公立大学法人大阪市立大学
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モチベーション管理で脂肪肝を改善! 非アルコール性脂肪性肝疾患に対する「能動型」臨床試験を開始

プレスリリースはこちら

この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆2/15 日刊薬業

本臨床試験のポイント

◇ 日々の食事・運動療法の達成度を自己採点することで、データを“数値化”
◇ 外来に通うことなく継続的にモチベーションを管理することが期待できる

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科 肝胆膵病態内科学の藤井英樹(ふじい ひでき)特任講師らの研究グループは、NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)患者に対して、携帯型ウェアラブル端末およびスマートフォンアプリを用いたモチベーション管理により脂肪肝の改善を目指す臨床試験を開始しました。
肥満人口の増加に伴い、脂肪肝の患者数も増加しています。一部のNAFLDは肝硬変、肝がんと進行しますが、特異的な治療薬は存在せず、食事・運動療法による減量が有効とされています。しかしながら減量の治療効果は限定的で、一時的に効果が見られた場合でも長期間観察するとモチベーション低下により、リバウンドに陥る患者が多いのも現状です。
 そこで藤井特任講師らは患者の“モチベーション”に着目し、NAFLD患者にウェアラブル端末を携帯してもらい、スマートフォンアプリ上に食事療法や運動療法の日々の達成度を自己採点し、入力することでモチベーションを維持し、脂肪肝改善を目指す新たな臨床試験を開始する運びとなりました。
近年ではヘルスケア分野において歩数や消費カロリーなど、日常の活動量を測定できる携帯型ウェアラブル端末やスマートフォンアプリは多数開発されていますが、その効果は科学的には証明されていません。本臨床研究では介入前後に肝脂肪化度を測定するため、治療の有用性を医学的に証明することが期待できます。また、NAFLD患者に対して一方的に治療を提供するのではなく、消費カロリーや治療の達成度といったデータを“見える化”し、患者が自分でデータを入力してもらう、いわゆる “能動型”の臨床試験で、全国的にも類の無い、珍しい取り組みです。本臨床試験を進めることで新たなNAFLD治療の開発につながることも期待されます。

 

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藤井英樹 特任講師

 

 

👉研究者からのひとこと
 「どうしたら脂肪肝は治りますか?」とよく聞かれます。日常生活の中に、治療に関する「情報=気づき」を入れ込むことで、患者さんの「モチベーション=やる気」が維持できるのでは?と考え、この研究を企画しました。

臨床試験の内容

 患者が臨床試験の参加条件を満たし、研究参加に同意いただいた場合、試験開始日までに採血、栄養指導、体組成測定、および肝弾性度測定を行います。研究開始日に、患者に①携帯型ウェアラブル端末、②スマートフォンアプリ使用説明書ならびに関連文書を配布し、4カ月間、医師が提示した食事・運動療法を施行します。原則日中に携帯型ウェアラブル端末を腕に着けてもらい、歩数や消費カロリー等のデータは患者のスマートフォンに転送され管理されます。2カ月毎に診察を、また、2カ月後、4カ月後、8カ月後の計3回栄養指導を受けていただきます。試験開始から4カ月後の診察時点で肝脂肪化度などの試験終了時検査を行います。その際に患者が食事・運動療法の継続を希望する場合は、引き続き食事・運動療法を4カ月間継続することが可能であり、一方、継続を希望されない場合も4カ月間の経過観察を行います。試験開始から8カ月後、臨床試験に参加いただいた全患者にフォローアップ検査(最終評価)を行います。
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※なお、本臨床試験は、臨床試験に求められる倫理的および科学的な基準を満たすよう計画し、大阪市立大学医学部附属病院の倫理委員会において承認されています。
※臨床試験の内容に関する詳細は以下のURLにてご案内しています。
URL: https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000040363 

期待される効果

 本研究で患者の脂肪肝の軽減および減量の維持が達成されれば、減量が達成されなかった場合に将来起きていたと考えられる肝硬変や肝がんのみでなく、肥満がリスクとなり生じる他の疾患の予防にもつながると考えられます。また、現在大きな問題になっている日本の医療費の削減につながることも期待されます。

ご参考

本研究は特定臨床研究の対象ではありません(民間企業から資金提供を受けておりません)