留学レポート(アイルランド ダブリン大学トリニティカレッジ JSAF認定留学)
留学レポート
2017年8月末から2017年12月中旬までの4か月間アイルランドのダブリン大学トリニティカレッジへ留学した。留学が決まっている学生や留学を検討している学生にとって役に立つものでれば幸いである。特に来年度からアイルランドの大学への留学生の派遣も始まるので、アイルランドへ留学する予定の学生は参考にしていただければと思う。
今回の留学は、大学と提携しているJSAFという団体を通じての認定留学という形で、現地で習得した単位市大の単位として認定できるというものである。大学の正規の交換留学プログラムとは異なるため費用はかなりかかるが、現地でのカリキュラムにある程度自由が利く。英語の試験やエージェントとの相談など留学に必要な準備は出発の1年前程度から始めた。
1. 生活の様子
アイルランド自体が日本人にとってなじみのない場所であると思うので簡単に、現地での生活や街の様子について紹介する。アイルランドではゲール語と英語が公用語とされているが、街中でゲール語を聞くことはほとんどなく標識に英語と一緒に記されている程度である。他のヨーロッパと同じように夏は日が長く夜9時頃まで明るい一方で、冬は夕方4時に暗くなり朝8時まで日が昇らない。イギリスとのつながりが文化的にも経済的にも強いためイギリスと似ている部分がとても多い。車は左側通行であるし、イギリス資本のお店がたくさんある。
アイルランドの英語は他のヨーロッパと同じでイギリス式スペルを使う。アイリッシュアクセントの強い人は早口でこもったような喋り方をするため慣れるまでかなり聞きにくい(busをブスと発音したりする)。アメリカアクセントの人もある程度いる。
街の様子についてだが、ダブリンはとてもコンパクトな街。ダブリンの街中ではトラムや電車が走っており、バスの路線も充実している。他のヨーロッパの主要都市と同じように移民も多い。日本人を見かけることはほとんどなかったが、中華系のスーパーなどでは日本の調味料などや白米が手に入るし、日本食レストランも中心地の数件ある。
物価はダブリンでは高めであった。同じ系列のスーパーであってもロンドンやその他イギリス都市での価格と比べると為替レートを考慮しても10%ほど高め。味や質を無視して激安スーパーで買い物をして自炊すれば月の食費は200ユーロほどで済むかもしれない。ある程度の質を求めると自炊での食費は300から400ユーロほどになる。月の出費は平均すると700ユーロほどであったと思う。ヨーロッパは物価が高いといわれており、たしかに外食は日本よりも高かったが、自炊すると日本で自炊するより安く済む。特に肉が日本より少し安く、また肉だけでなく他の食品でも1パックに入っている量が多いため2から3食分は使える。
2. 大学の様子
トリニティカレッジでは留学生が多く在籍している。アイルランドがEU加盟国ということもありヨーロッパからの留学生も多いが、英語圏ということもあってかアメリカ人留学生も非常に多かった。アメリカの大学では講義中でも学生から意見がでたり、毎回の講義で大量のリーディング課題が出たりするそうだが、トリニティカレッジではそうしたことはあまりなかった。日本と同じように講義中に学生の発言はあまり見られない。課題に関しても、リーディングリストは与えられるが、それを読むかどうかは自主性に任せられていた。
また、イギリス式の大学教育システムが採用されているため、講義とは別にチュートリアルという少人数授業が科目ごとに設定されている。ただ、自分が受けた講義のチュートリアルは、チューターや教員とあるテーマに沿って議論するものというよりは、講義の補完的な内容を30人くらいが講義スタイルで受けるというものであった。成績のつけ方もイギリス式に準じており、トータルのスコアが40%を超えるとその科目の単位が出る。
評価方法はもちろん講義によってばらつきはあるものの、どの科目でも各タームで最低1本は2000から3000 words程度のエッセイ(レポート)が課される。自分の場合は一学期間だけの滞在であったが、滞在中に書いたレポートの数と市大で4年間に書いたエッセイの数がほぼ同じであった。試験に関しても論述式の試験は一度しか受けていないが、それも制限時間内に解答で大量の記述をもとめるものであった。
日本の大学のように丁寧に板書があることはまずなく、スライドに沿って教員が授業を進めていくスタイルのため、ノートテイクは非常に疲れるし、最初のうちはどのようにノートをとればいいかわからなかった。英語であるということに加え、中にはアクセントの強い英語で早口で話す人もいたりするため講義を受けるだけでも相当体力を使う。
3. おわりに
今回の留学に行ったこと自体は後悔していないが、内容や結果に関しては自身の中で納得のいくものでなかった。ただ、留学に行かなければこうしたことにも気づくことがなかったし、あまり積極的に行動していなかったとはいえここでしかできないことをたくさん経験することができた。実際に海外の学生と交わり彼らの価値観に触れることで、学問に対する考え方が変わりマスターなどの上級学位について意識するようになった。たとえ結果が満足いくものではなくてもこうしたものが得られるからこそ留学は意味があるのかもしれない。今後留学に行く人たちにはもちろん満足のいく留学をしてほしいと思うが、帰国したときに納得がいかなくても留学先での経験はそこでしか得られないものであるということを頭の片隅に残していただければいいと思う。