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副作用リスクの少ない治療薬候補 グランザイムB阻害薬が難病の類天疱瘡治療に有効であることを発見

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本研究のポイント

◇グランザイムBが類天疱瘡の病気をより重篤にしていることを明らかに。
◇グランザイムBの働きを阻害する外用薬が水膨れを治療することを確認。
◇現在のステロイド治療に代わる、副作用が少ない治療薬として期待される。

概要

 

(図)水疱性類天疱瘡のモデルマウスにグランザイムB阻害薬(VIT-1002)を外用したマウスでは水ぶくれが認められなかった。

 大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学の廣保翔臨床研究医(鶴田大輔教授)らの研究グループは、ブリティッシュコロンビア大学病理学教室のDavid Granville教授らの研究グループと共同して、グランザイムBが類天疱瘡疾患の治療標的となることを明らかにしました。
 難病に指定されている類天疱瘡は全身にかゆみを伴う水膨れができる疾患で、高齢者に多く発症し、無治療では最悪の場合死に至ることがあります。現在の一般的な治療ではステロイドをはじめとした免疫抑制剤を使用しますが、細菌やウイルスに感染しやすくなるなど、場合によっては命に関わる副作用を伴います。また、高齢化社会において患者がより増えていくことが予想され、高齢者ほど免疫抑制剤の副作用リスクが高いため、副作用のほとんどない治療薬の開発が急務となっています。
 そこで本研究では、類天疱瘡の水膨れの近くに沢山存在することが知られており、その役割が研究されてこなかったグランザイムBに着目しました。3種類の独立した動物モデルを用いた実験により、グランザイムBが類天疱瘡の症状をより重篤にしていることを発見しました。また、グランザイムBの働きを阻害する外用薬が、類天疱瘡の動物モデルの水膨れを治療することがわかりました。さらに、ヒト患者の水膨れの周囲や水膨れの内容液ではグランザイムBが増加していることが本研究でわかりました。
 今回グランザイムB阻害薬(VTI-1002)の外用が類天疱瘡動物モデルの水膨れを治療することが明らかとなり、それをヒト患者にも用いることができる可能性が期待できます。
本研究成果は、日本時間で1月12日(火)にNature Communications(IF = 12.121)のオンライン版に掲載されました。

補足説明

 ※類天疱瘡(るいてんぽうそう):全身にかゆみを伴う水膨れができる疾患

掲載誌情報

【雑誌名】Nature Communications(IF = 12.121)
【論文名】Granzyme B Inhibition Reduces Disease Severity in Autoimmune Blistering Diseases
【著 者】廣保翔※, Matthew R. Zeglinski, Hongyan Zhao, Megan A. Pawluk, Christopher T. Turner, Anika Kasprick, 立石千晴※, 西江渉, Angela Burleigh, Peter A. Lennox, Nancy Van Laeken, Nick J. Carr, Frank Petersen, Richard I. Crawford, 清水宏, 鶴田大輔※, Ralf J. Ludwig, and David J. Granville
※大阪市立大学
【掲載URL】https://www.nature.com/articles/s41467-020-20604-3
【DOI】10.1038/s41467-020-20604-3

資金・特許等について

 本研究は、Canadian Institutes for Health Research, Michael Smith Foundation for Health Researchの対象研究です。David GranvilleはグランザイムB阻害薬を開発したviDA therapiutics, Inc.の共同出資者、チーフサイエンスオフィサー、コンサルタントです。