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LED照明などで広く活用されている窒化ガリウムとダイヤモンドの直接接合に世界で初めて成功

                                                                          プレスリリースはこちらから
この研究発表は下記のメディアで紹介されました。
◆9/10  マイナビニュース 
◆9/10  オプトロニクスオンライン 
◆9/14  Yahoo!ニュース
◆9/23  電子デバイス産業新聞 

本研究のポイント

・これまで不可能とされていた窒化ガリウム(GaN)1とダイヤモンドの直接接合に成功。
・1,000℃の熱を加えても耐え得る、安定した接合であることを実証。
・従来より冷却が容易になり、大幅な省エネが実現できるため、持続可能な社会の貢献にも寄与。
・直接接合により壊れたダイヤモンドの結晶構造を熱処理すると再結晶化することが明らかに。

概要

 210899-1.png大阪市立大学大学院 工学研究科の梁 剣波准教授、重川 直輝教授、東北大学金属材料研究所の大野 裕准教授、永井 康介教授、清水 康雄博士(現・物質・材料研究機構)、佐賀大学理工学部の嘉数 誠教授、アダマンド並木精密宝石株式会社の金 聖祐博士らの研究グループは、窒化ガリウムとダイヤモンドの直接接合に成功しました。
 窒化ガリウムを利用したトランジスタ2は、シリコンに代わる次世代半導体として、携帯電話の基地局などで幅広く使用されているものの、動作時に極度に温度上昇するため性能が大きく制限されています。加えて大型の放熱部材も必要です。
 梁准教授らの研究グループは、地球上で最も熱伝導率が高く、最も効率的に熱を逃すことができるダイヤモンドと窒化ガリウムとの常温での直接接合に成功し、直接接合が1,000℃の熱処理にも耐えることを実証しました。更に、接合に際してダイヤモンドの結晶構造が壊れるものの、熱処理することで再結晶化することを明らかにしました。これは界面で高い熱伝導率が保持することを示します。今回の成果により窒化ガリウムトランジスタで発生する温度上昇をこれまでの1/4倍程度まで抑制でき、大幅な省エネにつながると予測されます。今後、窒化ガリウムトランジスタの使用範囲が拡大し、レーダーやインバータ3などの大電力用途にも使用できるとともに、持続可能な社会の実現にも貢献すると期待されます。
 本研究成果は日本時間2021年9月9日(木)に国際学術誌ADVANCED MATERIALS(IF=30.849)にオンライン掲載されました。

研究者からのコメント

210899-2.png
梁 剣波准教授

半導体素子の小型化、高集積化、高性能化に伴い、動作時の温度上昇による出力の低下及び素子寿命の低減が大きな課題となっています。本研究の成果が早期に実用化され、半導体素子の発熱問題の解決、SDGs達成につながることを期待します。

 

背景

 トランジスタの動作時の発熱・温度上昇による性能の劣化と信頼性の低下は、種類や材料によらず大きな課題です。中でも窒化ガリウム(GaN)トランジスタは、現在主流であるシリコン(Si)トランジスタ以上の高出力・高周波で動作するため、効率的な放熱手法の開発が不可欠です。
 既にダイヤモンドを放熱材料に用いた「GaN-on-diamond」構造の実現を目指す取り組みがさまざまな機関で行われています。しかしながら、これらの取り組みではGaNとダイヤモンドの間に中間層が挿入されているため、放熱性が阻害されること、また、ダイヤモンドの結晶性が不十分である等により、ダイヤモンドの潜在的な性能が十分に発揮されないという課題がありました。

研究内容

 Si基板上に堆積した厚さ約1 μm(10-6 m)のGaN薄層表面をダイヤモンド基板と表面活性化接合法4を用いて、常温で直接接合しました。Si基板を除去した後のGaN薄層/ダイヤモンドを窒素雰囲気中で熱処理し、1000℃までの熱処理で接合が維持されていることを確認しました。
 また、熱処理前後のGaN/ダイヤモンド接合界面の TEM※5観察を行い、熱処理温度と接合界面のナノ構造の相関を解明しました。熱処理前と1,000℃熱処理後の界面の断面TEM像は下図のとおりです。熱処理前に5.3nmだった結晶が壊れている部分(非晶質層、図1(a))が1,000℃の熱処理後には1.5nmになっています(図1(b))。界面における炭素原子、ガリウム原子、窒素原子の分布や炭素原子間の結合状態を調べた結果と組み合わせて解析することにより、熱処理前のダイヤモンド中に形成されている非晶質層が1,000℃の熱処理で薄くなること(ダイヤモンドが再結晶化すること)が分かりました。

210899-5.png図1:GaN/ダイヤモンド接合界面の断面TEM像(a:熱処理前、b:1,000℃熱処理後)

期待される効果・今後の展開

 接合界面が1,000℃の熱処理に耐えることから、ダイヤモンドに接合されたGaN層を加工することで、ダイヤモンドの熱伝導性を最大限に発揮するGaN素子の実現が期待されます。素子性能の向上とともに放熱機構を簡単にすることでシステムの小型・軽量化につながります。
 現在、実用化に向けて大面積の接合や界面熱伝導特性の評価、ダイヤモンドに直接接合されたGaN層上のトランジスタの試作及び放熱性実証などの研究開発を進めています。

用語解説

※1 窒化ガリウム…シリコンに比べ、高い周波数で大電力を扱うことが可能。2014年にノーベル物理学賞を受賞してからLED照明や携帯電話の基地局などで広く活用されている。

※2トランジスタ…電子の流れをコントロールするもので、信号の増幅やスイッチングが可能な半導体素子。

※3 インバータ…直流電力を交流電力に変換するパワーエレクトロニクス回路。電車、エアコンなどで広く使用されている。

※4 表面活性化接合法…真空中で試料表面にアルゴン原子ビームを照射し(表面活性化)、そのまま試料同士を密着させて荷重をかけることで接合する方法。

※5 TEM…透過型電子顕微鏡。試料の構造をナノメータ(1 nm=10-9 m)オーダーで評価する手法。

資金情報

 本研究は国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)先導研究プログラムの委託業務として実施されました。本研究の一部はJSPS科研費20K04581と大阪市立大学戦略的創造研究推進事業による助成を受けて行われました。TEM試料作製と観察は、東北大学金属材料研究所附属量子エネルギー材料科学国際研究センター共同利用研究 (20M0030)と文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム(A-20-KT-0031)の支援を受けて実施されました。

掲載誌情報

【発表雑誌】ADVANCED MATERIALS(IF=30.849)
【論文名】Fabrication of GaN/Diamond Heterointerface and Interfacial Chemical Bonding State for Highly Efficient Device Design
【著者】Jianbo Liang*, Ayaka Kobayashi, Yasuo Shimizu, Yutaka Ohno, Seong-Woo Kim, Koji Koyama, Makoto Kasu, Yasuyoshi Nagai, and Naoteru Shigekawa【論文URL】https://doi.org/10.1002/adma.202104564