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脳性まひ予防に向けて~低酸素性虚血性脳症に対する自己さい帯血幹細胞治療 第Ⅱ相試験開始のお知らせ~

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 大阪市立大学大学院 医学研究科の新宅治夫 特任教授(障がい医学・再生医学 寄附講座)らの研究グループは、低酸素性虚血性脳症(Hypoxic Ischemic Encephalopathy :HIE)に対する自己さい帯血治療の第Ⅰ相試験が終了し、安全性が確認できたことを受け、2020年11月12日より第Ⅱ相試験※1を開始いたしました。
※1 再生医療等安全性確保法に基づく臨床研究

背景

 赤ちゃんが生まれてきたときに呼吸や脈拍が弱くなっている状態を重症仮死といいます。その主因とされている周産期の低酸素性虚血性脳症は、出生時の脳への血流遮断によって脳神経細胞が低酸素と低血糖に陥ることが原因で引き起こされ、重症のHIEは、出生児1000人に対し1~6人の割合で生じます。有効な治療とされている赤ちゃんの体を冷やす低体温療法を施した場合でも、半数は重篤な後遺症が残り、運動困難や筋肉がこわばる脳性まひの主因となっているのが現状です。

研究概要

 201099-1.png新宅特任教授らの研究グループが取り組んでいる「自己さい帯血幹細胞治療」は、脳障害の回復を目的に、HIEになった新生児に対し、自分のさい帯血から採取した幹細胞を出生後24時間ごとに3日間かけて点滴投与する治療法です。自身のさい帯血を用いるため、拒絶反応を防ぐことも可能になります。
 治療の安全性を確認するための最初の臨床試験である第Ⅰ相試験に必要な6症例の試験が終了し、安全性の検証が確認できたため、次に治療の実施可能性と効果を確認するための第Ⅱ相試験を11月より開始いたしました。第Ⅱ相試験では第Ⅰ相試験の2〜3倍となる15例の症例が必要になります。9施設※2でスタートしますが、18施設まで増やして実施する予定です。
※2 岩手医科大学・大阪市立総合医療センター・大阪市立大学・倉敷中央病院・東京都立小児総合医療センター・獨協医科大学・名古屋大学・日本大学・淀川キリスト教病院

新宅 治夫 特任教授
新宅 治夫 特任教授

研究者からのコメント                      今回の第Ⅱ相試験では、さい帯血幹細胞の分離装置がない施設でも民間さい帯血バンクの株式会社ステムセル研究所に依頼して、さい帯血を輸送し調製した細胞液を用いて自己さい帯血幹細胞治療ができるかどうか、その安定性・安全性と実現可能性について検討する予定です。この臨床研究が成功すれば、より多くの病院でこの治療を実施することができるようになります。

ご参考

 ◆ステムセル研究所Webサイト https://www.stemcell.co.jp/

 ◆これまでの研究成果
低酸素性脳症の新生児へのさい帯血幹細胞治療 臨床研究を開始(2015年5月12日掲載)
新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療の国内第一例男児が元気に退院(2015年5月29日掲載)
AMED 平成26年度開始課題 および成果報告
新生児低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療 ―第Ⅰ相試験が終了、第Ⅱ相試験へ―(2018年02月23日掲載)

資金情報

 AMEDの「再生医療等実用化研究事業」における研究開発課題「低酸素性虚血性脳症に対する自己臍帯血幹細胞治療に関する研究」として支援を受けております(実施期間:2018年度から2020年度)。