世界初! 光をあてるとさまざまな形に変形する結晶を発見‼
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この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆2/22 化学工業日報
本研究のポイント
・これまで知られている光照射による結晶変形のほとんどは屈曲だった
・光をあてる方向を変えるだけで、可逆的かつさまざまな形状に変形する
・発見した結晶は毛細血管内でも動き回ることができるほどの微小な大きさである
概要
大阪市立大学大学院工学研究科の北川 大地(きたがわ だいち)助教、小畠 誠也(こばたけ せいや)教授らのグループは、カリフォルニア大学リバーサイド校Christopher J. Bardeen教授グループとの国際共同研究において、光照射方向を変えるだけで、可逆的かつさまざまな形状に変形する微小な有機結晶を世界で初めて発見しました。 今回発見された結晶は、「ジアリールエテン」と呼ばれるフォトクロミック※化合物で構成されており、光によって分子構造が変化することで結晶内にゆがみが生じ、その結果、結晶形状が変化します。光照射方向を変えることで、同一の結晶からねじれ、らせん、屈曲などのさまざまな形状変化が確認できました。 本研究成果は、2018年2月16日に国際学術誌『Journal of the American Chemical Society』のオンライン版に掲載されました。
掲載誌情報
【雑誌名】Journal of the American Chemical Society(IF=13.858)
【論文名】Control of photomechanical crystal twisting by illumination direction 【著 者】Daichi Kitagawa,1 Hajime Tsujioka,1 Fei Tong,2 Xinning Dong,2 Christopher J. Bardeen,2 and Seiya Kobatake1 (大阪市立大学1・カリフォルニア大学リバーサイド校2)
【掲載URL】https://pubs.acs.org/doi/10.1021/jacs.7b13605
研究の背景
光を外部刺激として駆動するフォトメカニカル材料は、電気配線や回路を必要とせず、非接触で遠隔でも操作が可能なため、次世代材料として注目されています。フォトメカニカル材料としては、フォトクロミック化合物から構成される液晶性ポリマーやゲルがありますが、本研究グループでは、より硬く、強度のある“結晶”に注目しています。 本研究グループが2007 年、「Nature」にジアリールエテン結晶の光照射による可逆的な結晶形状変形および屈曲を報告して以降、世界各国でさまざまなフォトクロミック化合物の結晶のフォトメカニカル効果が研究されてきました。しかしながら、それらの挙動のほとんどが屈曲であり、より複雑な動きを示すフォトメカニカル結晶の探索が求められていました。また、複雑な動きを示すものであってもその動きが不可逆である、あるいは結晶形状変形の種類が一つに限られているという点が課題となっていました。
参考
2013年7月23日プレスリリース「光可逆にらせんを形成する結晶を世界で初めて発見!」
研究内容および成果
フォトメカニカル材料に関する研究は数多く行われていますが、本研究では、代表的なフォトクロミック化合物であるジアリールエテン結晶のフォトメカニカル効果について、光照射方向を変化させるという新たなアプローチからフォトメカニカル挙動の制御を試みました。 その結果、ジアリールエテンからなるリボン状結晶に紫外光を照射すると、Helicoidタイプのねじれ、角度をつけて光照射するとCylindrical helixタイプのねじれ(らせん)、真下方向から光照射すると、少しねじれを伴ったBending(屈曲)が起こることがわかりました。このように同一の結晶に照射する光の方向を変えることで、フォトメカニカル挙動のモードを制御することに成功しました。
今後の展望
本研究は、フォトメカニカル結晶の新たな可能性を見いだしたものであり、光照射条件を変えることによって、さらに複雑なフォトメカニカル効果を示す材料の開発が可能になると考えられます。今回発見されたのは髪の毛の1/10程度の大きさの微小な結晶のため、非常に小さな光駆動装置としての応用が期待できます。また、毛細血管の中も動き回ることができる大きさであることを生かし、小型医療機器や体内ロボットなど、応用の可能性は多岐にわたります。 今後は本研究で得られた知見をもとに、個々の微小な有機結晶を集積化させることで、より大きなフォトメカニカル効果を示す材料の開発を目指します。
資金情報について
本研究の一部は、JSPS科研費 JP26107013、JP15K21725 の助成(新学術領域研究「高次複合光応答」)およびJSPS科研費 JP16K17896(若手研究(B))の助成を受けたものです。