公立大学法人大阪市立大学
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2021年度入学式 学長式辞

2021年04月06日掲載

法  人

令和3年4月6日

 入学式学長式辞

 大阪市立大学
学長 荒川哲男

本日の晴れやかな日に、大阪市立大学入学式を迎えられました学部学生及び大学院学生の諸君、そしてこの日を心待ちにしておられましたご家族の皆さま、ご入学おめでとうございます。

昨年初頭から、未曾有のコロナ禍に見舞われ、昨年度はリアルに入学式を行うことができず、創意工夫をこらした上で急遽ヴァーチャル入学式を執り行いました。それなりに評価を得ましたが、やはりリアルに勝るものはなく、今回は万全の感染防止対策の上で、このように入学式を持てたことを皆さんと共に喜びたいと思います。これまで、特別な準備に尽力してくれたスタッフの皆さんに感謝します。

さて、新入生の皆さんは、このきわめて困難な1年を乗り越えて、見事に入学を勝ち得た「選ばれし人たち」です。それは素晴らしいことです。自分一人だけの力では成し得ないことで、支えてくださった家族や友人、先輩方への感謝をいつまでも忘れないでください。そして、この勝負に敗れた人が居ることも忘れないでください。諸君がなすべきことは、そのような人たちの分まで、これから始まる大学生活において、知識・技能・人間性を磨き、人類すべてが同等に幸福になれるようにリーダーシップを発揮することです。

ところで、今年度は本学にとって特別な年になります。というのは、大阪市立大学としては最後の入学生を受け入れる年になるからです。諸君には、有終の美を飾る卒業生になっていただくとともに、来年の2022年度、大阪府立大学と統合して生まれる新大学 大阪公立大学(仮称)へ発展的に繋いでいただく役割も担っていただくことになります。「有終の美」と「新大学への絆のバトン」という2つの大きな使命に向かって邁進してください。

本学のスタッフ・在校生一同で、この特別な年を「ラスト・イチダイ・イヤー」として盛り上げていきます。ラストは文字通り「最後の」という意味ですが、動詞で使うと「続く」という意味になります。「最後」のイチダイであるとともに、新大学に「続く」イチダイという2つの意味、ダブル・ミーニングがあります。新しく迎えた同志とスクラムを組んで、この1年間、色々な企画に取り組んでいきましょう。よろしくお願いします。

さて、本学は昨年度に開校140周年を迎えた、もっとも長い歴史と伝統のある公立大学です。そのルーツである大阪商業講習所を開設された、五代友厚公の理念のひとつが「他利」、すなわち自分のことより他人のことを優先するという精神です。このような薩摩藩士としてのサムライ精神を貫く五代氏に多くの人々が信頼を寄せ、太い人脈が生まれ、結果的に近代大阪経済の父と呼ばれる偉業を成し遂げられたのです。

五代友厚公と同じ時代に、札幌農学校の初代校長であったウィリアム・スミス・クラーク博士が、学校を去るときに在校生に残した有名な言葉があります。「Boys, be ambitious」。これは誰でも知っていますね。Girlsがなく、Boysだけなのは単に男子校だったからです。ポイントはその後に、どんな言葉が続くか。これはあまり知られていません。実は「Not for money」と続くのです。すなわち、「少年よ、大志を抱け。しかしお金のためでも、利己心のためでも、名声を得るためでもない。人間としてあるべき、あるいは行うべき全てのことに大志を抱け」と述べておられるのです。まさに五代友厚公の「他利」の精神に通じるところがありますし、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs 持続可能な開発目標、本学でも推進していますが、地球環境を護り、人類の平等と幸福をもたらす活動にも通じています。

わが大阪市立大学は、伝統と歴史のなかで、本学の生みの親である五代友厚公や大阪商科大学に昇格させた關一元大阪市長のサムライ魂と熱き血潮を受け継いで、偉大なる大先輩方を輩出してきました。サントリーの創始者 鳥井信治郎氏、野村證券の創始者 野村徳七氏、塩野義製薬の創始者 塩野義三郎氏、ユニ・チャームの創始者 高原慶一朗氏らをはじめとし、上場企業を中心に多くの社長を実業家として輩出してきました。また、文系では、芥川賞作家 開高健(たけし)氏、理系では2人のノーベル賞学者 南部陽一郎先生と山中伸弥先生を輩出しています。そのような先輩方が、大阪市立大学の自由と進取の気風をかもしだし、連綿とイチダイ生に引き継がれています。諸君もイチダイで誇りを持って、自由な発想でさまざまな事に挑戦していただきたいです。

