生活困窮者の就労支援に役立つツールを開発、実装へ!
プレスリリースはこちらから
本研究のポイント
◇生活困窮者への就労支援に活用できるアセスメントツールを開発。
◇複雑な作業は不要!グラフ作成はワンストップで操作可能。
◇AI(機械学習)による就職の可能性を予測した結果、9割以上の正答率。
概要
大阪市立大学大学院 都市経営研究科の五石 敬路准教授、一般社団法人京都自立就労サポートセンターの高橋 尚子主任相談員らは、生活困窮者の就労準備支援の成果を指標化し、さらにその成果をグラフ等で見える化できる『KPSビジュアライズツール』を開発しました。
これまでの就労支援には、就職の有無以外に適した成果指標がなく、支援員と要支援者の認識に乖離が生じたり、簡易な独自指標を自治体独自で制作しても実際の支援現場で活用の仕方が分からないという課題があり、客観的指標が必要とされていました。
そこで五石准教授らは、全国の支援機関から得られた計222件のデータをもとに、要支援者が記入するセルフチェックシートと支援員と要支援者の双方が記入する評価シートを作成し、この2種類のデータから得られる豊富な情報をグラフ化して分析しました。見える化されたデータにより、支援員は各要支援者の課題や心身等の小さな変化を把握することができ、支援の方針やメニューを判断する際の補助ツールとして役立てることが可能になります。ツールは無料で使用でき、またインターネットに接続する必要がないため個人情報の取り扱いにおける心配もなく、わずかな操作でグラフを作成できます。
2019年度から2020年度にかけ、のべ15箇所の自治体で実験的に導入し、検証協力先および説明会・研修会の参加者からの意見も反映させ、支援員誰もが容易に使用できるようツールの改良を積み重ねてきました。
既に京都府は委託事業の仕様書で、このツールを使うよう指示しています。また、AI(機械学習)による就職の可能性を予測した結果、9割以上の正答率を得ました。今後は人工知能を実装することにより、より精度の高い判断を可能にするだけでなく、自治体等が事業評価を行う際のツールとしても使えるよう、さらなる改善・改良を進める予定です。
コロナ禍で就労支援を要する人が増える中、本ツールを活用することで一人一人に適した就労支援が可能になると期待できます。
研究者からのコメント
五石 敬路准教授
就職した後に急に自信を失い、早期離職の原因となるリアリティショックもグラフにくっきりと表示されます。支援現場の経験のない人でも、このツールを使えば、要支援者の状況が手にとるように分かります。見える化ツールはウェブブラウザで表示でき、UI、UXにこだわりました。現場の支援員と研究者の共同作業による成果です。
参考
https://www.kyoto-ps.com/vt/(KPSビジュアライズツールWebサイト)