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大規模データから新規抗菌物質を同定 腸内ウイルスのビッグデータを使った新しい治療法を開発 〜腸内ファージのデータベースを構築~

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本研究のポイント

◇ 腸内ウイルス叢の大規模な全ゲノム情報の解析手法を独自に開発し、世界で初めてヒト腸内ウイルス叢と細菌叢のメタゲノムデータベースを作成した。
◇ 腸内細菌と腸内ファージの感染関係を網羅的に調べることができた。
◇ 偽膜性腸炎の原因菌(Clostridioides difficile)に特異的に感染するファージを同定し、そのゲノム情報からC. difficileを殺傷する抗菌物質も同定できた。
◇ 今後、腸内細菌を標的とした全く新たな予防法・治療法となるファージ療法の確立において、非常に有益なビッグデータの基盤を構築した。

概要

 Phage_Uematsu_OCU大阪市立大学大学院医学研究科 ゲノム免疫学の植松智教授(東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター メタゲノム医学分野 特任教授、附属国際粘膜ワクチン開発研究センター 自然免疫制御分野 特任教授を兼務)、藤本康介助教(東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター メタゲノム医学分野 特任助教、附属国際粘膜ワクチン開発研究センター 自然免疫制御分野 特任助教を兼務)、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センター 健康医療インテリジェンス分野の井元清哉教授らの国際共同研究グループは、腸内細菌ゲノムと腸内ウイルスゲノムを網羅的に解析することで疾患特異的な腸内細菌の制御を可能とする新規抗菌物質の同定に成功しました。

Illustration by Hideaki Miyauchi, ©Satoshi Uematsu

 近年では、腸内微生物ゲノム解析研究が進み、さまざまな疾患と腸内細菌叢の乱れとの関連性や、疾患の発症に直接的に関わる病原常在腸内細菌 (共生病原菌、Pathobiont)が次々と発見されています。一方、腸管内には腸内細菌だけでなく腸内ウイルスが大量に存在し、腸管の恒常性の維持に寄与していると考えられていますが、腸内ウイルスの解析は非常に難しく、これまで腸内ウイルス叢の詳細は明らかにされていませんでした。
 本研究グループは、腸内ウイルスゲノムの解析パイプラインを独自に作成することで、これまでウイルス暗黒物質(viral dark matter [※1])として解析が困難であったウイルスゲノムの詳細な分類が可能となり、日本人健常者の腸内ウイルス叢の全容が明らかとなりました。腸内細菌の大半を占める腸内ファージゲノムと腸内細菌ゲノムを組み合わせて解析することで、腸内ファージの宿主が特定でき、その情報を元に難病を引き起こす腸内常在細菌の一つであるClostridioides difficileに対するファージ由来の新しい抗菌物質を複数同定しました。
 本研究成果は2020年7月11日(土)0時(日本時間)に国際科学雑誌『Cell Host & Microbe』(IF=15.923)にオンライン掲載されました。

補足説明

※1 viral dark matter
腸管内に大量にあるはずのウイルスゲノムの解析が非常に困難であることを例えて、腸管内に暗黒物質があるとこれまで言われてきた
(Elife. 2015 22;4:e08490., Cell Host Microbe. 2019 11;26:764-778.e5.)

掲載誌情報

発表雑誌:Cell Host & Microbe (IF=15.923)
論文名:Metagenome Data on Intestinal Phage–Bacteria Associations Aids the Development of Phage Therapy Against Pathobionts
掲載URL:https://www.cell.com/cell-host-microbe/fulltext/S1931-3128(20)30344-9
DOI:10.1016/j.chom.2020.06.005
著者:Kosuke Fujimoto, Yasumasa Kimura, Masaki Shimohigoshi, Takeshi Satoh, Shintaro Sato, Georg Tremmel, Miho Uematsu, Yunosuke Kawaguchi, Yuki Usui, Yoshiko Nakano, Tetsuya Hayashi, Koji Kashima, Yoshikazu Yuki, Kiyoshi Yamaguchi, Yoichi Furukawa, Masanori Kakuta, Yutaka Akiyama, Rui Yamaguchi, Sheila E. Crowe, Peter B. Ernst, Satoru Miyano, Hiroshi Kiyono, Seiya Imoto*, Satoshi Uematsu* (*責任著者)

資金・特許等について

 本研究は、武田科学振興財団研究助成、キヤノン財団研究助成、JST COI STREAM東京大学V1拠点「自分で守る健康社会」、HPCI戦略プログラム 分野1「予測する生命科学・医療および創薬基盤」の一環として行われました。
 東京大学医科学研究所システム免疫学社会連携研究部門に対して、株式会社医学生物学研究所の支援を受けました。