昨年度は、コロナ禍で授業はオンライン主体でした。我々も痛手を被りながらも新型コロナについて学習できたことは多々あり、まだ分からないことも多いですが、今年度は「大胆、かつ繊細」に挑戦していきます。教室の安全性は確保しており、従来の対面授業を基本にしますが、オンラインの良さも経験したことから、こちらも積極的に取り入れていきます。

新型コロナウイルス感染症は、過度に恐れることなく、正しい知識と情報から、正しく恐れてください。実際、昨年10月に希望者を対象に全学PCR検査を実施したところ、約2400名が受検し全員が陰性でコロナ・ゼロでした。その時点においてではありますが、いかに本学のキャンパスが安全かを証明したことになります。また、希望者には消毒用のアルコールを供与したり、感染防止策の啓発を積極的に行っていて、クラスターの発生は未だ起こっていません。

また、コロナ禍のために学業を断念せざるを得ない学生を、ひとりたりとも出してはならない、という教職員の強い決意のもと、経済的、メンタル的な支援を行ってきましたし今後も続けていきます。昨年度は、4月に緊急事態宣言がだされ、アルバイト打ち切りなどで経済的に困窮した学生1679名に対し、5月に一律5万円の給付を行いました。原資は保護者の団体である教育後援会ならびに本学OB・現役主体の寄附からなる夢寄金からご協力いただきました。同時に、登校できない、友達ができないなどでメンタルに落ち込む学生が増えている可能性から、メンタルヘルスチェックを行い、うつなどの進行を未然に防ぐことにも力を注ぎました。諸君には、心配事なく学業に専念していただくために、スタッフは全面的に支援体制を取っています。少しでも悩み事が生じた場合、学生課の「学生なんでも相談室」に気軽に相談してください。

ところで、18歳で白血病という血液のがんになり、過酷な闘病生活を経て、一昨日、快挙を成し遂げた女性が居ます。そうです、水泳の池江璃花子選手です。医学が進歩したとは言え、がん治療は身体にもダメージを与えます。日本選手権で再び優勝し、東京オリンピックの選手に選ばれるとは、2年前には誰一人想像できなかったことです。「努力は必ず報われる」 想像を絶する我慢と努力を重ねてきた池江選手のこの言葉にはこころを打たれました。まだもうしばらく続くであろうコロナ禍という苦難の中で、諸君には、新しく始まる大学生活において、我慢と努力が求められます。そして、その努力は必ず報われるのです。それを信じて、正しくコロナを恐れて感染防御に努めながら学業に励んでください。

社会が学生諸君に求めているのは、どの大学を卒業したかではなく、大学で何を学び、何ができるようになって、何がしたいのかの志を持っていることです。そのためには、学業以外に内面を磨いて欲しいのです。①「自ら考え自ら行動する主体性」②「諦めない粘り強さ」③「コミュニケーション力」の3つの要素を磨いてください。とくに3つ目の肝はユーモアととんちで、その意味では、大阪にある本学がベストの学び場といえるでしょう。

これら3要素が人間力のパワーアップにつながります。課外活動は、これらの3要素を磨く絶好の場なので是非どこかの部やサークルに加入してください。私が入学したときは、学園紛争で授業がなく、所属した野球部で人間力を養わせていただいたうえ、貴重な仲間ができ、それから50年経った今でも励まし慰め合っています。課外活動もルールを守って、コロナ対策を十分に行えば安全性は担保できます。問題は、そのあとの流れで飲み会に行ったりすることで起こってきます。その点だけ注意してください。

5年前に私が掲げた本学のスローガンは「笑顔あふれる知と健康のグローカル拠点」です。「笑顔」が最初にあるのは、楽しい人生が一番だからです。諸君にとってはワクワクする大学生活がスタートしますが、慣れないことや知らない人たちがほとんどで不安もあるでしょう。まずは、行動を起こし、好奇心をあらわにさまざまな活動に首を突っ込み、できるだけ多くの人たちと早く打ち解けるようにしてください。これから「笑顔あふれる」キャンパスで諸君に会えるのが楽しみです。

改めまして、本日はご入学おめでとうございました。