公立大学法人大阪市立大学
Facebook Twitter Instagram YouTube
パーソナルツール
新着情報

肝硬変の治療法開発に光 肝線維化の進行抑制にサイトグロビンが有効であることを確認

プレスリリースはこちらから

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科肝胆膵病態内科学の河田則文教授、Le Thi Thanh Thuy特任講師、Ninh Quoc Dat大学院生らの研究チームは、サイトグロビン※1の肝線維化※2治療薬としての応用に向けた有効性や安全性の確認を行い、今後の研究開発に向けて大きな一歩を踏み出しました。
 本研究チームは、サイトグロビンを静脈注射することで、マウス肝線維化の進行が抑えられることを発見しました。2001年に河田則文教授らが発見したサイトグロビンは、肝臓が様々な原因により急性または慢性の炎症を起こしている時に、コラーゲンなど線維化分子を生成する星細胞内に発現します。今回、星細胞内のサイトグロビンを過剰発現させたり、あるいはヒト型組換えサイトグロビンを外から投与することで、肝線維化を抑制する効果が確認されました(図1)。
 本研究成果は、2021 年2月11日にHepatology誌(IF=14.679)に掲載されました。

図1 ヒト型組み換えサイトグロビン(His-CYGB)が生体内での肝線維化を抑制
チオアセトアミド投与により肝線維化を生じた野生型マウスを用いた実験結果。上段から肝細胞障害と炎症性細胞の浸潤(H &E染色)、コラーゲン線維の組織沈着(SiR-FG染色)、活性化星細胞を示すα平滑筋アクチン染色(αSMA)、脂質過酸化反応(4-HNE染色)、酸化的DNA障害(γH2AX染色)をそれぞれ示す。His-CYGBを投与していない肝線維化マウス(コントロール、左側)に比較して、His-CYGBを2週間(真中)あるいは5週間(右側)静脈投与した線維化モデルマウスの肝臓では、炎症反応、コラーゲン沈着、星細胞活性化、酸化ストレス反応が顕著に抑制されていた。

補足説明

※1. サイトグロビン:
ヘモグロビン、ミオグロビン、ニューログロビンについで発見された哺乳類第4番目のグロビンタンパク質。酸素・一酸化炭素・一酸化窒素などのガス分子と結合し活性酸素の消去に関与する。肝臓では、サイトグロビンは肝星細胞でのみ発現し、肝星細胞を線維芽細胞由来の筋線維芽細胞と区別するためのマーカーとして利用できる。 

※2. 肝線維化:
肝線維化は慢性的な肝臓障害時に創傷治癒反応として生じ、肝硬変、肝不全、門脈圧亢進症および肝発がんの原因となる。

掲載誌情報

【雑誌名】Hepatology(IF=14.679)
【論文名】6His-tagged Recombinant Human Cytoglobin Deactivates Hepatic Stellate Cells and Inhibits Liver Fibrosis by Scavenging Reactive Oxygen Species
【著 者】Ninh Quoc Dat*, Le Thi Thanh Thuy*, Vu Ngoc Hieu, Hoang Hai, Dinh Viet Hoang, Nguyen Thi Thanh Hai, Tuong Thi Van Thuy, Tohru Komiya, Krista Rombouts, Dong Minh Phuong, Ngo Vinh Hanh, Truong Huu Hoang, Misako Sato-Matsubara, Atsuko Daikoku, Chiho Kadono, Daisuke Oikawa, Katsutoshi Yoshizato, Fuminori Tokunaga, Massimo Pinzani, and Norifumi Kawada. Hepatology 2021. (*These authors share co-first authorship).
【DOI】10.1002/hep.31752

資金情報

 本研究はAMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)肝炎等克服実用化研究事業『リコンビナントCytoglobinを用いた脱肝線維化治療薬開発に関する研究』による資金援助を得て実施しました。