公立大学法人大阪市立大学
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大学案内

2011(平成23)年度入学式 式辞

平成23年4月5日

桜花爛漫、本日の晴れやかな日に、平成23年度大阪市立大学入学式に出席された学部学生1,516名、大学院学生715名、法学部研究科法曹養成選考58名の2,289名の諸君、そしてこの日を長年にわたり、物心両面に亘り支え、心待ちにしてこられたご家族の皆さま、ご入学おめでとうございます。
ご多忙にもかかわらずご出席いただいた大阪市長 平松邦夫様、大阪市立大学 学友会副会長である株式会社アシックス社長の尾山 基(もとい)様をはじめ関係各位のご臨席を賜り、平成23年度の入学式を挙行できますことは、本学にとりまして誇らしく、大きな喜びであり、教職員ならびに在学生とともに、皆さまが本学の構成員となられたことを心より歓迎いたします。
この皆様の栄えある門出にあたり、私から一言お祝いを申し上げたいと存じます。

冒頭に、皆様とともに黙祷を捧げさせていただきましたが、この3月11日に東日本巨大地震が起こりました。観測史上、世界最大のマグニチュード9.0という未曽有の地震が我が国を襲いました。甚大な被害が明らかになり、死者行方不明者は2万8千人を超え、現在も多くの方が避難生活を送っておられます。また、原発の災害も重なってきております。想像を絶する被害としか言いようがありません。
本学として、3月12日に災害対策本部を立ち上げ、該当地域出身者146名の安否確認と本学医学部からDMAT(災害派遣医療チーム)を即時派遣、また、防災の専門家である宮野副学長を長とした公立大学の援助のための調査派遣をし、支援を行ってまいりました。
今回の東北地方太平洋沖地震へのより早い復興を願うとともに、皆様とともに大いに支援をしてまいりたいと思います。
被災されました方々に謹んでお見舞いを申し上げますとともに、多くの機関や人々による復興にむけてのご努力に敬意を表したいと思います。

さて、本日の皆様の入学の日にあたり、本学の歴史についてお話をしておきたいと思います。大阪市立大学は今年で創立131年を迎える長い歴史と伝統を持ち、市立の大学としては我が国で最も歴史が古く、公立大学として規模の最も大きな大学です。また、大阪市内に位置する唯一の総合大学でもあります。 
その淵源は大阪商業講習所の開所に遡ることができます。1880年(明治13年)、明治維新からわずか10年余りの時代に、当時26歳の「大阪新報」編集主幹であった加藤正之助が、「大阪新報」に「商法学校設けざるべからず」の記事を発表し、我が国の商業の中心として栄えている大阪に、なぜ商法学校がないのかと社会に問うたのです。
この先見の意見に、当時の「大阪財界のリーダー」であり、大阪商工会議所、大阪株式取引所(現代の大阪証券取引所)などを設立し、私財をなげうって多大の貢献があった五代友厚がこの意見を全面的に支持し、商業講習所創立の中心的役割を果たしました。

その後、大阪市の誕生によって市に移管され、いくつかの経過を経て、1928年(昭和3年)に大阪商科大学に昇格いたしました。

大学に昇格したこの当時、市長・関一は開設にあたって「市立商科大学の前途に望む」と題する一文を草し、商大設立の意義と理念を述べました。そこには3つの意義が記されています。

  • 第1に、大学を大都市に必要な精神文化の中心的機関と位置づけたこと、
  • 第2に、そのためには市民の力を基礎として市民生活に密着した大学、すなわち、国立大学の「コッピー」ではない大学であること、
  • 第3に、「大都市・大阪を背景とした学問の創造」を大学の任務としたことです。

関一によって示された大阪商科大学の理念は、現在でも輝きを失うことなく、現在の本学の理念として継承され、教育・研究・社会貢献のあり方を方向づけております。

戦後、学制改革により、1949年(昭和24年)に新制大阪市立大学となり、昭和30年には、大阪市立医科大学を併合して、現在の8学部、大学院10研究科をもつに至っています。
大阪市立大学開設の際の大阪市長である近藤博夫は「大阪市立大学は大阪カラーの豊かな大学にしたい。同時に大阪市は大学カラーの豊かな、文化都市にしたいというのが本学設立に込められた願い」と述べられ、総合大学大阪市立大学を立ち上る決心をしたといわれています。
また、初代の学長であった恒藤恭(きょう)は「理論と実際との有機的な連結を重視する学風をかたちづくって行く」と述べ、種々の分野において社会の実用に役に立つ研究成果を挙げ、社会の職域において真に有能なはたらきを得る人間を養成することと述べています。
すでに、本学は9万有余の人材を世に送り出すとともに、広く学術の振興、産業の発展、市民の教育に重要な役割を果たしてきています。文字どおり公立大学の雄であり、名実ともに充実した都市型総合大学として、発展してきています。

