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養蚕技術を活用して得られたカイコ冬虫夏草から、認知機能を改善する新規物質「ナトリード」を発見

2021年02月03日掲載

研究・産学

 

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概要

  大阪市立大学の品田教授らの研究グループは岩手大学発ベンチャーの(株)バイオコクーン研究所・岩手大学・九州大学・岩手医科大学との共同研究により、アルツハイマー病を含む認知症および老化を改善する効果が期待できる新規物質(ナトリードと命名)をカイコ冬虫夏草(ハナサナギタケ)から見出しました。
 

研究の背景

 2018年の世界の認知症患者は5千万人で2050年までに1億5420万人まで増加すると推定されています。今回、カイコハナサナギタケの冬虫夏草に着目し、その抽出物が脳機能改善などの効果を示すことを見出しました。

研究の内容・成果

 抽出物のどの成分が作用しているのか。さらなる探索を進めた結果、ナトリードと名付けた分子がグリア細胞-神経細胞の相互作用を調節し、機能を改善する有効成分であることを発見しました。具体的な効果として、マウスの経口投与実験で脳機能と毛髪の老化を改善することがわかりました。

 

 

 


※ナトリード(Naturido)とは、エスペラント語で’Naturo’は「自然」の意味で、
 ’id’は「子供達・子孫」の意味の接尾辞による合成語

 

 

 
 

 

 その他多くの実験結果から、ナトリードはアルツハイマー病などを含む、神経疾患治療に向けた有望な成分になりうることを提案しました。

掲載誌情報

【発表雑誌】『PLOS ONE』
【論 文 名 】A novel cyclic peptide (Naturido) modulates glia–neuron
      interactions in vitro and reverses ageing-related deficits in
      senescence-accelerated mice
【 著 者 】Shinichi Ishiguro,Tetsuro Shinada,Zhou Wu,Mayumi Karimazawa,
         Michimasa Uchidate,Eiji Nishimura,Yoko Yasuno,Makiko Ebata,
       Piyamas Sillapakong,Hiromi Ishiguro,Nobuyoshi Ebata,
      Junjun Ni,Muzhou Jiang,Masanobu Goryo,Keishi Otsu,
      Hidemitsu Harada,Koichi Suzuki
【論文URL 】https://journals.plos.org/plosone/

発表者

<(株)バイオコクーン研究所>
鈴木 幸一(責任著者、代表取締役フェロー、岩手大学名誉教授)
石黒 慎一(同等著者、研究部長)
苅間澤 真弓(主任研究員)
江幡 真規子(主任研究員)
シラパコング・ピヤマース(主任研究員)
石黒 裕美(主任研究員)
江幡 順良(研究専門部長)

<大阪市立大学 大学院理学研究科>
品田 哲郎(同等著者、教授)
西村 栄治(研究員)(現株式会社三洋化学研究所)
保野 陽子(助教)(現九州大学)

<九州大学大学院 歯学研究科>
武 洲(同等著者、准教授)
倪 軍軍(元助教)
姜 慕舟(博士課程4年生)

<岩手大学>
内舘 道正(理工学部 准教授)
御領 政信(名誉教授)

<岩手医科大学大学院 歯学研究科>
原田 英光(教授)
大津 圭史(准教授)

用語

ナトリード(Naturido):Naturido は、エスペラント語で“Naturo”は自然、“id”は子供・子孫を意味する接尾辞の合成語として佐藤竜一(作家、宮沢賢治研究家)が提案した言葉。㈱バイオコクーン研究所 鈴木フェローが、当該環状化合物の可能性に相応しいとして化合物名称に命名した。※ナトリードは(株)バイオコクーン研究所の登録商標です(登録番号5706136)

カイコ冬虫夏草:カイコの幼虫やサナギを培地として、野外から採取した冬虫夏草菌(ハナサナギタケ)を育てて収穫したもので、英語ではplant worm という。
グリア細胞:神経細胞の約10倍存在し、21世紀になって神経細胞の保護から抗炎症作用や栄養因子の供給などの機能が明らかになり、「第2の脳」とも呼ばれている。

アストロサイト:
グリア細胞の一種で、その中でも最も数の多い細胞(約60%)である。日本語では
星状膠細胞ともいわれる。その役割は多様で神経細胞の保護、神経伝達物質の取り込み、シナプスのサポートなどがある。
ミクログリア:グリア細胞の一種で、約10%存在している。脳内の免疫細胞といわれ、アミロイドβを貪食する機能を持つ。