することと必要に迫られるでしょう。実際に行動しながら学び、学んだことを行動に移すことを繰り返すことになると思いますが、これが皆様の社会人の基礎を作り、より社会人として発展させる基盤になる大切な、重要な第一段階であると考えてください。ここを全力で体当たりしてください。きっと驚くほどの進歩を実感できる日が後に来ると思います。そのように解釈できるのではないでしょうか。

坂根氏は、3つの力、すなわち、問題の本質や物事の大局を「見る力」、聞くものを腹落ちさせ行動を引き出す「語る力」、言葉から行動と実績を伴わせる「実行する力」。この3つの力を知行合一で高めてこそ、初めて「言葉力」が備わるといいます。「99%の汗と1%の知恵」、どんな偉人もその成果の99%は汗を流した結果であり、長い長いその人の地道な「物事の見える化」の努力があって、最後に1%の知恵が後押しするということではないのでしょうか。
これから新たな出発をするという諸君、研究生活や会社勤めを始める諸君。このような時期だからこそ、この力強い坂根先輩の言葉を感じ取ってください。機会があれば、ぜひ「言葉力が人を動かす」を読解してください。もっと具体的なお話が載っていますので一読いただければ思います。

式歌斉唱

ところで、「linsanity」という単語をご存知ですか?たぶん、皆さんの中でスポーツの好きな人は、ご存知かもしれませんね。
「linsanity」という造語ができたのはごく最近のことです。米国ハーバード大学を2010年に卒業したジェレミー・リン君は、全米プロバスケットボール協会(NBA)の選手となったのですが、NBAのチームのウォリアーズやヒューストン・ロケッツを2010年、2011年とわたり歩くことになり、ご多分に漏れず泣かず飛ばずの選手生活を送っていました。 移籍3チーム目に移ったのは2011年の12月で、最近の数年は弱小チームに落ちぶれたニューヨーク・ニックス。そこでも、またまた今年の1月初めにリン選手は2軍に降格されます。何とか1軍に復帰できたものの出場のチャンスに恵まれず、ニックスから放出寸前だったといいます。実はわずか1カ月前まで、ニックスの地元のニューヨーカーファンも、リン選手の名前すら知らなかったそうです。実際、つい最近まで本人も「いつまでNYにいられるかわからないから」とアパートも借りずにお兄さんの家のソファで寝起きしていた、という冴えないエピソードがあるくらいです。
今年のニックスは8勝15敗とあまりにも負けが込んでいたためか、2月4日にコーチがやけくそ半分で(これはあるスポーツ紙によるのですが)、初めてリン選手をニックスのゲームの途中出場に起用しました。するとどうでしょうか、36分間で25得点をマークして大活躍。その後もデビュー5試合の平均スコアがNBAの新記録となるなど、誰もが度肝を抜かれる活躍です。わずか3週間でまさに彗星のごとくにスターダムにのし上がったのです。
そして、8勝15敗と負けが込んでいたニックスの救世主となり、リン選手が出場してからは9勝3敗。名門スポーツ・イラストレイテッド誌で2週連続の表紙となり、スポーツ誌のみでなく2月27日発売のタイム誌の表紙を飾るなど、全米のNBAファンのみならず一般の人々も目を奪われ、ここで「リンサニティー」という造語が生まれました。「狂喜」という意味の「insanity」にリン選手の名前を冠した造語で、まさに驚愕の出来事だったわけです。
米メディアによると、リン選手はニックスからの放出寸前のぎりぎりのたった1回の機会を見事に生かした実力と運。厳しいプロスポーツの世界の綾を鮮烈に映し出した最近の話題として沸騰しているといいます。でも、この話には裏があます。
単にハーバード大学卒という高学歴というだけでなく、台湾系アメリカ人であることです。プロバスケットボール界でアジア人が一流のバスケットボール選手になることは例外中の例外という風評があり、プロスポーツでのアジア人への一種の蔑視があるのも事実です。2010年のドラフト外でのNBA入りしたリン選手は、ある意味人種差別的な扱いとでもいうのでしょうか、満足にプレイする機会が与えられなかったということがファンにも分かってきました。このため、なおのこと爆発的に話題となったと思われます。実はもともとアマチュア時代から、オールアイビーリーグのファーストチームの選抜選手に抜擢され、ジョンウッデン賞にもノミネートされるなど、実力の頭角を表わしていたので、突然の奇跡が生じたわけではありませんでした。

