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C型慢性肝炎 飲み薬(DAA)治療後の肝組織の改善を顕微鏡レベルで確認

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 大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学の榎本 大(えのもと まさる)准教授らのグループは、C型慢性肝炎に対する経口DAA(直接作動型抗ウイルス薬)治療後の肝組織の改善を顕微鏡レベルで確認し、その結果について世界で初めて報告しました。

概要

 C型慢性肝炎に対するDAA治療後の肝病理組織所見の検討は、これまで十分になされていませんでした。本研究ではDAA治療によってウイルス排除に成功し、かつ血液検査で異常が見られなかった51症例に対し肝生検を行い、炎症、線維化、鉄沈着、脂肪化などの項目について調べました。その結果、ほとんどの症例で肝組織の改善が見られました。また、同時に約2割程度の症例に有意な炎症が残存していることがわかりました。
 DAAによってC型肝炎ウイルスを排除することにより、血液検査のみならず肝生検結果の改善も見られたことから、治療によって将来的には肝硬変や肝臓がんへの進展が予防できることが期待されます。一方、炎症が残存していた症例の少なくとも一部は脂肪肝炎が原因であったことから、治療後もアルコール多飲や肥満などを避けて生活習慣に注意する必要があると考えられます。

研究の背景

 C型肝炎ウイルスは感染者が日本で約150万人とされており、我が国の肝硬変・肝臓がんの原因の約65%を占めています。また、C型肝炎ウイルスの肝外病変として、血液疾患、腎疾患、皮膚疾患などを引き起こす可能性があることも知られています。C型肝炎の治療には長年、インターフェロンが用いられてきましたが、副作用が多いため高齢者への治療が困難で、ウイルスの排除率も限定的でした。これに対し、2014年からはインターフェロンを使わず、DAA(直接作用型抗ウイルス剤)と呼ばれる飲み薬による治療で、ほとんど副作用なく100%近くの患者がウイルスを排除できるようになりました。
 インターフェロン治療でC型肝炎ウイルスが肝細胞から完全排除された場合、血液検査の結果が改善するだけでなく、肝生検組織で顕微鏡レベルの炎症や線維化が改善され、長期的には肝硬変や肝臓がんへの進展率も抑制され、肝外病変も改善することが示されてきました。一方、DAA治療で血液検査の結果が改善するのは確かですが、肝生検組織所見が改善するか、長期的に病気の進展が抑制されるか、肝外病変が改善するかは不明でした。研究グループでは既にDAA治療後の肝生検組織からC型肝炎ウイルスが完全に排除されていることを遺伝子レベルで証明し※1、肝外病変のひとつである乾癬の皮膚病変が改善しうることを示してきました※2。今回はDAA治療後の肝生検組織で肝内の炎症や線維化が改善しているかに注目して研究を行いました。

※1. Enomoto M, Murakami Y, Kawada N. Detection of HCV RNA in Sustained Virologic Response to Direct-Acting Antiviral Agents: Occult or Science Fiction? Gastroenterology. (IF 20.773) 2017 Jul;153(1):327-328.
※2. Enomoto M, Tateishi C, Tsuruta D, Tamori A, Kawada N. Remission of Psoriasis After Treatment of Chronic Hepatitis C Virus Infection With Direct-Acting Antivirals. Ann Intern Med. (IF 19.384) 2018 May 1;168(9):678-680.

研究の内容

 大阪市立大学医学部附属病院でDAA治療によりウイルス排除に成功したC型慢性肝疾患691例のうち、同意が得られた51例(65±10歳、女性28例、ALT 19±12 IU/L、血小板数17.8±5.4万/μL)に、治療終了後41±20週後に肝生検を行いました。
 治療後肝生検の炎症グレード(A0/A1/A2/A3)は18/24/8/1例、線維化ステージ(F0/F1/F2/F3/F4)は3/20/15/9/4例でした。A2以上の有意な炎症が残存していた9例中4例には、5%以上の脂肪化を伴っていました(図1)。また、治療前に肝生検を行った20例では1.2年前(中央値)との比較が可能で、炎症グレードは1.3±0.6→0.7±0.9(改善13/不変6/悪化1例)と有意に改善しましたが(P = 0.0043)、線維化ステージの変化1.8±1.0→1.7±1.3(改善5/不変11/悪化4例)は有意ではありませんでした(P = 0.45)。鉄沈着グレードは1.2±1.2→0.5±0.5 (改善11/不変7/悪化2例)と有意に改善しましたが(P = 0.0093)、脂肪化スコアの変化0.4±0.5→0.5±0.6(改善1/不変14/悪化5例)は有意ではありませんでした(P = 0.10) (図2)。


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今後の展開について

 DAAによる治療後にも肝生検組織内に炎症が残っていた者のうち脂肪肝炎の症例には、アルコール制限、肥満の解消など生活習慣の注意が必要です。また、炎症の残存の原因が不明の症例もあり、そのメカニズムの解明が求められます。
 治療前後の肝生検を比較した結果からは、肝内の炎症と鉄沈着は改善していました。これまでC型肝炎では鉄過剰が炎症を悪化させることが示されてきましたが、今回の結果からDAAによるウイルス排除後は、鉄制限食は必要ないと考えられます。有意でなかった線維化の改善に関しては、より長期の観察を続けていく必要があると思われます。

掲載論文、資金情報について

【雑誌名】United European Gastroenterology Journal
【論文名】"Short-term histological evaluations after achieving a sustained virologic response
to direct-acting antiviral treatment for chronic hepatitis C"
【著者】Masaru Enomoto, Yoshihiro Ikura, Akihiro Tamori, Ritsuzo Kozuka, Hiroyuki Moytoyama,
Etsushi Kawamura, Atsushi Hagihara, Hideki Fujii, Sawako Uchida-Kobayashi, Hiroyasu Morikawa,
Masaru Enomoto,Yoshiki Murakami, Norifumi Kawada

 本研究は高槻病院病理診断科・伊倉義弘先生の協力と科研費【基盤研究C:SVR症例におけるマイクロRNAを用いた肝発がんリスクマーカーの開発(16K09369)】の資金を得て実施されました。


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