二酸化炭素を削減しながら太陽光で発電するバイオ燃料電池の開発に成功
プレスリリースはこちら
概要
大阪市立大学人工光合成研究センターの天尾 豊 教授のグループは、濃緑色単細胞微細藻類の一種であるスピルリナの水中における効率的な酸素発生型光合成機能に着目し、スピルリナ由来の光合成膜を固定した電極とギ酸脱水素酵素を固定した電極とを連結し、可視光照射により、発電しながら同時に二酸化炭素を削減しギ酸を生成する機能を持つバイオ燃料電池の開発に成功しました。本研究成果は、2018年4月25日に化学誌『New Journal of Chemistry』にオンライン掲載されました。
掲載誌情報
【掲載日】2018年4月25日(日本時間)
【発表雑誌】New Journal of Chemistry (Royal Society of Chemistry)
【論文名】Visible-light driven electrochemical biofuel cell with the function of CO2 conversion to formic acid coupled thylakoid from microalgae and biocatalyst immobilized electrodes
【著者】Yutaka Amao, Miyuki Fujimura, Makiko Miyazaki, Akemi Tadokoro, Miki Nakamura, Naho Shuto
【URL】http://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2018/nj/c8nj01118d#!divAbstract
研究概要-太陽光で作動する多機能性バイオ燃料電池の基盤技術確立を目指して
本研究では、濃緑色単細胞微細藻類スピルリナの酸素発生型光合成機能による太陽光エネルギーを利用し、水を原料にして二酸化炭素を削減しながら発電し、同時にギ酸の生成を可能とする、藻類機能をデバイス化した斬新かつ革新的なバイオエネルギー創成多機能型太陽電池の構築に成功しました。
図1に示す、二酸化炭素を含む溶液中で光合成膜固定電極とギ酸脱水素酵素固定電極とを連結した装置において、可視光を光合成膜固定電極に照射すると回路に一定の電流が流れ(55 μAを計測)、一方、ギ酸脱水素酵素固定電極上では二酸化炭素が還元されてギ酸が生成することを見出しました。可視光を3時間照射した例では(図2)、電流は一定値で流れ、ギ酸生成と酸素発生が同時に観測され(図2-1)、さらに二酸化炭素由来の炭酸水素イオンは同時に減少することがわかりました(図2-2)。
今後の展開
本研究は、これまで地中への貯留による削減が試みられてきた二酸化炭素を、水とともに原料として利用するもので、光エネルギーを駆動源として、スピルリナの光合成機能を最大限利用し、発電だけでなく同時にギ酸を生成することが可能であることを示しました。太陽光エネルギーにより二酸化炭素を有機分子へ分子変換できる新たなバイオエネルギー創製技術であり、地球温暖化物質の一つである二酸化炭素が有用な原料に位置付けられる画期的な成果です。ギ酸は水素エネルギーの貯蔵媒体だけでなく、有機薬品の合成材料や、無機、有機化合物用溶剤にも利用できる物質です。
今後は石油・石炭などの化石エネルギーに頼ることなく、二酸化炭素を「排出ではなく利用し削減」しながらエネルギーを創出する究極のバイオエネルギー創製機能を持つ太陽電池への展開が期待でき、低炭素社会実現のための重要なツールになることが期待されます。
補記
本研究成果は、科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業さきがけ「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出(藻類バイオエネルギー)平成23年4月~平成28年3月」により得られたものです。
また、本研究成果は、“Artificial Photosynthesis: Photoelectrochemical Biofuel Cell with the Carbon Dioxide Conversion Function -Combination System of Thylakoid Membrane from Microalgae Spirulina Platensis and Biocatalyst Immobilized Electrodes-“と題したOutstanding achievement and contribution to ISAMR2015 Invited Presentationを受賞(2015年8月)、及び7th Asia-Pacific Congress on Catalysis (APCAT7)において”Photoelectrochemical Fuel Cell with the Function of CO2 Conversion to Formic Acid Coupled Thylakoid Membrane from Micro Algae and Biocatalyst Immobilized Electrodes” と題した講演に対してBest Oral Presentation Awardを受賞しています(2017年1月)。