「スピン汚染」を効率的に取り除く新規量子アルゴリズムの開発に成功!
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本研究のポイント
◇ 量子コンピュータを用いると、原子・分子のエネルギーを精密に求める量子化学
計算が超高速に実行できる。
◇ 分子は「スピン状態」が異なると反応性なども異なるので、正しい「スピン状態」
について量子化学計算をしなければ化学的に意味のある議論ができない。
◇ 量子コンピュータを用いた量子化学計算で、「スピン状態」がずれた(「スピン
汚染」)ときに、「スピン汚染」を効率的に取り除くことができる新規手法の
開発に成功。
概要
大阪市立大学大学院理学研究科の杉﨑 研司(すぎさき けんじ)特任講師、佐藤 和信(さとう かずのぶ)教授、工位 武治(たくい たけじ)名誉教授らの研究チームは、
量子コンピュータを用いて分子の量子化学計算を行ったときに、望んでいるスピン
量子数を持つ波動関数を正しく得るための新規手法として、「スピン汚染」
(望んでいないスピン量子数を持つ波動関数成分)を効率的に取り除くことができる
新規量子アルゴリズムを発表しました。
これにより、精密さが求められる実際の化学研究に量子コンピュータを役立てる
ために乗り越えなければならない課題の1つが解決されました。
本研究成果は、国際学術誌Physical Chemistry Chemical Physics(オープンアク
セス)に、Communicationとして9月17日18時(日本時間)にOnline掲載されました。
資金情報
本研究は、AOARD Scientific Project on “Molecular Spins for Quantum Technologies” (Award No. FA2386-17-1-4040, 4041), JSPS KAKENHI
(Grant No. 17H03012, 18K03465)、JSTさきがけ「革新的な量子情報処理技術基盤
の創出」(Grant No. JPMJPR1914)の対象研究です。
掲載誌情報
発表雑誌:Physical Chemistry Chemical Physics
論文名:A probabilistic spin annihilation method for quantum chemical
calculations on quantum computers
著者:Kenji Sugisaki, Kazuo Toyota, Kazunobu Sato, Daisuke Shiomi,
Takeji Takui
URL:http://dx.doi.org/10.1039/d0cp03745a