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ヒトノロウイルスがアルコール消毒薬により不活化されることを実証 ― アルコール消毒薬の適応範囲を広げる画期的な研究成果 ―

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本研究のポイント

◇消毒用アルコールでは不活化できないとされていたヒトノロウイルスが、pHを中性域から外したアルコール溶液で次亜塩素酸ナトリウムと同程度に、ほぼ完全に不活化されることを明らかにした。
◇このアルコール溶液は、クエン酸や重曹、硫酸マグネシウムといった、食品添加剤のみで調整することが出来るため、手指消毒薬として用いることも出来る。
◇マウスノロウイルスなどの代替ウイルスを不活化しうる市販のアルコール製剤の中には、ヒトノロウイルスには効果のないものがあることが明らかになった。

概要

 大阪大学微生物病研究所の佐藤慎太郎特任准教授(常勤)(大阪市立大学大学院医学研究院・ゲノム免疫学・准教授を兼務)らの研究グループは、自ら確立したヒトiPS細胞株由来腸管上皮細胞を用いたヒトノロウイルス増殖系を用いて、pHを酸性、もしくはアルカリ性に傾けた消毒用アルコールに、ヒトノロウイルスをほぼ完全に不活化しうる効果があることを確認しました。pHの調整には食品添加物として用いられるクエン酸(市販のレモン果汁でも可)や重曹を用いることができるため、今回の研究成果は、抗ヒトノロウイルス活性を持つ手指消毒薬の開発、検証に役立つことが期待されます。
 本研究成果は、英国科学誌である「Scientific Reports」に9月28日(月)18時(日本時間)に公開されました。

補足説明

 ヒトノロウイルス…ノロウイルスはカリシウイルス科に属し、10種類の遺伝子群(GI~GX)に分類されており、この中でヒトに感染するヒトノロウイルスはGI、GII、GIV、GVII、GVIII、GIXである。それぞれの種でさらに複数の遺伝子型に分類され、GII.4型が例年最も流行するタイプである。感染性胃腸炎の原因の約7割を占める感染症ウイルスで、非常に感染力が強く、乾燥しても感染力が数週間は失われないために、糞便や吐瀉物に含まれるウイルスが乾燥して空気中に散乱し、それを吸い込むことで二次感染を起こす人もいる。日本では11月から2月が流行のピークである。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスのように、宿主の脂質膜(エンベロープ)に覆われていないことから、ノンエンベロープウイルスに属する。

掲載誌情報

発表雑誌:Scientific Reports
タイトル:Alcohol abrogates human norovirus infectivity in a pH-dependent manner
著者名 :Shintaro Sato, Naomi Matsumoto, Kota Hisaie, and Satoshi Uematsu

特記事項

 本研究は、日本学術振興会(JSPS)科学研究費補助金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) 「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」、公益財団法人持田記念医学薬 学振興財団の支援によって行われました。