さて、本年度、2011年度はどのような位置づけの年であり、今後の本学がどのようなことを行おうとし、また、期待されているかをお話いたしたいと思います。

本学の長い歴史と伝統を踏まえますと、「大学の意義・目的の中心に、市や市民を据えていること」「実社会で役立つ実用性の高い研究成果を求めている事」という建学の精神を認識し、その精神のめざす現在の方向性を具体化していく必要があります。

今後の大学の柱として、3点を挙げたいと考えています。

  • 「都市科学分野の研究とシンクタンク機能の充実」
  • 「高度専門職をめざす社会人の育成」
  • 「国際力の強化」

の三つの重点項目であります。

最初の「都市科学分野の研究とシンクタンク機能の充実」です。
都市を研究対象にした都市のあり方に関する研究のみでなく、都市を構成する市民、環境、文化そして自然現象など広範囲な課題を対象として、文系と理系の融合的、総合的な学術研究をすることを「都市科学」と表現したいと考えています。
すでに、本学では、2006年に都市研究の「広場」として、学内外の都市研究ネットワーク網を発展させ、横断的な学術の核となる「都市研究プラザ」が設立され、地域に溶け込んだ活動を通じて都市に関する学術的、政策的研究を推進し、提言を行うことにより、都市問題の解決や都市の発展に寄与してきています。
2007年度には文部科学省の21世紀グローバルCOEプログラムの拠点に選ばれ、現在もソウル、バンコック、香港、メルボルン、ロサンジェルスなど世界に現場プラザを設けて、研究・調査を発展させています。さらに、都市研究では世界で初めての国際学術ジャーナル「City, Culture and Society」をオランダのエルゼビア社から刊行し、国際的な注目を浴びています。

また、「都市環境」をキーワードにして、理学、工学、生活科学研究科が主となって学部横断的に、核となるテーマの研究を有機的、機能的に推進し、プロジェクトを通じて、人材育成を行うとともに、社会・地域貢献をはたす「複合先端研究機構」があります。
「都市環境の再生に向けた戦略的新展開」を大テーマとしていますが、近日中に「光エネルギー」について、本学から世界的大発見が国際的に発表されることになっており、話題が沸騰すると思います。
勿論、各研究科においても我が国を代表する多くの研究が進行中で、研究科やジャンルの枠を超えた取り組みをさらに発展させ、文化・経済・健康医療、市民生活全般にわたる特色のある「都市研究」として熟成・昇華し、それを基盤とした教育を推進して、成果により都市大阪のシンクタンク機能を果たしたいと考えております。

2番目は、「高度専門職をめざす社会人の育成」です。より身近で、教育の場としての大学をめざすとともに、将来的にも専門性の高い人材育成に今まで以上に取り組みたいと考えております。大学生活を通して、この中の多くの皆さまには、種々のジャンルの高度な専門職をもつ社会人になっていただけると思っています。

3番目は「国際力の強化」です。国際都市・大阪を背景とした大学として、世界に通じる実学を推進するために、国際的な教育研究機能の強化を図ってまいりたいと考えております。
その基盤教育として、国際語、とくに英語教育は重要です。その背景には、多くの外国企業が日本社会に進出し、また、我が国の大半の会社が海外に進出しており、英語を公用語とする企業も多く見うけられる昨今、英語でのコミュニケーション能力や異文化の理解は実社会では必須の状況となってきているからです。

本学ではこれまでも外国語、特に英語教育に力を入れ、さらに質的・量的にも充実させ、基礎的な全学共通科目なども英語化できればと期待を膨らませております。ぜひ、皆さまも1,2回生の期間で英語のhearing、communication能力を倍増し、グローバルな視野での勉学にいそしんでいただきたく願っています。
今年からの企画で、この4月には1回生全員にTOEICを受けていただくことになっております。また、2回生終了時にも受けていただき、皆さまの英語力の実力度を確認していただければと思っております。
さらには、世界の諸都市やその大学との連携や人的交流を強化し、国際的な学術交流拠点を目指すとともに、留学生のネットワーク化を図り、さらに皆さまにも学生時代から、海外で活躍できる機会を増やしたいと思っております。

また、この10月には学生サポートセンターが開館できる予定で、皆さまの学業に関する事務的なことはここですべてできるように、現在、鋭意努力をしているとこです。さらには、新理系学舎の建設も竣工に向けて、調査・設計がなされています。

以上のように、本学の大きな歴史の流れと現在の、そして今後の大学の方向性をお話させていただきました。皆さまは、本当に重要な歴史の時点に立っておられるといっても過言ではないと思います。
この2月には、創立130周年を記念して、本学が生んだ芥川賞作家、開高健について「生誕80年、大阪が生んだ開高健」展を行いました。2月11日からの10日間を、難波パークスで開催いたしました。初日には、平松市長をはじめ、主催者、共催者、支援の方々にお集まりいただき、テープカットをさせていただきました。
大阪全域に、朝から雪が積もるというハプニングもありましたが、NHKはじめ多くのテレビ、ラジオ報道をしていただき、期間中、当初目標の3,000人を大幅に上回る、7,000人以上の方に来場いただき、大盛況となりました。

