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【レポート】平成29年度ダイバーシティ研究環境実現 キックオフシンポジウムを開催しました(2018年2月20日)

 平成30年2月20日(火)、平成29年度ダイバーシティ研究環境実現 キックオフシンポジウム「南近畿からの発信:女性研究者の地平を拓く、未来を創る」をグランキューブ大阪にて開催いたしました。

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 グランキューブ大阪(大阪国際会議場) 会場での開会の様子

 大阪市立大学(代表機関)、大阪教育大学和歌山大学積水ハウス株式会社は、平成29年度 文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ(牽引型)」に採択されました。本事業は、研究環境のダイバーシティを高め、優れた研究成果の創出につなげるため、ライフイベントやワーク・ライフ・バランスに配慮した研究環境の整備や女性研究者の研究力向上を行い、上位職登用や国際的リーダー育成を目指します。本シンポジウムでは、海外の大学における先進的な事例についての講演、女性の研究代表者による共同研究報告、そして女性の上位職者によるパネルディスカッションが行われました。

  初めに連携機関の各学長より開会挨拶がなされました。各大学・企業の男女共同参画への取り組みが紹介され、今後連携機関同士で協力し合い、ますます女性研究者の活躍促進に取り組んでいく決意を表明されました。

 

第1部 講演


エイミー・ウェント氏

  エイミー・ウェント氏

 第1部では、エイミー・ウェント氏(ウィスコンシン大学マディソン校 女性科学・技術リーダーシップ機構(WISELI)ディレクター、電気・コンピューター工学科 教授)より、「ウィスコンシン大学マディソン校の研究者のジェンダー平等の取り組み」についてご講演いただきました。エイミー・ウェント氏は女性科学・技術リーダーシップ機構(WISELI)ディレクターとして、大学におけるジェンダー平等に関する職場環境調査や、問題の解決策の実践や成果の評価を行っておられます。エイミー・ウェント氏は、女性研究者の成功のために重要なポイントとして以下の2点を挙げました。ひとつめは、男性と女性は共に有能であり、女性を含んだすべてのメンバーが機能し、成功できる組織・環境が重要であるということです。ふたつめは、無意識のバイアスが存在していることを個人としてまた組織として認識し、その影響を取り除くことです。無意識のバイアスの影響を避けるために、すべての段階で客観性を確保するために人事委員会の構成員を多様な人にし、評価基準を事前にしっかりと決めることが重要だとお話しされました。そして人事考課の際には結論を急がないこと、評価基準の公平性を十分検討することが求められますが、その一方、女性自身も無意識のバイアスにとらわれて、自己を過小評価しがちであるので、自分自身を教育し、バイアスの影響を取り除く努力が必要であると述べられました。

 

 

第2部 研究報告


西岡さん

  西岡英子氏

 第2部では、まず始めに、西岡 英子氏(大阪市立大学 女性研究者支援室プログラムディレクター、特任准教授)より、「南近畿発:産学官連携によるダイバーシティ推進の取り組み」について報告がありました。

続いて、本学と各連携機関に所属する女性研究者より、下記の各テーマについての研究報告が行われました。
 ・小島 明子氏(大阪市立大学 生活科学研究科 准教授)
      「食品の機能性に関する食育教材の構築~栄養学関連分野の横断的連携~」
 ・沼田 里衣氏(大阪市立大学 都市研究プラザ テニュアトラック特任准教授)
      「動いている音楽:障害者の社会参加に向けた即興音楽活動に関する研究」    
 ・河崎 由美子氏(積水ハウス株式会社 総合住宅研究所 課長)
      「大阪市大と積水ハウスの共同研究~これからの日本を支える多世帯居住に関する研究開発」

小島 明子氏

  小島明子氏

沼田里衣氏

   沼田里衣氏

河崎由美子氏

  河崎由美子氏

 

 

 

 

 

 

■第3部 パネルディスカッション


 第3部のパネルディスカッションでは「女性リーダー育成と上位職登用の仕組みづくり」というテーマで、第1部で講演されたエイミー・ウェント氏と、各連携大学・機関の副学長・部長をパネリストに迎え、ファシリテータの折原 真子氏(大阪市立大学 大学運営本部事務部長)のもと、意見交換が行われました。

パネルディスカッション2

       パネルディスカッションの様子

 池上 知子氏(大阪市立大学 副学長)は、今回のシンポジウムのキーワードである「無意識のバイアス」について心理学的な見地からさらに詳しく説明されました。無意識のバイアスは幼いころから刷り込まれるものなので、アプローチするなら早い方が良いと強調されました。また、女性の管理職を増やす方策として、ご自身が副研究科長として研究科長の仕事をそばで見る機会を与えられたことが研究科長としての仕事に役に立ったという経験から、マネジメント能力を付けるチャンスを女性に与えることの重要性を挙げられました。
 岡本 幾子氏(大阪教育大学 理事・副学長)は、現在女性研究者の管理職が少ない要因として、管理職に適した時期を迎えている女性研究者の絶対数が少ない点に加え、彼女らが若手の時に大学のマネジメントに関わるチャンスが少なかった点を挙げられました。現在ご自身は積極的に若手の研究者にも大学のマネジメントに関わってもらう機会を作るよう心がけていると述べられました。
 呉  海元氏(和歌山大学 理事・副学長)は、中国では幼少期から男女平等に仕事も子育ても実践するということを教え込まれ、それが当たり前であるという教育を受けてきたということを紹介され、女性研究者の活躍促進のためにはトップダウンの改革と合わせて、幼児期など早い段階から無意識のバイアスの形成を防ぐアプローチが必要であると述べられました。
 小谷 美樹氏(積水ハウス株式会社 経営企画部 ダイバーシティ推進室部長)は、女性の管理職を増やす企業の取り組みとして、管理職候補者研修を紹介されました。ただ女性管理職の数を増やすのではなく、職位に見合った能力を付けた女性管理職を増やすことが重要であるとし、経営視点を身に付け、周囲を巻き込み、組織を変える力を持った女性を研修によって育て、そうして生まれた女性リーダーが後進を育成するという好循環を生み出していくと述べられました。

 エイミー・ウェント氏は、理系に進学する女子学生を増やすのに有効な方策として中学生へのアプローチの重要性について言及されました。中学生は進路を決定する重要な時期であり、このタイミングで理系に進学する道を具体的に示し、エンカレッジすることが有効であると述べられました。

宮野先生

  宮野道雄氏

 

 最後に、本学学長補佐の宮野 道雄氏(大阪市立大学 女性研究者支援室長)による閉会の挨拶がなされ、シンポジウムは盛会にて終了しました。