私の好きな言葉に「野球でのピンチヒッターはいつでも打席につける」というのがあります。ピンチヒッターは突然に指名されることが往々にあるわけですから、スターティングメンバーとは異なった心の持ち方が必要です。実力はこの1打席に自分のベストを出し切れるようにしておかなければなりません。まさにプロの心構えといっていいと思います。リン選手はまさにこのお手本のような舞台を作ったわけです。

類似の言葉に、剣術の世界でいう「待ち」の体勢というのがあります。「待ち」とはwaitingしているのではなく、何時どの瞬間にも相手の攻撃に対して、より強力な反撃ができる体勢で、相手との間合いを計っているタイミングとでもいうのでしょうか。見た目はwaitingに見えてしまいますが、まったくその心持は異なったものです。このような心のあり方は、剣術ではその時間は瞬間かもしれませんが、時間の長短は別にして、このようなことは皆様の人生の中でも、研究生活でも、仕事社会においても、あるいは友人関係や家族との関係においても、この大切な局面で、大きな舞台が用意されていることがあるのではないでしょうか。

リン選手はほんの一例で、他にも有名なところでは、1943年11月14日、当時25歳の無名で若輩だったレナード・バーンスタインが、世界的な指揮者ワルターの急病による欠場ため、急遽、当日の代役で、実際には他の有名な指揮者の代役が間に合わず、それこそ急遽の代役でカーネギホールにおけるニューヨーク・フィルのコンサートを指揮し、一躍、世界的な名声を得る大成功を収めた有名な話があります。このように名声を博した方々や偉人の多くの実例があります。
人には生涯に1度ならず大きな転機やチャンスがあるといわれています。その転機を逃さずに展開・発展させることの大切さ、そして、それよりもっともっと大切なことはそのような転機があった時に、あなたの実力が最大限発揮できるように、日々の地道な努力で地力を磨いておくことではないかと思います。

最後に、社会、世界は急激に、あるいは過激に変化し、変容してきています。また、恐ろしいほどの、そして予測すらできない災害が襲ってきます。このような世界においてグローバルな生き方はもう必須なことです。
本日は、社会に第一歩を歩まれる大切な日であります。それとともに社会における生涯学習がはじまる初日でもあります。
ご自分で体験し、経験を蓄積し、ご自分で学んでいくことが求められます。また、皆さまの社会生活や職業人生活において、ご自分が専攻してきた専門とは異なった分野の勉強や、より高度な勉学を必要とする場合があろうとも思います。本学では社会人のためのカリキュラムを豊富に用意しております。本学もこれから、さらにグレードアップして新たな大学へと進化をし続けます。機会を見つけて、本学の社会人のための学びの場を利用していただければと思います。
また、多くの先輩の方々から本学で講義を教わられたと思います。いつの日か、皆様も実社会での豊富な経験と実績を学生諸君に還元していただける場を持っていただければと期待しております。種々の立場で、本学を支援し、本学を愛し、そして本学で再びお会いできることを楽しみにいたしたいと思います。 皆さま、本学で学んだ「進取の気風」と「在野の精神」を持ち続けてください。健康で充実した生活、そして逞しい生きざまを創ってください。

皆さまの大いなる前途を祝し、本日の卒業式・修了式の私の祝辞といたしたいと思います。

本日は本当におめでとう。

大阪市立大学長 西澤良記