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地域自律型ワイヤレス見守りシステムを開発

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
151019-5.JPG <(夕)は夕刊 ※はWeb版>

◆10/19 NHK「ニュースほっと関西」、
     共同通信
◆10/20 毎日新聞、産経新聞、
     日刊工業新聞
◆10/21 ケアマネジメントオンライン
◆10/25 JCASTヘルスケア
     The Mainichi

その他、地方紙等多数掲載 

概要

 工学研究科電子情報系の辻岡哲夫(つじおか てつお)准教授は、ヴァイタル・インフォメーション株式会社とともに、認知症高齢者の徘徊対策を支援するための地域自律型ワイヤレス見守りシステムを開発しました。
 近年、高齢化社会が進むにつれ、認知症の問題が顕著化してきています。介護施設や介護者数も限られており、ICT(情報通信技術)を活用した見守り支援システムの開発が急務となっています。これまでの報告によると、徘徊者は自宅から半径1km圏内で発見されることが多く、このような状況に適合した新しいシステムの開発が求められていました。また、行方不明の届出が遅れると死亡割合が高まるとの報告もあり、独居高齢者も今後増加傾向にあります。そのため、徘徊の早期検知と早期発見が重要であり、これに加えて、地域内での見守り体制も重要と考えられます。
 今回開発したこのシステムは、数km四方程度の地域を見守ることに特化し、特定小電力無線を活用することでランニングコストの削減を図っています。高齢者にビーコン送信機を携帯してもらい、地域内の各所に設置する無線基地局でその信号を受信することで、地域内での位置や歩数・活動量などの情報をサーバーに集めることができます。見守り者(親族、地域コールセンタースタッフなど)は、その情報をWebブラウザを使ってリアルタイムに知ることができます。無線基地局は主に利用者宅などに設置して通信ネットワークを構成し、920MHz帯の特定小電力無線を用いることで低コストに実現できます。ビーコン送信機は小型・軽量・長時間動作可能で、カバンや衣服に縫い付けたりして使用できます。
 このシステムにより、徘徊者の捜索を支援することが可能となります。また、健常者であっても歩数や活動量、行動履歴などを健康管理支援に役立てることができるため、介護予防の可能性についても期待されます。

研究の背景

 高齢化社会による認知症高齢者の増加が問題となっています。これまで、携帯電話網を使った通信システムや、スマートフォンのアプリを使ったICT見守りシステムが検討されてきました。これらのシステムは受信基地局情報やGPSなどを使って高精度に位置を特定することができますが、以下のような問題がありました。

  • 地域内で共有した見守り情報がなく、家族などによる見守りだけでは体力面、精神面の負担が大きい
  • 携帯電話網を使った見守りはランニングコストが高い
  • GPSは屋内では使えない
  • 携帯電話やスマートフォンは電池駆動時間が短い
  • 高機能で大きく重たい装置は、高齢者に携帯してもらいにくい

研究の内容

 前述のような課題を解決するために、特定小電力無線を使った小型・軽量・長時間動作可能なICT見守りシステムを開発しました。システムは、ビーコン送信機・基地局・サーバー装置によって構成されています。見守る側も高齢化が進んでいることから、操作性、携帯性にも配慮しました。

  1. ビーコン送信機
    ◆定期的にビーコン信号(短い無線パケット)を送信し、自身の位置を周りの基地局に知らせる。
    ◆加速度センサ、気圧・気温センサ、地磁気センサを備え、歩数や活動量を計測する。
  2. 基地局
    ◆中継網を構成し、受信したビーコン信号の受信電力をサーバー装置に伝える。
  3. サーバー装置
    ◆基地局から転送・通知されたビーコン信号の受信電力、時刻などから、ビーコン送信機の位置(高齢者の位置)を推定しデータベースに記録する。
    ◆見守り者(親族や地域コールセンタースタッフなど)に対してWeb画面表示機能を提供し、送信機を携帯する高齢者の推定位置、歩数や活動量などの情報が閲覧できる。
    ◆徘徊状態や転倒などの緊急対応を要するイベントを検出した場合は、電子メールで見守り者に通知する。

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図1 ビーコン送信機
(大きさ:61×43.4×10.8mm、重さ:22g)  

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図2 無線基地局
(大きさ:123×87.5×25.7mm)










システムを使って以下の3つの機能を提供し、高齢者の見守りを実現します。

  1. 徘徊状態の検出
    自宅や介護施設から離れたことや、地域からの離脱(検知圏外)をリアルタイムに検出可能。
  2. 徘徊者の早期発見
    サーバー装置のデータベースには、送信機携帯者が「いつ」「どこに」居たのかが記録されるため、その情報により徘徊者の早期発見を支援することが可能。
  3. 健康管理
    歩数や活動量を1分単位で測定し、記録・管理が可能に。これらの詳細なデータを使うことで、より正確な健康管理が行えるようになり、介護予防にもつながる可能性がある。

地域自律型ワイヤレス見守りシステムの利用イメージ

 具体的な地域自律型ワイヤレス見守りシステムの利用イメージは図3のとおりです。
 地域内に設置する無線基地局で見守りネットワークを構成し、送信機を携帯する高齢者からのビーコン信号を受信し、それをサーバーに報告します。サーバーでは、集まった情報から高齢者の位置を推定したり、歩数や活動量を計算したりして、その結果をデータベースに記録します。図4に示すように、見守り者はサーバーにWebアクセスすることで情報を閲覧できます。Web画面では、位置、活動情報を加工して、高齢者にも配慮した大きいサイズの文字やアイコンなどで見やすく表示します。緊急情報(検知圏外、転倒など)はメールで関係者へ一斉配信します。
 徘徊時の位置検知と併せて、健常者であっても歩数や活動量及び行動履歴などの健康管理支援に役立つ情報を提供します。

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図3 地域自律型ワイヤレス見守りシステムの利用イメージ

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図4 見守り者に提供するWeb画面の例

今後の展開

 今後、大阪府内の地域において実証実験を行う予定です。機器の扱いやすさや性能はもちろんのこと、使用側のニーズに応じた改良を加えていくとともに、健常者の健康管理支援といったさまざま分野での応用も視野に入れながら研究開発を進めます。


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