交換留学レポート4月号(ドイツ ハンブルク大学)
文学研究科後期博士課程 木戸紗織
ハンブルクの
シンボル:ミヒャエリス教会
ハンブルクのマスコット:
フンメルをかたどった案内版
市章の入ったマンホール
3月を迎え、ハンブルクでの留学生活にもとうとう終わりがやってきました。慌ただしく帰国の準備をする一方、友人たちが送別会を開いてくれたり、お世話になった先生方に挨拶に行ったりと、寂しいながらも特別な思い出ができた一ヶ月でした。そこで今月は、私が学んだ「挨拶の仕方」を最後のテーマとしてお届けしようと思います。一見簡単そうに見えて、これがなかなか難しいのです。
たとえば、友達に家族を紹介されたときや先生を訪ねたとき、名前を言うと同時にたいてい右手を差し出されます。つまり、握手です。なんだ、それなら普通じゃないかと思われるかもしれませんが、ここで注意しなければならないのが『握手の強さ』。どうやらドイツでは、力を入れて相手の手を握るのが重要なようで、友達の説明によると、この力の強さで自らの自信や意気込みを示すのだそうです。もちろん、握手と同時にしっかりと相手の目を見ることも忘れてはいけません。私の指導教授はパンツスーツの素敵な中年の女性でしたが、柔和な印象とは裏腹に、ぐっと力を込めて握手をされる方でした。ドイツ人にとって握手は、挨拶であると同時に対話の第一歩でもあるのです。
友人同士などの親しい仲では、ハグをするのが一般的なようです。肩を抱き合って背中をぽんぽんと叩くのですが、何度か経験する中で発見したこと、それは頬をくっつけるのが重要だということです。男性同士は分かりませんが、男女、あるいは女性同士なら肩を寄せたときに軽く頬も寄せます。一口にハグと言っても当然国によって様々なやり方があるのでしょうが、寮に住む南米出身の友達もアフリカ出身の友達も、体の距離や抱擁の強さに差はあるものの、頬をくっつけるのは同じでした。ハグは出会ったときにも別れるときにも有効で、軽く手を広げるのがハグをしようという合図です。最初はとても恥ずかしかったのですが、慣れるとこの合図がすぐ分かるようになりました。いつでも会える人とはなんだか大げさな気がしますが、久々に再会したときは、口ではうまく言えないことがハグをすることですべて伝わるような気がします。また友人のご両親を訪ねたときにハグで迎えられると、歓迎されているようでとてもうれしくなります。不慣れな上に恥ずかしさもあり、ちゃんとハグをするにはまさに『訓練』が必要でしたが、見よう見まねで繰り返すうち、自然と体が動くようになりました。
さて、私の留学も今月で終わりです。困ったことやうまくいかないことも多々ありましたが、研究面ではたくさんの収穫があり、人間としても少しはたくましくなったのではないかと思います。しかし、私が得た中で最も大事なもの、それは指導教授や寮の隣人たち、そして何よりタンデム・パートナー達との出会いでしょう。多くの人に支えられ、充実した日々を過ごすことができました。ハンブルクを発つ日、感謝と再会の約束をこめてハグをしてみんなと別れました。