公立大学法人大阪市立大学
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成人男性20人で実験 達成感・有能感で学業成績が上がる神経メカニズムを解明

2021年07月27日掲載

研究・産学

                                                                        プレスリリースはこちらから
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆7/29  日刊工業新聞
◆7/29  マイナビニュース
◆7/30  Yahoo!ニュース

本研究のポイント

◇ 「達成感を感じさせ意欲を引き出すような」情報が与えられることで認知課題の成績が向上し、認知課題の実行に関わる脳部位の活動が活発になったことを確認。
◇ 神経メカニズムを明らかにしていくことで、より良い教育法の実践に期待。

概要

 大阪市立大学大学院医学研究科 運動生体医学の松尾 貴司(まつお たかし)大学院生、石井 聡(いしい あきら)講師、吉川 貴仁(よしかわ たかひろ)教授らの研究グループは、意欲を引き出すような情報が与えられることによって認知課題の成績が向上する神経メカニズムを解明しました。
 これまで、学業成績の向上には達成感などによって引き出される学習意欲が重要であることが指摘されていましたが、意欲を引き出すような情報が与えられることによって認知機能が向上する神経メカニズムは明らかでありませんでした。
 そこで、本研究ではパソコン上で認知課題を行う合間に、実際の成績とは無関係に認知課題の成績が「平均を上回るほぼ最高レベル」であることを示す画像を提示する条件と、課題成績とは関係のない画像を提示する条件を設定し、両条件下で課題実施中の脳活動を脳磁図法を用いて測定しました。課題成績とは関係しない画像を提示した場合には次第に認知課題の成績(正答率)が低下したのに対し、成績が良好であることを提示した場合には課題成績が保たれました。認知課題中の脳活動について調べると、本研究で用いた認知課題の実行に関係している脳領域において、成績が良好であることを提示することで課題成績が保たれた程度(=そうでない条件と比べて成績が向上した程度)と情報処理の活発さとの間に関連があることが明らかになりました。本研究結果から、達成感・有能感を引き出すような情報が与えられることで、課題に取り組む際に使用する脳部位の働きが促進され、その結果、認知課題の成績が向上する可能性が考えられます。
 本研究成果は日本時間2021年7月24日(土)午前3時に科学雑誌『PLOS ONE』にオンライン掲載されました。

補足説明

※脳磁図: 脳神経細胞(ニューロン)の電気的な活動によって生じるごく微弱な磁場を、頭の外に配置した超電導現象を利用した複数の超高感度磁気センサー(超電導量子干渉素子)によって測定する方法。体内で発生した磁場を体外に置いたセンサーで測定できる極めて安全性の高い検査です。また、測定した磁場が脳のどの部位からいつ発生したのかを高い精度で推定できるという特徴があります。

研究者からのコメント


石井 聡講師

松尾 貴司大学院生
 認知パフォーマンス制御に関する神経メカニズムを知ろうとする試みから行った研究です。より長期的な効果についての検討や、成績がよくなかったことを提示した場合との比較など、できることはまだ沢山ありそうです。

掲載誌情報 

雑誌名:

PLOS ONE

論文名:

Neural correlates of the improvement of cognitive performance resulting from enhanced sense of competence: a magnetoencephalography study

著者:

Takashi Matsuo, Akira Ishii, Rika Ishida, Takayuki Minami, Takahiro Yoshikawa

掲載URL:

https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0255272

資金・特許等について

 本研究は、科研費(疲労感を中心とした疲労の神経メカニズムを明らかにする脳磁図研究 [課題番号:16H03248])の対象研究です。