公立大学法人大阪市立大学
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アルギン酸配合で人工骨補填材料の機能向上を確認~患者の負担が少ない骨欠損部の補填材開発も期待~

2021年06月30日掲載

研究・産学

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本研究のポイント

人工骨補填材料であるリン酸カルシウムセメント(CPC)に分解性高分子アルギン酸を配合することで、①硬化時間短縮、②圧縮強度増加、③多孔性獲得の機能向上を確認。
◇アルギン酸配合が最も多い群では早期に生体骨に置換され、新生骨量が増加。
◇液体として注入した後、体内で固体となるため、患者への負担も少ない人工骨補填材への開発も期待。
※多孔性:多数の細孔(小さな穴)が空いていること。多孔性が獲得されるほど細胞が浸潤しやすくなるため骨新生が促進されやすい。

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学の嶋谷 彰芳大学院生、豊田 宏光准教授、中村 博亮教授、大阪市立大学工学研究科の横川 善之名誉教授らの研究グループは、人工骨補填材料であるリン酸カルシウムセメント(CPC)に分解性高分子であるアルギン酸を配合することで、①硬化時間の短縮、②圧縮強度の増加、③多孔性の獲得といった3つの機能が向上することを明らかにしました。
 整形外科の手術では、疾患や外傷などで生じた骨欠損部に人工骨を充填して再建することがあります。人工骨は壊れた骨を支えてくれますが、自分の骨に置き換わることがなく異物として生体内に残り続けるという問題があります。骨補填材料として使用される材料の一つであるCPCは骨伝導性と生体親和性がありますが、強度が弱く、密度が高く、CPC内に新生骨を作る細胞が浸潤しにくいという欠点があります。
 そこで本研究グループは、アルギン酸含有量の異なる4つの硬化液(0,0.5,1.0,2.0g)から4種類のCPC(0,1,2,3)を作製し、生体外と生体内で比較実験を行いました。その結果、アルギン酸を配合することで、硬化時間の短縮、圧縮強度の増加、多孔性を獲得することが明らかになりました。また、ウサギの生体内では、アルギン酸2.0gを含有した群で対照群よりも早期に生体骨に置換され、新生骨量が増加することも明らかにしました。
 本研究により、今後、より強固で骨新生を促すCPCが作製でき、それを荷重部へ使用できる可能性が期待されます。また、注入して使用することができるため、患者への負担が少ない人工骨補填材への開発も期待されます。
 本研究は、2021年6月23日(水)に『Journal of Materials Science: Materials in Medicine』にオンライン掲載されました。


図:上列がリン酸カルシウムセメント、下列がアルギン酸を配合したリン酸カルシウムセメント。
アルギン酸を配合することで多孔性を獲得している。(中央図)
ウサギの生体内では、アルギン酸2.0gを含有した群で対照群よりも早期に生体骨に置換され、 新生骨量が増加した。(右図)

掲載誌情報

雑誌名:

Journal of Materials Science: Materials in Medicine

論文名:

A bone replacement-type calcium phosphate cement that becomes more porous in vivo by incorporating a degradable polymer

著者:

Akiyoshi Shimatani、Hiromitsu Toyoda、Kumi Orita、Yuta Ibara、Yoshiyuki Yokogawa、Hiroaki Nakamura

DOI:

https://doi.org/10.1007/s10856-021-06555-1

資金・特許等について

 本研究は科研費(分解性高分子とリン酸カルシウムセメントを複合した生体内で多孔化する骨置換材の開発[課題番号:20K05118])の研究対象です。