開高健氏は、大阪市天王寺区で生まれ、その後、住吉区北田辺に転居。1948年(昭和23年)に本学法文学部法学科(現在の法学部)に入学。高原記念館を寄贈いただいたユニ・チャームの創業者で現取締役ファウンダーである高原慶一朗氏とは同級で、文学論を戦わせ合った仲間だったと、日本経済新聞での「私の履歴書」に述べられておられます。
その後、壽屋(現 サントリー)宣伝部に入社し、PR誌「洋酒天国」の編集やウイスキーのキャッチコピーを手掛ける。こんな時代に、「裸の王様」で芥川賞を受賞。28歳。

その後、朝日新聞社の特派員として、戦時下のベトナムへ取材。南ベトナム政府軍に従軍して最前線に出たおり、反政府ゲリラの機銃掃射の猛攻に会い、総勢200名の隊が、たった17名の生存となるも、無事生還。「輝ける闇」、「夏の闇」、「花終わる闇(未完)」の3部作はこの戦争での凄烈な体験によっています。
また、グルメと、愛飲家でもよく知られ、釣り師としても名を馳せています。南米アマゾン川での巨大魚ピラルクーを釣り上げるという前人未踏の試みを行った著作「オ―パ!」など楽しく、わくわくしながら読みつつも、コミカルな所作、シニカルな表情、そしてときにホロっとした感傷の顔も覗かせます。

開高は、実は英語が得意で、英語の先生のアルバイトをし、中学5年生のころから、フランス文学に興味を持ち、サルトルの原書をよんでいたと、同級生の京大名誉教授の作花済夫氏が書いておられます。
学生時代から猛烈な読書家で、月に50冊は読んでいたという。それとともに、井原西鶴や近松門左衛門などの愛読の文章は100回も200回もよみかえして覚えてしまい、また、フランスの詩人、ポール・ヴェルレーヌの「秋の歌」をフランス語で口ずさんでいたといいます。いまでいうトリリンガルを地で行っていたのでしょうか。
このような素地が、いとも気楽に世界に出かけ、桁の大きな作家として発展できたのでしょう。今から50年以上も前の世代のことです。今でも、私の部屋にある彼の色紙の「悠々として 急げ」は、やはり開高健の生き方をもっともよくあらわしているように感じます。「悠々として 急げ」です。

昨今、我が国において「内向き」「自信喪失」「学力低下」等々、元気の出なくなるマイナス・イメージばかりの言葉が、日本人の評価としてテレビや新聞などでよく見かけます。これが経済的な脆弱性と重なり、益々元気をなくしているような風潮が見受けられます。
3月21日発刊の日経ビジネスでは、震災の次の2番目の特集として、「日本人の競争力」を取り上げています。本当に最近の日本人の実像はそんなマイナス・イメージなのか?
この疑問に、同誌は独自の判断基準で算出したところ、「日本人の高い競争力」が表出してきたという。体力、知力、精神力、経済・社会、労働者品質、国際性をポイント制で集計すると、中国 95、韓国 139、米国 147、英国 131に比して、我が国は160でトップであったといいます。
海外留学数は大局的に見れば決して減少しているのではなく、若年層の人口減少を考慮すれば、学生の留学比率はバブル期の4倍になり、むしろ「不況で企業による社内派遣の留学が減っているだけ」という。留学先は中国、韓国、インド、タイ、マカオなどが多くなり、アジアへの留学が欧州への留学より多く、北米に次ぐ人気であるといいます。
さらに、海外在留邦人数は増加の一途をたどり、逞しい人材を輩出してきている。日本人はイスラム教にもキリスト教にも属さない、ある意味、融通無碍な存在。しかも、日本は、第2次世界大戦後の荒廃から平和で豊かな国を築いたという中和力の高いイメージを国際的に持たれているといいます。
「国際社会では、実は最もハードルの高い『信頼』という財産を備えているという点で、ものすごい価値がある。国際社会で日本人であるということは、プラス以外の何ものでもない。」と国連PKO局政策・評価・訓練部長を長年務める中満 泉氏が、同誌で語っています。
現在のようにグローバル化が進む世界で、最も活躍の機会があるのは日本人だとも言う。ただ、弱点として、「精神力」とくに競争への適性の低いことと、「国際性」とくに英語力が中国、韓国をも下回っていることが指摘されています。

大変に象徴的なデータと興味深く読みましたが、今の若い人たちは決してひ弱なのではなく、優れた資質を持ち、これからは国際社会、ビジネスの場で十分に実力を発揮し、益々評価されうるのではないかと思います。
現在は、本当の意味のグローバルな人材が求められ、単に言葉(英語)を話せるだけでなく、異文化の理解、仕事に対する十分な能力が求められています。本日からの大学での勉学や生活。それがすべて皆さまの血となり肉となって、未来への大きな飛躍の原動力になると確信いたします。

ご入学のこの日に際し、有意義で可能性の広がる学生生活、研究生活を本日よりスタートされますことを祈念し、わたくしどもの歓迎の意を表して、皆様への祝辞とさせていただきます。
本日は、本当におめでとうございます。