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職業関連性胆道がん対象の医師主導治験~免疫療法(免疫チェックポイント阻害剤)で実施~

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この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆7/4 化学工業日報

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区、略称:国がん)東病院(院長:大津 敦、千葉県柏市)と、大阪市立大学医学部附属病院(病院長:平田 一人、大阪府大阪市阿倍野区)は、印刷事業などで使用する化学物質が原因で発生した職業関連性胆道がんを対象に免疫療法の医師主導治験を開始しました。
 職業関連性胆道がんは通常の胆道がんと比べて、遺伝子変異が多い、またPD-L1の発現が多くみられることが特徴です。近年、遺伝子変異が多い症例や、PD-L1の発現が多くみられる症例において、海外の臨床試験で免疫チェックポイント阻害剤のより高い有効性が示されています。本試験では切除不能又は再発した職業関連性胆道がん患者を対象に、免疫チェックポイント阻害剤の一つであるニボルマブの有効性と安全性を検討することを目的としています。本試験は小野薬品工業株式会社より試験費用の一部及び治験薬の無償提供を受け実施しています。

本治験の概要

 本治験は、印刷事業で使用する化学物質が原因で発生した職業関連性胆道がんを対象にニボルマブ単剤での医師主導治験第II相試験です。職業関連性胆道がんは通常の胆道がんと比べPD-L1が多く発現されているため、抗PD-1抗体の有効性が期待でき、医師主導治験を計画しました。また、海外の臨床試験において遺伝子変異の多い症例に対しても、抗PD-1抗体の効果が期待できる結果が出ています。

・治療の対象
胆道がんと診断され、職業に関連した業務により労災認定を受けた20歳以上の、切除不能または再発胆道がん(肝内胆道がん、肝外胆管がん、胆嚢がん、乳頭部がん)患者さんが対象です。

・登録予定期間と登録人数
2019年4月から開始。国内2施設で、最大16名の患者さん

本治験の意義

 胆道がんの治療では、胆道がんは周囲のリンパ節や臓器に広がりやすい特徴をもっており、手術で腫瘍を取り除くことが難しい場合には化学療法で治療します。現時点では、職業関連性胆道がんの標準治療として高い効果が証明されたものがありません。本治験を検討することにより、職業関連性胆道がんに対する治療の選択枝が広がる可能性があると考えています。

ニボルマブについて

 ニボルマブは、リンパ球の表面上にあり、がんに対する免疫応答を抑制し、免疫細胞ががんを攻撃できないようにするPD-1の伝達経路を阻害する免疫チェックポイント阻害剤で、小野薬品工業株式会社と米国のブリストル・マイヤーズ スクイブ社が開発しました。ニボルマブは、PD-1とがん細胞を攻撃する免疫反応にブレーキをかける役割をしているがん細胞の表面上に存在するタンパク質であるPD-L1の結合を阻害することで、PD-1伝達経路を阻害し、がんを攻撃する免疫が再活性化するよう促すことにより、がんに対して有効に働くと考えられています。ニボルマブは日本国内で進行性の悪性黒色腫(メラノーマ)、非小細胞肺がん、腎細胞がんおよび胃がんなど複数のがん腫で承認を得ていますが、胆道がんに対しては承認されていません。米国、欧州でも既に複数のがん腫で承認されています。

職業関連性胆道がんについて

 職業関連性胆道がんは、印刷事業などで使用する1,2-ジクロロプロパンやジクロロメタンなどの有機溶剤が原因となって発生した胆道がんで、2013年より労働災害として認定されました。通常の胆道がんと比べ、若年層(30歳代、40歳代)で発症が多いことが知られています。