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熱中症の予知・警告を可能に! 大阪市消防局協力のもと ウェアラブルコンピュータによる 衣服内温度の測定から深部体温の予測を実証

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この研究発表は下記メディアで紹介されました。<(夕)は夕刊>

◆9/2 産経新聞(夕)
◆9/4 化学工業日報

研究概要

 大阪市立大学 大学院工学研究科 髙橋 秀也(たかはし ひでや)教授、都市健康・スポーツ研究センター 岡崎 和伸(おかざき かずのぶ)准教授の研究チームは、大阪市消防局の協力のもと、消防服内にウェアラブルコンピュータを装着し活動中の消防隊員の衣服内温度を測定することで、深部体温を予測する実証実験を行いました。その結果、衣服内温度により深部体温を予測できることを確認しました。衣服内温度を監視することにより、熱中症の予知や警告が可能になります。
この実験は本学が今年6月に大阪市消防局と締結した「消防隊員のヘルスケア等の研究開発に係る連携に関する申合せ」に基づき実施されたものです。大阪市消防局は、市民の安全を守る消防隊員の活動において、隊員の健康状態を良好に保つことは消防活動のさらなる強化のためにも極めて重要であると考えています。今年度は特に熱中症予知・警告に重点をおき、実証実験を進めてきました。

研究の背景

 消防服は耐熱性に優れる反面、発汗や皮膚温度の上昇による熱放散を抑制し熱中症を誘発しがちなため、消防服着用時の熱中症対策が必要です。熱中症は、深部体温が約39.5℃以上になると脳機能障害を引き起こす可能性が出てくるなど重症化するため、熱中症リスク判断には深部体温の上昇を察知することが有効ですが、消防活動中の隊員の深部体温を測定することは困難です。
 髙橋教授のグループは志水 英二(しみず えいじ)大阪市立大学名誉教授とともに、2001年よりウェアラブルコンピュータを用いる新たな消防服の開発を模索してきましたが、今回ウェアラブルコンピュータにより衣服内温度を測定できることに着目しました。170828-21.jpg既に信州大学医学研究科 能勢 博(のせ ひろし)教授らが、消防服を着用した一般人を対象に衣服内温度により深部体温が予測できるアルゴリズムを明らかにしていますが、岡崎准教授のグループはこのアルゴリズムが火災現場を模した条件下において衣服内温度の変化から深部体温を推定するのに有効かどうかを検証するべく、大阪市消防局の消防隊員協力のもと実証実験を行うことにしました。
 消防服内に埋め込む名刺ケースサイズのコンピュータには、消防隊員の消火活動時の衣服内温度の変化や活動量、隊員の位置情報等を取得できる機能を持たせています。

研究の内容

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写真1

  まず、今年の6月に事前調査として大阪市消防局 実火災体験型訓練(ホットトレーニング)に参加し、熱中症予知の実証に向けての情報収集と準備活動を実施しました。その際、20代~50代までの隊員の消防服内温度を測定し、訓練中における熱ストレスが高い域に達する状態が発生することを確認しました。(写真1)

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写真2

 続いて、今年の8月に大阪市立大学 都市健康・スポーツ研究センターの人工気候室内で20代~50代までの隊員に消防服着用の上、トレッドミル(*)上での歩行をしてもらい、深部体温(食道温)、皮膚温、衣服内温度、身体活動量などを測定しました。(写真2)その結果、深部体温の実測値と、衣服内温度より深部体温を予測するアルゴリズムを用いて求めた値が、極めて近いことが確認できました。
*トレッドミル・・・屋内でランニングやウォーキングができるマシン

期待される効果

170828-24.jpg 今回の実験により、衣服内温度から深部体温を予測することが可能であることが実証されました。消防服にウェアラブルコンピュータ機能を持たせることで、現場指揮者らは、消防活動を行う隊員の身体変化を把握して的確な部隊運用の指示が出せるようになるなど、消防隊員の安全性の向上が期待されます。

今後の展開

 今後は大阪市消防局の協力のもと、実際の消防隊員の消防活動時の動きを再現し実証実験を重ね、消防隊員用にパラメータやアルゴリズムの修正を検討していきます。