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教育・学生生活

2013年度交換留学レポート(ロシア サンクト・ペテルブルク大学)

文学部2回生 君家貴裕

 初めまして、現在ロシア、サンクトペテルブルグ大学に長期留学している、君家貴裕と申します。 現在は滞在6ヶ月目となり、随分こちらの生活にも慣れてきた時期です。

 この度、久々のロシア長期留学者として、レポートを書かせて頂く次第となりました。 今回は第一回目のレポートとして、ロシアの紹介と、そこでの留学生活などをお伝えしたいと思います。

 ふとロシアと聞けば、とにかく「寒い」、「酒」といったキーが頭に浮かぶでしょう。また、ネガティブですが、「暗い」というのも次に浮かんでくるでしょう。 この手の偏見、色眼鏡と揶揄されそうなイメージですが、全く正しい。 ロシアは気象条件からして過酷なところです。冬の寒さ以上に、その暗さが辛い。太陽が昇る時間は短く、そもそも殆どの日が重い雪雲や霧に覆われて、見ることはかなわないでしょう。 更に言えば、治安が日本より悪いです。被害に遭った人を見たり、自分も被害を受けたりしました。

       街の様子1.jpeg   街の様子2.jpeg
                 (冬の街の様子)

 しかし、一見そういった事と相対するような要素ですが、人々は付き合ってみると朗らかで、華やかな文化も同時に存在しています。 かの有名なエルミタージュ美術館、マリンスキー劇場を始めとする施設は勿論のこと、街の至る所で無造作に存在する銅像、モニュメントなどは、未だに驚嘆するものばかりです。

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            (エルミタージュ美術館内部の様子)

 ロシアの良い点、悪い点とこれらを選り分けるのは適切でありません。 むしろ、これら背反しそうな要素が混然一体となって存在している、それがロシアだと思います。
これらは全て、ロシアに住む人々の性質と密接に関わる、欠かせない要素だと今は思います。 彼らの気質がどう独特なのか説明せねばならない身でありながら、どうにも、ロシアらしい、としか表現できません。 いち書き手として酷いですが、文章で伝わるならそもそも留学していないと開き直ります。

 ロシアという国は単なる美しい、凄い、などでは到底表しきれない、深みを持った国です。 興味がある方は、文献やwebサイトを漁るより、実際に訪れることを強くお薦めします。この留学レポートがその前座となれば幸いです。

 では次に、私がロシアで実際にどのような留学生活を送っているのか、ということに話を移したいと思います。まずは、住んでいるところの説明を。

 私は、大学が提携している寮に住んでいます。入居者は各国からの留学生。 かなり多国籍で、今までに、フランス人、ノルウェー人、イタリア人、ドイツ人、フィンランド人、スイス人と同室になりました。 鉄筋コンクリ11階建てに4機のエレベーターを備え、多くの留学生を受け入れているこの寮。何故か大学まで1時間かかる場所に存在しています。学部によっては1時間半。 築何年かは分かりませんが、古いながら丁寧に使っていると思います。廊下などの公共スペースは用務員の方が掃除してくれるので凄く綺麗です。 ただ、人口は少し過密気味ですね。 小部屋2つと大部屋1つとキッチン、シャワー、トイレがセットで1室なのですが、小部屋に2人ずつ、大部屋に3人の計7人でこれらを共同使用します。 皆が学生ということもあって生活時間が被りそうになりますが、なんとか各々調整してやりくりしています。

 過密は厄介な問題ですが、この寮は、エレベーターに閉じ込められた、ドアが破れた、などなど面白い体験を提供してくれることもあり、結構気に入っています。 住めなくはないです。 

       寮の入り口.jpeg  キッチン.jpeg 
          (寮の入口)         (キッチン)

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                 (ベッドルーム)

 では、本題というべき日々の授業、生活に話を移したいと思います。
私はこの6ヶ月、留学生向けのロシア語養成コースに通っていました。ここは中国人が圧倒的な割合を占め、体感では7割程度と感じます。 テストによって割り振られた10人ほどのクラスで、毎日3時間半の授業があります。 授業は露語によって行われるので、少し気を抜くとすぐ迷子になります。 優しい先生は英語で追加の説明を入れてくれたりしますが、英語が上手い先生は少ないです。 そもそもロシアで英語が通じる場所は稀なので仕方ないのですが、知らない単語や文法を露語で説明されるのはかなり強烈です。 宿題は毎日出ますが、量は適当です。10分で終わる日もあれば、いくら時間をかけても全く分からず降参する日もあります。 そして、宿題とは別に毎日の小テストがあるので、平日はそれなりに勉強に時間を費やすことになります。 次の日の授業が朝からの場合は、直帰して寮で過ごすことが多いですね。

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                (クラスルーム)

 次の日の授業が昼からであったり、休日である時は何かと出かけます。
公園や教会に足を運んだり、オペラや音楽を鑑賞したり、美術館に行ったり、ご飯を食べに行ったり。その日の気分次第ですね。 複数回行っても面白い所が多いので、半年過ごした今でも退屈しません。 先日足を運んだ声楽のコンサートであれば、200ルーブル(約600円)であったように、総じて安価なのがありがたいです。ちなみにエルミタージュ美術館、学生無料です。
このような日々を送っていますが、「誰と」、という問題がありますね。 留学の常といいますか、留学生向けの寮に住み、留学生向けのコースを受講しているため、やはりその組で行動することが多いです。 お互い観光や鑑賞という目的も一致するので、なおさらですね。授業終わりに何かしらに誘われて着いて行く日も結構あります。

 しかし、その一方で皆ロシアに興味があって来た人々ですから、留学生だけ、というのも微妙に落ち着かないものです。 誰かしらがロシア人を引っ張ってきて、皆が友人になろうと猛アタックを掛ける光景もよく見られます。あまり実っていませんが。 拙く喋る外国人の群れに囲まれて嬉しいのは、かなりの物好きだと私は思います。

 そんな訳で、自分はロシア人と交流する時は、留学生は自分一人の場合が多いです。交流と大層な事を言いつつ、実際は一緒に遊んでいるだけではありますが。
以上がロシア留学生活の概要です。

 最後に、留学をするということに関して少し。
確かに留学は、家族友人から離れ、なけなしの貯金を振り絞り、あらゆる周囲に何かと迷惑を振りまくものです。 どうにも理由が必要に思えますが、実はそこまで大層な物は必要ない。 留学というのは、経験です。高尚な目的を持った人、そぞろに出掛けた人、無差別に色々な出来事が降りかかります。楽しいこと、驚くこと、悲しいこと、苦しいこと。 それらにどう向きあうか、何を思うか。能書きよりそれが重要です。

 行ってみたいという思いがあれば十分だと思います。行って、難しいことはそれから考えればいい。 目的が無いからといって尻込みすることは無いです。とりあえず行ってしまえば、案外どうにかなります。

 何の因果か現在ロシアに居る私は、そう思っています。

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               (新年のお祝いの様子)