公立大学法人大阪市立大学
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小田中章浩教授(文学研究科)の著作“Japanese Political Theatre in the 18th Century: Bunraku Puppet Plays in Social Context”が、イギリスの大手出版社Routledge社より刊行されました。

今回の著作では、18世紀に大阪で上演された文楽の主要な8作品について、その政治的な含意という従来とは全く異なるアプローチによる論考を展開しています。小田中章浩教授と名城大学の岩井眞實教授との共著となりますが、英文執筆はすべて小田中教授が担当しており、英語圏の読者に対し「文楽」「大阪」について広く発信する貴重な著作となりました。

2018年にベオグラードで開催された「国際演劇学会」における小田中先生と岩井先生の発表要旨に興味を持ったRoutledge社の編集者から、直接オファーがあり実現した企画とのことで、完成までに約2年の歳月を要しました。同社は、人文科学・社会科学分野の学術書、ジャーナル、オンライン文献を扱うイギリスの大手出版社で、日本の人文系研究者が著作を刊行するのは大変稀なことです。

18世紀の大阪では、「時代物」といわれる文楽が人気を博していました。「仮名手本忠臣蔵」[義経千本桜」「菅原伝授手習鑑」などが代表的な演目です。「時代物」は、公家や武家社会に起こった事件や物語を題材にしたものですが、古代から戦国時代の歴史の中に現代(18世紀)の庶民が登場するという特異な構造を持っています。そこに当時の世相や風俗を反映させて、政治に対する批判意識、お上に対する反抗心といったものを表現していたとのことです。例えば、著作の第7章で解説されている「近江源氏先陣館」と「鎌倉三代記」は、鎌倉時代の源頼家と北条時政の権力争いが背景となっていますが、実は「大坂夏の陣 冬の陣」を描いたものだそうです。幕府にとって、この演目が庶民の人気を集めるのは面白いはずがなく、先行作品は何度も上演禁止になったのですが、そのたびに修正されながら、今日の二つの作品の形となったそうです。

小田中先生のコメント

文楽に描かれた政治的な意味を読み解くにあたって、文楽作品の研究はもちろんのこと、当時の大阪の劇場や差別問題に関して大阪市立大学で行われてきた先行研究が大変参考になりました。200805.JPG
まずは、英語圏のレビューワーからどのような評価を受けるかですが、引き続き、第2弾、第3弾の著作に向けてさらに研究を重ねたいと思います。

著作

Japanese Political Theatre in the 18th Century: Bunraku Puppet Plays in Social Context 

1. The Dramaturgy of Bunraku
2. The Battles of Coxinga: The Self-image of Early Modern Japan
3. A Courtly Mirror of Ashiya Dōman: the Echoes of a Shadowy Domain
4. Sugawara and the Secrets of Calligraphy: The Emperor and the Stability of Society
5. Yoshitsune and the Thousand Cherry Trees: Re-appropriating History
6. The Treasury of Loyal Retainers: Money Can Buy You Loyalty
7. The Genji Vanguard in Ōmi Province: The Osaka People are Indomitable!
8. Mount Imo and Mount Se: Precepts for Women: Eros and Politics
9. Travel Game while Crossing Iga: Individuality on the Margin of Society

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