ストレスに関連するアレルギー疾患の新規治療薬開発に期待 アレルギー疾患の症状が精神的ストレスによって悪化メカニズムの一端を解明する
プレスリリースはこちらから
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆3/24 マイナビニュース(WEB)
本研究のポイント
◇ストレスホルモン(CRH)がヒト鼻粘膜内の肥満細胞の増殖と脱顆粒を誘導することを明らかに。
◇モデルマウスでは、アレルギー発症に関わる粘膜型肥満細胞の活性化はストレスによって誘導されることを解明。
概要
大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学(教授:鶴田 大輔)の高市 美佳大学院生らの研究グループは、ストレスホルモンであるコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)※1が、ヒト鼻粘膜内のアレルギー発症に関わっている肥満細胞※2の増殖と脱顆粒※3を誘導することを明らかにしました。
今回、本研究グループはCRHが粘膜型肥満細胞を活性化してアレルギー性疾患の病態に関与する可能性を考え、ヒト鼻ポリープ組織培養系を用いた研究を行いました。
本研究ではまず、鼻ポリープ組織培養系にCRHを添加したところ、肥満細胞数と脱顆粒が増加したことを発見しました。また、同細胞の増殖因子であるStem cell factor(SCF)の粘膜上皮内での発現の上昇も確認しました。そして、このCRHによる肥満細胞への影響は、CRHR1遺伝子ノックダウン、CRHR1阻害薬またはSCF中和抗体添加によって阻害されました。さらに拘束ストレスモデルマウスを用いた実験も行い、ストレス群のマウス鼻腔粘膜内で肥満細胞数と脱顆粒の増加も確認し、これはCRHR1阻害薬の鼻腔投与で阻害されたことも発見しました。
この成果により、CRHR1を介したCRH−肥満細胞のシグナル制御は、ストレス関連の難治性アレルギー疾患の新規治療薬の開発につながることが期待されます。
本研究成果は2021年3月9日(火)に国際学術雑誌「International Journal of Molecular Sciences」(IF = 4.556)に掲載されました。
補足説明
※1. コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)…ストレス応答において重要な役割を担うホルモン。corticotropin releasing hormone。
※2. 肥満細胞…アレルギーの発症に関わっている免疫細胞。ストレスホルモンであるCRHの受容体、CRH受容体タイプ1(CRHR1)を持っている。
※3. 脱顆粒…細胞内に見られる顆粒の中に含まれる化学物質が放出されること。
掲載誌情報
【雑誌名】International Journal of Molecular Sciences(IF = 4.556)
【論文名】Stress and Nasal Allergy: Corticotropin-Releasing Hormone Stimulates Mast Cell Degranulation and Proliferation in Human Nasal Mucosa
【著 者】Mika Yamanaka-Takaichi*, Yukari Mizukami*, Koji Sugawara*(*contributed equally), Kishiko Sunami, Yuichi Teranishi, Yukimi Kira, Ralf Paus and Daisuke Tsuruta
【掲載URL】https://doi.org/10.3390/ijms22052773