留学レポート(イギリス シェフィールド大学 夏期)
イギリス語学研修体験
大阪市立大学言語文化学専攻 後期博士課程1年
孫 敏子
2017年8月シェフィールド大学語学研修に参加した。約1か月の短期研修で英語力を高め、語学研究に役立てると同時にイギリスの歴史、文化、社会も知りたいという目的だった。
語学センターの授業は20人ぐらいのクラスで4人で一つのグループになり、毎日席が自由に変えられ、いろんなメンバーと会話できるようになっていた。中国、日本、韓国、イタリア、トルコ、サウジアラビアなどのいろんな国からの留学生がいた。初日はクラス分けテストを受けた。成績によってクラスを分けられ、英語のレベルが近い学生たちは同じクラスにされたため不安はなくなった。授業は会話重視で、一つの課題をめぐって自分の意見や感想を述べる形だった。例えば「乗り物」についてどんなものがあるかみんなが先生に言葉を提示した。「車」、「トラック」、「自転車」、「バス」、「バイク」、「船」など・・・「馬」、「ロバ」、「象」まで挙げる学生もいた。また「人物の説明」についてお互いに自分の家族の写真を見せながら、親や兄弟姉妹の髪の長さ、目の色、体形、服装などの外貌特徴や性格を紹介した。単語や文法をとても楽しく覚えた。研修期間中個人懇談が2回あった。クラスのレベルは自分にあうかどうか、なにか困ることがあるか、先生から一対一で私たちの勉強の様子を確認してくれた。
生活の面はホームステイで毎日イギリスの家庭生活を体験してとても楽しかった。私のホストファミリーはJoannaさん1人の家庭だった。Joannaさんは料理がかなり上手で、代表的なイギリス家庭料理をいろいろ作ってくれた。毎日イギリスティーも用意してくれたて幸せだった。夕食のデザートはいつも私の大好物のフルーツ入りヨーグルトで、イチゴ、ブルーベリー、キューイ、バナナ、洋ナシなど新鮮なフルーツを入れてくれてとても美味しかった。使ったお皿やティーカップはとてもきれいなものだった。そして私からのプレゼントの和柄の漆のお椀、お箸は非常に気に入って喜んでくれた。Joannaさんが料理を作った時私はよくそばで学んだ。そして使った食材の名前も教えてもらった。夕食後はよく二人でDVDでイギリス映画を見た。「プライドと偏見」、「エマ」、「ロード・オブ・ザ・リング」などすでにあらすじが分かった名作で英語がわからなくても映画を楽しむことができた。そして英語を聞くこともだんだん慣れるようになった。
一週目の土曜日、一人でリンカーンという歴史の古い町へ行った。列車のチケットはJoannaさんが予約してくれた。列車に乗ったら赤い屋根の洋風の建物、緑の平野、かわいい羊、牛、馬・・・日本で見たことはない風景が目の前に広がっていてとても興奮していた。写真を撮りながら1時間ぐらい経った。もう着くかなと思って車両の中を見たら誰もいなかった。みんな降りた!どういうことだ?私はとても不安になっていた。すこし経ったらまた荷物をもっていた新しい乗客が乗ってきた。私はつたない英語で車掌さんのような男の人に「私はリンカーンに行きたい」と伝えた。そしてその人はびっくりして英語をいっぱいしゃべってきた。乗り間違ったと私がなんとなく分かった。彼は元の駅に戻って乗りなおすべきだと説明してくれた。そして私がわからないことを心配して「Stop、Stop、Stop、Stop」と言いながら 4回ジャンプした。四つ目の駅で降りるという意味だと私が理解した。ところが少し時間が経ってからあの車掌さんは再び来た。今度は中国人のような若者を連れてきた。若者は中国語で「シェフィールド駅に戻って乗り換えてください」と教えてくれた。車掌さんが別の車両から中国語をわかる人を探してくれたのだった。とても面白い体験だった。イギリスの方は本当に親切で真面目でそしてユーモアがあることに感動した。
ある日Joannaさんと一緒に車で買い物に出かけた。ある信号の前、後ろから白いワゴン車が走ってきて急ブレーキで隣の車線に止まった。運転していた人は車窓をあけて「スピードが遅すぎる!」のような汚い言葉をなげてきた。民族衣装を着ていた中東人のような人だった。Joannaさんは顔が赤くなって非常に怒って中指を出して言い返した。二人がすぐケンカしそうになった。もしあの人は車を降りて殴ってきたらどうしようと私がとても心配していた。幸い青信号になって、その車が猛スピードで前へ走っていった。Joannaさんはまだ怒りがおさまらず、「近年来外国人が多く移住してきて、教育も足りないし、事件もよく起こす。イギリスの平和や生活を破壊している!」と言った。確かにイギリスのバスやスーパー、公園、町などで黒い衣装をまとっていた女性や頭巾をかぶっていた男性などのような外国人がよく見えた。資料によるとイギリスには2006~2014年の9年間に160万人のEU市民が入国しており、計算上は1日に500人が流入している。EU市民に限らず、現在イギリス国内の移民の割合は全人口の13%を占めるので、道行く10人のうち1人はイギリス出身者ではないことになる。去年イギリスでは労働人口が45万人増加したが、そのうちEU移民は75%を占めており、就職に成功した4人のうち3人はEU移民である。「EU移民がイギリス人の雇用を奪っている。EUから離脱すれば状況は改善する」と考えた人が国民の過半数を占めたそうである。これがEUから離脱した原因だろう。
最終の三日間はロンドンで過ごした。ロンドン名物のダブルデッカーバスに乗って市内観光をした。好きな場所で乗り降り自由なので名所巡りとしては効率がよかった。バス内では中国語、日本語、スペイン語など12ヶ国語のオーディオガイドがついて非常に便利だった。テレビでしか見たことがないビッグ・ベン、バッキンガム宮殿、タワーブリッジは目の前にあってとても迫力があり感動した。そして憧れた世界最大の博物館の大英博物館も見学した。古今東西の美術品や書籍など800万点が収蔵されている。一番人気なのは「エジプトのミイラ」だった。またロゼッタ・ストーン(Rosetta Stone)、アッシリアのライオン狩り(Lion Hunt reliefs)、パルテノン彫刻(Parthenon sculptures)など見逃せない展示物が多かった。日本刀や中国の陶磁器もとても精緻だった。人類の歴史を勉強するいい機会になった。
一か月の研修はあっという間に終わった。英語力向上はもちろん、異国の人々とふれあい、歴史や社会も勉強ができて視野が広がった。本当に貴重な体験だった。このような機会があればまた行きたいと思う。