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回転する流体から静止する流体へのユニークな回転の伝導機構を発見 

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 大阪市立大学大学院理学研究科 坪田 誠 教授は、フロリダ州立大学、アルゴンヌ国立研究所との共同研究において、極低温状態で回転する流体と静止する流体を接触させたところ、コルク抜きのような波の動きで回転運動が伝わることを明らかにしました。本研究成果は、2020年3月10日、物理学分野において世界トップジャーナルである『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に掲載されました。

本研究のポイント

◇ 回転する流体から静止する流体へ「コルク抜き」状の波で動きが伝えられることが明らかに
◇ 今回発見された回転伝導は、中性子星の衝突などの宇宙スケールの現象にも通じる可能性

概要

 回転する流体と静止している流体を接触させると、回転する流体の動きが静止している流体に伝わり、やがて静止している流体も回転し始めることは想像に容易いのではないでしょうか。この現象は流体の温度などに関わらず同様であると考えられていました。
坪田教授らの研究グループは、絶対零度(-273℃)に近い極低温状態でボース・アインシュタイン凝縮(2001年 ノーベル物理学賞受賞)を起こした流体を対象に同様の接触を行い、どのような動きを起こすのかを調べました。
極低温状態の流体では量子渦と呼ばれる渦が回転の役割を担うため、接触を行った場合、回転する流体から静止している流体に量子渦が侵入することで動きが伝わると予想されていました。しかしながら、実際に理論的・数値的に調べたところ、回転する流体の動きがワインのコルク抜きのような形の波で静止する流体に侵入していることが明らかになりました。
ボース・アインシュタイン凝縮はこれまでミクロの世界で生じていると考えられていましたが、本研究成果により、重力波の観察で注目される中性子星の衝突や、銀河形成の母体となる暗黒物質の成長などの宇宙スケールの現象にも関係すると考えられます。
※ボース・アインシュタイン凝縮…アインシュタインが1925年に予言した現象。ボース粒子からなる気体において、ある温度以下で大量の粒子が最低エネルギー状態に落ち込む現象。
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坪田 誠 教授
坪田 誠 教授

👉研究者からのコメント
 二つのボース凝縮体を接触させたときに何が起こるかを数年前から研究していましたが、今回、一方を回転させてみると、予想外のことが起こることを発見しました。この機構は、低温物理学のみならず、回転する中性子星の合体や銀河形成の核となるダークマターハローなど宇宙スケールの現象にも関係する、普遍的なものです。

資金情報

 本研究は、科研費(17K05548)の対象研究です。

掲載誌情報

発表雑誌:PHYSICAL REVIEW LETTERS (IF= 9.227)
論文名:Torque and Angular-Momentum Transfer in Merging Rotating Bose-Einstein Condensates
著者:Toshiaki Kanai1,2, Wei Guo1,3, Makoto Tsubota4,5,6, and Dafei Jin7
1) フロリダ州立大学 国立高磁場研究所 2) フロリダ州立大学 物理学専攻 3)フロリダ州立大学 機械工学専攻 4) 大阪市立大学大学院 理学研究科 5) 大阪市立大学 複合先端研究機構 6) 大阪市立大学 南部陽一郎物理学研究所 7) アルゴンヌ国立研究所 ナノスケール材料センター
掲載URL:https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.124.105302